日経コンは2週間に1度、年に52週÷2=26冊出る雑誌です。2010年から全号精読して記事をザッピングしています。
※はブログ筆者のコメントです
特集は<正念場のデジタル庁 高市政権で問われる統率力>です。頑張って欲しいとは願っていますが、記事でもネガティブ要素が多いです。情報処理試験に通ってない人は立候補できないように出来ないものでしょうか?
【ITが危ない:パープレキシティのAIボット 一般人に偽装、日本企業に侵入】(P.08)
<1日600万回、「robots.txt」無視し情報収集>
前回、AIボットの影響でWEBサイトのアクセス数がコントロールできなくなったという記事がありました。今回はその続きとして、米パープレキシティAIが米国で批判を浴びている問題です。
パープレキシティは2022年に創業した、アマゾンやエヌビディアなどが出資している「超大型ユニコーン」です。パープレキシティのボットが学習目的のために禁止領域にも入り込み、無断で情報を奪っている挙動が、米国の調査会社から発表されました。
1.robots.txtがあっても無視してアクセスする
2.IPアドレスやASNを変化させて偽装してアクセスする
これらを「ステルスクローリング(偽装巡回)」と呼びます。1日当たりのアクセス数は、公式ボットが2000万回、偽装ボットが300~600万回だそうです。
2025年8月、読売新聞グループ、日本経済新聞社、朝日新聞社が立て続けに知財損失で、パープレキシティを提訴しました。マスコミだけでなくほとんどの企業に関係があります。
※AIをより深く学習させるために他のAIより多くの情報を集めたいという目的なのでしょう。クレカ情報のようなBlackリスト機能が出てきそうです。
【正念場のデジタル庁 高市政権で問われる統率力】(P.10)
1.かすむ3割削減 試される手腕
2025年6月<政府情報システムの運用コストを3割削減する>という目標を閣議決定しました。この<3割削減する>という文言は2019年6月から同じ文言を踏襲していますが実現していません
2.経済対策も主導役 マイナ制度が要に
高市早苗首相は2025年10月24日の所信表明演説で「早期に給付付き税額控除の制度設計に着手する」と述べました。給付付き税額控除とは、税額控除によって減税する一方で、所得などが少なくこの控除額に達しない場合は給付するという制度です。税額控除と社会保障の給付を一体化するものです。この制度は2007年11月の税制調査会で検討され18年経っても実現どころか検討すらできていません。
理由は、どの府省庁が法制度やインフラを整備するかが決まっていないためです。4官庁のにらみ合いが続いています。
①デジタル庁、②金融庁、③財務省、④厚生労働省
また所得が低くても、多額の資産などを持つ場合を考慮して資産性所得をどう把握するか、世帯給付なら個人と世帯の紐づけも必要になりますが何も決まっていません。
3.日本は「合意主導型」 第4モデルへの期待
世界各国のデジタル政策は主に3つのモデルに分類されます
①市場主導型・・・米国など規制が緩く巨大企業が主導
②国家主導型・・・中国など国家が集中的に管理・利用
③権利主導型・・・欧州連合。一般データ保護規則など
EU域内のデジタル産業の強化につながっていなとする見方が出てきたため、日本の「合意主導型」が見直されています。日本が経済安全保障の分野でインド太平洋の国々の仲間を増やせば欧米を仲介できる可能性があります。
ただし、国内で合意主導型が成果を上げているとは言えません。既存の法制度や業務フローを変えずシステムを作ることで活用できないシステムを生み出しています。
2025年7月1日時点で 1,160人体制のデジタル庁ですが、常勤の行政官ら558人は多くが2年ごとに異動します。民間の専門人材602人が非常勤で活動しているだけですので、長期戦略を描くことが難しいです。
※ITゼネコン企業から入った非常勤人材は当初から「スパイ目的」と噂されていました。自社の商売が縮小するような動きをしないことは目に見えています。
問題点の根本はITがわかる国会議員がほとんどいない事です。政治主導で改革するしかないでしょう。
【待ったなし! 脱・富士通オフコン】(P.32)
富士通はメインフレームだけでなくオフコンからも撤退します。ハードウェアは既に販売停止しサポートも停止されています。その代替として出していたクラウド環境も来年3月に販売停止します。(On-Pre=オンプレミス)
販売停止 サポート停止
メインフレーム 2031年3月 2036年3月
On-Pre オフコン 2018年3月 2023年3月
Cloud オフコン 2026年3月 3231年3月
