日経コンピュータ2024.04.04 | HATのブログ

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IT関係のニュースを中心に記事を掲載します。日経コンピュータで重要だと感じた記事とコメントを2010年9月1日号から書いています。
このブログは個人的なものです。ここで述べていることは私の個人的な意見に基づくものであり、私の雇用者には一切の関係はありません。

特集は<答えなきDXの推進術 敏腕CIO/CDOが直伝>です。有名CIOのインタビューから共通項を抽出しようという特集。一人ひとりの方針は大変面白いですが「答えなき」と言っちゃってますね(苦笑)。銀の弾などないのですね。

編集長セレクト】(P.06)<ID登録で無料で読めます>
SCSKとトヨタ子会社が協業 法人車両の管理サービスを東南アジアで4月に提供
 →インターネット接続が可能な法人車両の管理サービス開始
複数のLLMを自動的に融合して新LLMを開発 Sakana AIが新手法
 →AIのスタートアップが複数のLLMを融合したLLM開発

基幹系への安易なOSS採用 運用保守が想定外の重荷に】(P.08)
バージョンアップ多発に「隠れOSS」問題も
基幹系システムに安易にオープンソフトを使用すると、バージョンアップが必要になりバタバタするという話です。運用を考えている技術者なら当たり前の話ですがコスト削減だけ考えてOSSを採用する技術者が多いという事でしょうか

Amazon RDSやAmazon Lambdaなどは強制バージョンアップの対象になります。例えばRDSでPostgreSQLを使う場合、3年に1度程度のバージョンアップが必要です。バージョンアップには「2週間~3ヶ月ほどかかる」との事です。

製品やサービスに組み込まれた「隠れOSS」も課題があります。お気を付けください。

答えなきDXの推進術 敏腕CIO/CDOが直伝】(P.10)
次の9名のCIO/CDOへのインタビューから鈴木慶太記者が1人でまとめられた特集です。大変だったと思います。
パナソニックHD 玉置肇氏、荏原製作所 小和瀬浩之氏、カインズ 池照直樹氏、日清食品HD 成田敏博氏、中外製薬 志済聡子氏(202403退任)、横河電機 舩尾幸宏氏、コスモエネルギーHD ルゾンガ典子氏、フジテック 友岡賢二氏、クレディセゾン 小野和俊氏
1.日本経済劣後の原因 脱・現場まかせ情シスへ
日本企業の大半はCIOが不在、または兼務でITが経営から遠い事が問題です。JUAS2023年調査で、専任のCIOを設ける企業の割合は5.3%。売上高1兆円の企業でも17.1%でした。
2.対外の連絡係に非ず IT部門が主導権を
IT部門は、事業部門の下請けでなくIT施策を逆提案すべき
ベンダーに依存せず伴走してもらうべき
3.IT部門は「支援者」に 現業と強固な関係を
ビジネスの課題を一番知るのは現場です。現場にオーナーシップを持ってもらい、IT部門はイネーブラー(enabler、支援者)であるべきです。事業部門を巻き込むための4つの方法
①各部門からIT部門に異動させる
②事業部門からIT部門に異動させ、再び事業部門に戻す
③IT部門から事業部門の現場に常駐させる
④IT部門で育てた社員を事業部門に異動させる
4.ぶち当たる「社風」の壁 変革を経営・現場・ITに
硬直した企業風土を変革する3つのポイント
①従来のやり方を変えたくない→変革を会社全体の方針とする
②抵抗勢力になっている→抵抗勢力になっていないか振り返る
③失敗したら責任を取らされる→失敗を許容しチャレンジできる

