日本のしかるべき役者さんがカンヌの主演男優賞を受賞した ―だけじゃぁ、なかなかワタシは映画館までは行かないですが、この映画は音楽がカッコよさそうで、そそられました。

 

映画の舞台となった渋谷では昼間に1回しか放映がなかったので、品川プリンスのレイトショーへ。

レイトショーが終わった時刻、23:20^^;

 

(画層拝借)

 

東京トイレプロジェクト含め、プロデュースは、電通×ユニクロです。

そもそもは、このプロジェクトのプロモーションビデオを撮ろう、くらいの構想だったようで、撮影期間も僅か17日間。

 

(画層拝借)

 

それでも、役所さんがカメラに収まると立派な映画になり、のっけからAnimals、Patti Smith、Lou Reedなんてガツンと流れてきて、イカしてる!

 

カンヌ受賞の際、日本記者クラブに役所さんと出て来ていた舞踏家・田中泯さんが、もっと踊っているものと思いきや、それはチョット拍子抜けでしたけど ^^;

 

 

ここからは、ネタバレなので、これから観ようとしている人は、すっ飛ばして下さい。

 

 

(画層拝借)

 

東京トイレプロジェクト専任のトイレ清掃員・平山(役所さん)は、近所を掃除する竹ぼうきの音で目覚め、規則正しくルーティンをこなし、軽自動車で渋谷区のデザイナーズトイレへ向かいます。

植物が好きで、家でいくつも植木を育て、昼休みは木漏れ陽の白黒写真をフィルムに収めたりしています。

 

平山の住む家はスカイツリーが見える、東京下町の木造アパート。

朝家を出る時は鍵をかけず、電気は付けっ放し。

物に執着せず、節電・節約なども気にしないで生きているかの様子。

 

自分の家には鍵をかけない平山ですが、職場に着くと、凄い数の鍵をカラビナに繋げ、作業服にジャラジャラぶら下げて掃除します。その鍵の数の多さが平山に任された責任の大きさを表しているようでした。

 

仕事の後はまっすぐ家に帰り、近所の銭湯の一番風呂へ。

その後は、浅草駅の地下で軽い晩酌。

休みの日はコインランドリーで作業服を洗い、向かいのスナックで、歌の上手なママ(石川さゆり)相手に静かにお酒を飲む生活。

 

 

一見すると毎日毎週、同じ生活の繰返しのようですが、実はそうではありません。

判で押したような”完璧な日”が存在するわけではないのです。

 

或る日、不真面目な同僚に振り回され、平山は自分の車を貸すはめになりますが、その同僚の彼女が、平山のカセットテープのPatti Smithを気に入ります。

 

(画層拝借)

 

小さな人間関係の中で、ささやかな他人との交流。

口数少なく人と関わらないように生きる平山ですが、実はとても繊細で、些細なことに動揺します。

 

或る日、妹の娘ニコが数年ぶりに一人で平山を訪ねてきました。

平山と同じく家に反発し、家を飛び出してきたのでした。

 

(画層拝借)

 

ニコは平山の職場にも付いてきて、二人の穏やかな時間が数日間続きました。

平山には久しぶりに訪れた肉親との時間。平山はニコとは普通に話します。歌もうたいます(笑)

 

数日経つと、銭湯から平山はこっそりニコの母親に電話。

その夜、運転手が運転するレクサスに乗った妹が、平山のアパートへニコを迎えに来ました。

 

帰りたがらないニコを「又会えるから」と平山はなだめます。ニコが車に乗り込んだ後、妹は平山に、もう父は以前のようではないから(今のうちに)会いに来て欲しい、と言いますが、父親との確執が根深いのか、繊細すぎる故なのか、平山は首を縦に振りません。

ただ、家のことを妹に丸投げしてしまったことは、妹にすまないと思っているようにワタシには見えました。

 

翌朝から、平山は一人で職場へ向かいます。

習慣になってしまったのか、ニコを想ってなのか、ニコの分まで缶コーヒーを買うのでした。

 

朝陽がさし込む職場へ向かう車の中で、平山は微笑みもし、泣きもします。

幸せでもあり、残念もあり、一人の楽しさ、気楽さもあれば、寂しさもあるかもしれません。複雑な感情がさまざま交錯します。

自分が選んだ今の生活に、或る種の満足感を持っていてもおかしくはありません。

 

様々なことを感じる毎日が積み重なって、その人の”Days”が形成され、

平山はその”Days”となる一辺一辺の毎日を、今は感受性豊かに丁寧に生きているのでした。

 

 

平山扮する役所さんと1週間一緒に暮らした感覚になる映画、もう他人じゃない、と思った映画でした(笑)

 

 

 

(画像拝借)

 

仕事の合間に平山がお昼を食べていた神社は、ワタシの氏神様、代々木八幡宮。

猫がいっぱい居て、神社と近所のボランティアさんから餌を与えられていますが、ここの猫たちは神社の世話係にベッタベタで、あれは凄い光景です。(初めて目にした時は、見てはいけないラブシーンを見てしまったかのようでした。)

たまにワタシもお賽銭代わりに猫缶を奉納していますけどね。

 

渋谷区のあのデザイナーズトイレは、入ったことないなー。なんかトイレじゃないみたいで(笑)

 

 

役所勤め(水道? 土木?)→ 何百倍かの無名塾のオーディションを突破して、最後は水着審査で仲代さんが合格させた → ジャワカレー → 杉田かおるに説教 → 紫綬褒章 → カンヌ → ダースベーダー。

役所さんに関しては、こんな断片的なことしか知らないけれど、素養以上に、やっぱり真面目にやってきた人であることがわかります。

そういう人がカンヌを獲ったのは、喜ばしいことだと思いました。