いまだにOn-Pre オフコンを使っているユーザが一定数います。Cloudオフコンへ移行するなら、来年3月までに決断が必要です。富士通によると、Cloudオフコンを利用しているのは約700社。2031年3月までには1社残らず出ていく必要があります。
「大きな顧客だと、オープン化の費用は1億円から3億円」かかるとのことです。システム的に見れば改善もなく水平移行するだけで数億円かかることを経営陣に説得するのは大変です。
またメインフレーム撤退と重なるため、2028年ごろからCOBOL技術者の取り合いになるでしょう。
※NECは2015年1月に販売終了し2020年3月にサポート停止しました。オフコンを継続販売しているのはIBMだけになりました。
【アサヒ、ランサム被害で初会見 大規模被害招いた3つの盲点】(P.44)
アサヒグループHDは2025年11月27日、同年9月に受けたランサムウエア攻撃に関して初めての記者会見を開きました。
・漏洩の可能性のある個人情報は191万件以上
・12月2日または3日からシステムによる受注を再開予定
・2026年2月までに配送の正常化を目指す
・全商品の出荷再開には、なお時間を要する
グループ内の拠点にあるネットワーク機器を経由して侵入された。被害を受け「VPN接続は廃止した」と名言しました。
EDR(エンドポイント検知)ツールを導入していましたが、検知出来ませんでした。セキュリティ診断や模擬攻撃なども実施していましたが防げませんでした。
バックアップデータは、大部分が健全な状態であったのにもかかわらず、システムによる受注再開まで2ヶ月もかかりました。再発防止策の一環として、バックアップをシステムごとに分散して持つことにしました。
※EDRが入っていることがわかれば、回避策は色々あるそうです。発表すること自体がリスクだったということでしょう。
【NTT東、故障窓口「113」に生成AI 電話線工事を自動で手配可能に】(P.46)
NTT東日本は、2025年9月18日電話線が切れるなど不安全な設備の申告を受ける「113」番の電話窓口で、生成AIを活用した自動受付システムの運用を開始しました。10月下旬までの約1ヶ月の実績では、生成AIで対応した案件のうち約4割で、現地に職員が駆けつける手配をするための窓口対応を自動化できたそうです。
生成AIは、シナリオに応じて質問し音声の返事を認識します。緊急性などを生成AIが判断し、RPAツールを用いて自動的に修理を手配します。情報が曖昧な場合はオペレータに対応を引き継ぎます。
生成AIには、GPT-4o(Omni)を採用しました。当初は判断精度が十分ではなかったため約8ヶ月間プロンプトの改善を継続し本番稼働にこぎつけました。
※GPT-5でなく4oというところが面白い。人間対応には情緒が必要なのかも知れません。8ヶ月もプロンプト改善とは何をやったのでしょう?
【イトーキが自動倉庫の予知保全 AIによるデータ分析で異常を検知】(P.48)
イトーキは日本オラクルと共同で、イトーキの自動倉庫「SAS-R」にAIを組み合わせ、故障の兆候を検知するシステムを開発しました。
自動倉庫からの稼働データを、オラクルクラウドの
①オラクルのAI対応型DB「Oracle Autonomous AI Database」
②機械学習基盤「OCI Data Science」
のAIを活用し異常検知アルゴリズムが判断します。
季節によるゴム製ベルトの張力変化や、温度差などのばらつきについてはAIモデル側で補正し、誤検知を防いでいるそうです。
※前回メンテナンスからの時間経過も入れるべきでしょう
【CIOが挑む:みんなの銀行 CIO 宮本 昌明氏】(P.58)
<クラウド勘定系を独自開発 内製に注力し黒字化図る>
親会社にあたる、ふくおかFGに2019年9月に入社しました。入社直前に、みんなの銀行の開発プロジェクトに携わることがきまりました。
勘定系システムは、グーグルクラウドを使用し、コンテナ管理「Kubernets」や分散DB「Spanner」などの先進サービスを利用しました。マイクロサービスで構築しました。
全てのスクラムチームに当行のエンジニアを配備します。外部要員に支援してもらうことはありますが、丸ごとパートナー任せにはしません。開発のナレッジを組織に蓄積しています。
常に新しい技術にアンテナを張り、システムもエンジニアも陳腐化しない組織を目指しています。
※魅力的ですね。2027年の黒字化を目指しているそうです。
【動かないコンピュータ:IPSPRO(アイ・ピー・エス・プロ)】(P.60)