ITを理解できる人物が経営しましょうという事でしょう。ただ日本では岩盤規制や人脈の壁などがあり旧態依然とした経営の方が儲かっているという現実があります。

アクセンチュア「新型IT子会社」戦略の全貌】(P.24)
1.相次ぐ共同出資 DXに向けた新形態
アクセンチュアはここ数年、事業企業との「新型IT子会社」を相次いで設立しています。2000年第後半には日本IBMやNTTデータなどが相次いでユーザ企業の情報子会社を設立しました。新型子会社はDXを進める事を目的としています。
2.ノウハウ移転で成果 資生堂はKPIで確認
資生堂はDXのための新子会社設立のため4社にRFPを出しアクセンチュアを選びました。今はアクセンチュアへの依存が高まっていますが、最終的にはアクセンチュアのメンバーや資本を抜いて独立することを目標としています。
住友化学もアクセンチュアと新型IT子会社を設立しスピード感をもって知見を入れています。
3.共同出資の善し悪し 問われる目的意識
アクセンチュアが共同出資する新型IT子会社
 設立   出資比率 ユーザ:アクセンチュア
202401:コカ・コーラ=>81:19
202209:クボタ   =>85:15
202107:資生堂   =>非公開
202103:住友化学   =>80:20
201808:関西電力   =>80:20
201702:KDDI    =>85:15
アクセンチュアの目的は次の3つと推定
①大手企業から業界特有の知見を得られる
②長期的に案件を受注しやすくなる
③宣伝効果(コンサル案件は公表出来ない)

これは新しいビジネスを生み出したという事でしょう。このビジネス自体がアクセンチュアのDXのように見えます。

富士通は既存顧客の離反を防げるか AWSとモダナイゼーションで提携】(P.64)
富士通がメインフレーム撤退で影響を受ける顧客に向けて、COBOLやPL/ⅠプログラムをJavaに自動変換する支援施策を2024年4月1日に開始しました。

撤退を表明したのは2022年4月でした。202206のブログでは「移行プロセスは富士通自身がメインフレーム撤退と同時にアナウンスすべきでした。切り捨てられた顧客は大変ですね。」と嫌味を言いました。2年経ってようやく気づいたのでしょうか?

八王子が標準準拠システムに移行 35文字超の住所に交付トラブル】(P.65)
八王子市が、1月4日、住民記録システムだけを先行して国の標準仕様に準拠したシステムに移行しました。これに伴い、住所で35文字など各項目の文字数上限を超えた場合、マイナンバーカードを使った証明書のコンビニ交付が利用できなくなりました。

2023年夏に、システムを開発していたNEC、富士フィルムシステムサービスと文字数があふれる場合の対応を協議しました。結果標準仕様書に記載通り35文字までとし、超える場合は窓口交付と決定。対象人数はカウントしていませんでした。
新システム稼働すると「コンビニ交付できない」というクレームが続発。調べると約2万8千件の住所が該当していました。

そもそも、紙の仕様書からシステムを作るなんて30年前に終わってませんか?せめてローコードツールで動くシステムをデジタル庁が出してそれを元に開発すべきではないでしょうか?

100キロ離れた拠点間でAI分析 NTTがIOWNの技術検証】(P.67)
NTTの次世代ネットワーク「IOWN(アイオン:Innovative Optical and Wireless Network)」を応用して100キロメートル離れた場所に設置したカメラの映像を送り大規模サーバーでAI分析する実験を行いました。
RDMA(Remote Direct Memory Access):コンピュータ同士が互いのメモリーに接続アクセスしてデータをやり取りする
APN(オールフォトニクスネットワーク):チップ内の配線部分に光通信技術を導入する光電融合技術を用いた伝送技術

遅延時間を最大60%、消費電力を最大40%削減出来たそうです。日本の最先端技術としてIOWNと超電導リニアには期待しています。

日経XTECH2024年3月の好評記事】(P.74)
パソコン並みの性能を持つ「ラズパイ5」、いよいよ日本でも販売開始
→カメラ向けの画像処理プロセッサを内蔵
2024年問題に向けたヤマト運輸の物流改革、国交省からの是正勧告にも対応
→50年の歴史における物流ネットワークの構造改革
傾いた58階建てマンション、7年の苦闘
→サンフランシスコSalesforceタワーの隣のマンション

動かないコンピュータ:LINEヤフー】(P.82)
総務省は2024年3月5日、「通信の秘密」の漏洩でLINEヤフーを行政指導しました。対象は2023年11月27日に公表した情報漏洩です。
①メンテナンス業務を委託していた企業でマルウェア感染が発生
②感染したPCでNAVER Cloudに接続

③NAVER Cloudの認証基盤(AD)サーバもマルウエアに感染
④そのADに旧LINEの従業員IDやパスワードも保存されていた
⑤そこから旧LINEのデータ分析システムに侵入された
(N/Wを切り離している本番環境への不正アクセスはなかった)

旧LINEの親会社は韓国のNEVERです。ヤフーが資本提携して今のLINEヤフーは50:50になっています。総務省は現在の資本関係を含めた「経営体制の見直し」にまで踏み込んで検討を求めました。対応には3年程度必要との見通しです。

