日経コンピュータ2023.03.16 | HATのブログ

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IT関係のニュースを中心に記事を掲載します。日経コンピュータで重要だと感じた記事とコメントを2010年9月1日号から書いています。
このブログは個人的なものです。ここで述べていることは私の個人的な意見に基づくものであり、私の雇用者には一切の関係はありません。

特集は<GAFAMはオワコンか 業績偏重に規制網、巨大ITに転機>です。このブログでも、前号の乱反射で「第4四半期の前年同期比売上伸び率が10%代前半とは危機的」とコメントしました。それを深堀りするような特集でした。

【事業会社とコンサルが技術者吸い込む SIerの人手不足が危ない】(P.06)
IPA(情報処理推進機構)の調査によると、2020~2021年にIT企業から転職した人の半分以上が事業会社に転職しています。またコンサル企業も高給を提示して多く採用しています。その狭間にあって中堅SIerの人数が減っているそうです。

「ソフトを他人に作らせる日本・・・」(日経BP 2013)

 

では、日本のソフト開発技術者の7割はIT企業に属するが、米国のソフト開発技術者の7割はIT企業でなく一般企業に所属していると主張されています。その割合に多少でも影響するのか興味を持って見守りたいと思います。

 

ただ、米国の技術者は1社に居るわけではなく、開発が終われば次の企業に転職し開発します。日本のレイオフが理不尽に難し過ぎるため、割合は変わらないように思います。

【「変革」で米国に遅れを取る日本 最新DX白書で浮き彫りに】(P.08)
IPAは2023年2月9日、「DX白書2023」を公開しました。特に米国と比べた遅れについて書かれています。
     テーマ            米国   日本
◆全社戦略に基づいて取組んでいる割合  68.1%  54.2%
◆成果が出ている企業の割合       89.0%  58.0%
◆DX推進人材が足りている       73.4%  10.9%
DX推進人材が大幅に不足しているについて、2021年度と2022年度の割合が、米国20.9%→3.3%、日本30.6%→49.6%となっています。企業としての動きが危機的に遅いことがわかります。

【NRIが「軽量勘定系」クラウド 激戦市場参入に2つの勝算】(P.09)
野村総合研究所(NRI)は2024年度夏を目途に、新たな金融勘定系サービスを投入します。BIPROGY(旧日本ユニシス)のパッケージをベースに開発しています。このパッケージは実はNRIが開発・保守しているパッケージだそうです。

今更感はありますが、一般企業が自社サービスに金融機能を組み込み「エンベデッドファイナンス(組み込み型金融)」の広がりに期待しているそうです。そのため機能を絞り込んで導入できるようにします。

普通に考えると、金融庁の免許(許可)が面倒ですので銀行免許を持っているところと協業してサービスすべきでしょう。単独サービスとして提供する自信がどこからくるのか取材して欲しいです。

【SOMPO HDがランサム対策 オンプレミスのADを停止】(P.10)
SOMPO HDは端末管理として、オンプレミス版のActiveDirectory(AD)を利用してきました。2022年8月に全面的にやめ、AzireAD+MDM(モバイルデバイス管理)に切り替えました。理由はランサムウェア対策です。

不正侵入した端末を足がかりとして、VPNの中を探し回ってオンプレミスADを探し乗っ取るという横展開攻撃への耐性が高まります。

オンプレADを手放せない場合でも横展開攻撃を防ぐ手段を検討しましょう。

【ANAが旅客系を25~26年度に刷新 JALとは異なる3つの特徴】(P.13)
全日本空輸(ANA)は国内線の旅客基幹システムを刷新し、国際線と同じスペインのアマデウスITグループのサービス「Altea」に統合します。国内線システムと国際線システムを統合することを「内際統合」と呼ぶそうです。

日本航空(JAL)も経営破綻直後の2010年から検討を開始し、内際統合を果たしました。JALもANAと同じスペインのAlteaに統合しています。日本の主要航空会社2社の国内国際ともスペインのサービスを使うことになります。日本のIT企業はどうなっているのでしょう。

【2weeks from 日経XTECH 2月20日(月)~3月6日(月)】(P.17)
2/20:BIPROGYのオープン勘定系 商工中金が採用 メインフレームから脱却
 →実質NRIが開発しているそうです。
2/28:さくらインターネットなど ネットワークカメラの画像クラウドに録画
 →クラウド録画サービス「Antenna-eye」4月末までお試し可
3/2:NTT「IOWN」第1弾サービス始動へ KDDIもフォーマル参加
 →エンド-エンドを電気増幅せず光通信する基盤

【GAFAMはオワコンか 業績偏重に規制網、巨大ITに転機】(P.22)
ビッグテック(巨大IT企業)の代表格である「GAFAM」-Google,Amazon,Facebook,Apple,Microsoft-の転機についての特集です。
1.レイオフの嵐が襲う
 2022年11月ごろからGAFAMのレイオフの報道が加速しました(Appleのみレイオフを発表してません)。GAFAMだけで5万人。米国採用会社の集計では2023年1月だけで既に10万人以上がレイオフされています。