実在する警察署の番号が、発信電話番号として表示され、受話すると捜査員をかたった詐欺が行われる。この特殊詐欺に国内電話が海外から悪用されていたことが2025年11月に判明しました。
国内でIP電話サービスなどを提供するIPSPROは2025年11月21日、「当社の提供する電話番号が発信社番号を警察署等と同じ電話番号に偽装されて使用されておりました」と謝罪しました。
偽造に使われたのは「050」で始まる番号。海外の通信会社に1回線だけ提供したところ、2025年2月8日〜3月14日1(35日間)で197万回も発信されました。
※計算すると1.5秒に1回発信です
一般にIP電話「050」番号は、通信事業者側で発信番号を柔軟に変更出来ます。総務省は規則を設け、通信事業者に偽造対策を義務付けています。実際に国内の通信事業者は、海外のIP電話などから「03」番号に偽装した発信を受けたときはそのまま表示せず「+(国番号)−3-xxxx」など書き換えるか、「通知不能」に表示を変える設定を行っています。
どこかでこれらの設定が漏れているのでしょう。警察も調査していますが、実際の手口はわかっていません。
※このIPSPROの親会社IPSはフィリピンの海底ケーブル敷設に関わっていたようです。利用されたのかも知れません。
【キーワード:コンテキストエンジニアリング】(P.66)
コンテキストエンジニアリングとは、大規模言語モデル(LLM)が正しく回答出来るよう、”必要な文脈(コンテキスト)を設計し供給する”技術全体のことです。モデルが“正しく判断できる材料”を与えるとも言えます。RAG(検索拡張生成)もコンテキストエンジニアリングの一部です。
プロンプトエンジニアリングは、主に「文章の工夫」に関する技術です。「1つの入力メッセージ(プロンプト)をどう書くか」の技術とも言えます。
ただ、コンテキストエンジニアリングは悪意のある情報が混入すると想定しない回答を生成する恐れもあります。
※最近のLLMは、プロンプトに凝らなくてもそこそこ正しい答えが返ってきますので、コンテキストの勝負になってきました。
【社長の疑問に答える IT専門家の対話術 第307回】(P.76)
ITマネジメントは難しいです。ITにかかわる全体を俯瞰するため、日本IBMが普及させている3つのフレームワークを説明します
◆Hybrid by Design<主に計画段階で使用>
①必要な能力(ケイパビリティー)・・12点を定義
→各能力の成熟度について自組織の現状を評価し目標設定する
②具体的な施策(バリューツリー)
→費用対効果を簡易に算定し、どの施策から行うか順位付けする
◆TBM(Technology Business Management)<日々のIT利用段階で使用>
IT投資に着目して次の3領域の要素を紐づけ、どの程度コストをかけるかを可視化する
①ITコスト ②ITの種類 ③ビジネス価値
◆SPM(Strategic portfolio management)<施策準備や実行段階で使用>
プログラムやプロジェクトより大きな、ポートフォリオという単位で施策の状況を把握し、コスト・時間・人を最適配置します。
※自社のITを一歩俯瞰して見て適切にリソース配分することは重要です。
【中田敦のGAFA深読み:AI導入で米国流「客先常駐」台頭 大手銀行も活用するFDEとは】(P.88)
最先端のAIスタートアップが「客先常駐型」にも通じるシステム開発モデルを熱心に採用し始めています。これをFDE(Forward Deployed Engineer)と呼びます。最前線(Forward)に配備する(Deployed)エンジニアという意味です。オープンAIは2025年内にFDEチームを約50名にまで拡大させる計画だと報じました。
三菱UFJ-FGは2025年11月12日に記者会見し、オープンAIとの戦略的コラボレーションを行うと発表しました。全行員が使い、オープンAIが設けた「MUFGプロジェクトチーム」がAI教育やAIサービス状況のレビュー、実装の支援などを行います。
FDEを軸とした「実装サービス型の成長戦略」は、実は米セールスフォースや米サービスナウなどが採用していた戦略です。初期は利益率が低いものの、顧客を「堀(Moat)」によって囲い込むことに成長したため、現在は高い利益率を享受していると分析されています。
米国のスタートアップがFDEに力を入れているということは、大企業におけるAI導入が決して容易ではないことを物語っています。日本でも参考になるでしょう。
※私が所属するテラスカイは、客先常駐型の子会社テラスカイテクノロジーズを創業し、すごい勢いで伸びています。同じ労働条件でやりきれるのでしょうか?Salesforceがはじめたのはここ10年ほどです。
以上