総務省がここまで勧告するサービスなのに地方自治体の多くがLINEのサービス提供を止めないことが不思議です。

人材不足時代の開発新潮流 プラットフォームエンジニアリング 第1回】(P.88)
一般社団法人クラウドネイティブイノベーターズ協会の草間 一人氏の新連載です。ITエンジニアの負荷を下げ、開発の生産性を上げる取り組みである「プラットフォームエンジニアリング」の解説です。

ガートナージャパンが2023年11月に発表した「2024年の戦略的テクノロジのトップ・トレンド」では10の技術トレンドの1つとしてプラットフォームエンジニアリングを取り上げていました。ところがこのガートナーの説明を読んでも良くわかりません。


<エンジニアの「認知負荷(Cognitibve Load)」>
・「認知負荷」とは、人間が物事を学習する過程において発生する負荷です。特に問題となるのが「課題外在性負荷」です。
・学習課題に直接関係しないにも関わらず、外的要因で発生する認知負荷を指します。自動化の設計やクラウドへの展開、スピードが求められることでDevOpsが広がりクラウド関連技術の複雑さが絡み合っています
<チームトポロジー(Team Topologies)>
・DevOps実現のための組織論がチームトポロジーです。
・チームトポロジーでは4つのチーム分けを提唱しています。
①ストリームアラインドチーム:ソフト/サービスの開発を担う
②イネイブリングチーム:新たなスキルや知識を身に付ける支援
③コンプリケイティッドサブシステムチーム:特殊技能専門家
④プラットフォームチーム:ツールやサービス、情報を提供


①だけだとフルスタック・エンジニアが必要です。1人に負わせると認知負荷が高まり生産性が低下します。そこでプラットフォームチームを組織し認知負荷を下げる役割を担わせます。

間違いだらけの設計レビュー 第1回】(P.92)
名古屋大学 森崎 修司準教授の新連載。著書「なぜ重大な問題を見逃すのか 間違いだらけの設計レビュー 第3版」(日経BP)からの抜粋解説です。珍しいタイプの連載です。

初回はレビュー会議の4つの間違いを紹介します
①目的の間違い:些細な文言など無駄な時間をかけない
 →実装に入った時の修正工数の低減が目的と認識する
②問題検出の間違い:人間関係を持ち込んだり時間配分を誤る
③指摘する方法の間違い:会議を夜遅くに延々と行う
④指摘するマインドの間違い:人格攻撃「センスがない」

私(佐野)は些細な文言の指摘など、されたこともしたこともないのでピンと来ませんでした。30年近く前に入札案件で役所に納品した時に山ほど文言を指摘されましたが、「プログラムもわからない人がレビューするのは大変だな」と感じただけでした。それ以外は一度も経験していません。

社長の疑問に答える IT専門家の対話術 第263回】(P.100)
AIやITの偏重では息が詰まる 人を生かす柔軟な仕組みが必要
組織にとって最も重要なことは人が持つ判断や決断の力を発揮させることです。AIやITを使うと自動化できますが人の力が落ちてきます。この問題に取り組んだ日本発の方法論についての解説です。
システムコンサルティング会社プライドの北村充晴社長らが考案した「AxSEM(アクセム;Axiomatic Systems Engineering Methodology)」です。

AxSEMをあえて要約すると「エントロピーの高いところで創発が起きる」となります。エントロピーとは物理学で無秩序度合いを示す用語ですが、ここでは情報の廉さや人の思考・行動などの秩序を言います。どちらも秩序がないほどエントロピーは高くなります。
 Level1:無為な連鎖(混沌の世界)
 Level2:人が自ら決める(創発)
 Level3:何らかのルール(AIやIT)
 Level4:組織が備えている何らかの原理原則

従来はITの仕組みを広げルール化する(Level3)ことが無条件に良いことだという動きが広まっていました。人間の創発を重視するためにLevel2やLevel4の重要性を再認識しようというという主張がAxSEMです。

私(佐野)が扱っているSalesforceを営業支援(SFA)として導入するときは、TOP営業のLevel2判断をLevel3に落としてルール化することでボトムアップを図るという提案を行います。出来れば毎月行います。成績が悪い営業員のLevel2の創発を発揮させると組織全体が悪くなる危険性があります。この記事もAxSEMの解説です。ご興味があればお読みください。

以上