ところが2023年1月の雇用統計によれば、失業率は3.4%と過去最低水準。つまりレイオフを吸収する潜在的な需要があり混乱していないという事です。売上増が鈍ってきた事から、コストカットを求める投資家に対する弁明の意味合いもあります。
2.5社すべて減益の深層 「成長神話」は続くのか
 2022年10~12月期の各社の前年同期比の状況
◆グーグル 売上0.9%増 純利益34.0%減
  →YouTube広告7.8%減
◆Amazon 売上8.6%増 純利益98.1%減 営業利益20.9%減
◆Facebook 売上4.5%減 純利益54.8%減
◆Apple   売上5.5%減 純利益13.4%減
◆マイクロソフト 売上高2%増 純利益12%減
3.日米欧で狭まる包囲網 支配力の源に法のメス
日米欧が規制強化を進めています。
<充分な競争圧力が働いていない>
 米国反トラスト法(日本の独占禁止法)は独占によって価格が上がり消費者の利益を損ねているかが判断基準でした。ところがデジタル化社会では「略奪的販売」として無料や低価格と引き換えに市場支配を強化し消費者の利益を損なっていることも規制対象になってきました。
<EUは「GAFAM狙い撃ち」の法規制>
年間売上高などによりGAFAMだけを狙い撃ちした法律が施行されます。
2023年施行:DMA(デジタル市場法):中小が公平に競争するための環境整備
2024年施行:DSA(デジタルサービス法):最終利用者の基本的人権や自由を確保
→禁止事項をあらかじめ列挙した「事前規制」で年間売上最大10%の罰金
4.グーグルも「後追い」 ChatGPT騒動の衝撃
世界中の話題をさらったオープンAI社の「ChatGPT」。Facebook、Googleは対抗するAIを発表。マイクロソフトは自社サービスにChatGPTを組み込む方針

個人的には、いまオープンAIが出てきて話題をさらったという事は「GAFAMは独占していない」事の証左だと思えます。規制を強化するよりは、各国が税金をうまく(ちゃんと)徴収する仕組みの構築が急がれます。

【FaaS到来 アプリ実行にサーバーは不要】(P.40)
サーバーレス環境の一種である「FaaS(Function as a Service)」の代表格であるAWS Lambdaを使った事例紹介
<SBI生命保険:ETLのサービス置き換えコストを9割削減>
AWS S3で構築したデータレイクから、AWS GlueによってAmazon Auroraに格納。1日最大で7000万件ありAWS Glueのコストが課題。それをAWS Lambdaに置き換え9割減に成功
<NTTドコモセキュリティ調査のSaaS 中核部分をLambdaで実装>
外販用のアセスメントツールである「ScanMonster」の開発を全てサーバーレスアーキテクチュアで構築
<横浜ゴム:サプライチェーンの計画立案 最大50並列で処理>
SCP(サプライチェーンプランニング)システムについて、従来は海外製SaaSを利用していましたが、FaaSとして実装しました。

サーバレス環境ではRDBの接続が難しいのでマスタを参照して動かすような処理には向いていません。入力データだけで処理をするETLなどには向いてます。

【動かないコンピュータ:Z会】(P.68)
<新基幹システムの利用中止を即断 原状回復請求訴訟で勝訴>
2012年10月からZ会は基幹システムの刷新プロジェクトを開始しました。旧基幹システムは30年以上使い続けており、同社が目指す新教育サービスの提供は難しくなったと判断しました。日立製作所と日立コンサルタントの提案を採用し、システム開発は日立ソリューションズ(HISOL)が10億円超で請け負いました。

2017年1月11日に本番稼働。13日、教材配送データのバッチ処理が0:30から9:30のメンテナンス時間内に完了しませんでした。HISOLが調べたところ、目標時間45分としていたものが15~20時間かかったり異常終了することがわかりました。Z会は事態を重く見て19日に新基幹システムの利用を断念し、旧システムの継続利用を来ました。

2017年10月にZ会は27億円超をHISOLに求める訴訟を提起。2022年2月24日の一審判決で11億円超の支払をHISOLに命じました。HISOLは控訴しましたが、2022年10月5日に東京高等裁判所は棄却を言い渡し、上告しなかったためZ会の勝訴が確定しました。

裁判でHISOLは次の主張をしましたが認められませんでした。
①スケジュール表の処理時間は目安。性能要件の合意はなかった
②処理方式やハードウェアの見直しで対応可能な不具合に過ぎない
③Z会が本番相当データの提供を怠ったため要求性能を確認できなかった

これは判決が妥当だろうと思います。ただ、本当に処理時間だけの話であればフラッシュディスクにしたり並列JOBにするなど対策は色々考えられるのも確かです。少し残念です。

【社長の疑問に答える IT専門家の対話術 第236回】(P.86)
<自分で答えを見つけ ゲームチェンジャーになる>
「未来技術2023~2032 全産業編」(日経BP刊行)の「ゲームに勝つ姿勢」から
・企業の活動はゲームの一種
・ゲームに勝つには次の3点が重要
1)挑戦:正解はない。自分で見つける。ルール変更もあり
2)考え抜く:ゴールを明確に。作戦コンセプト(CONOPS)を明確に
 ※Concept of OperationsをCONOPSと言うらしい
3)視野を広く:状況の変化、技術動向、HWとSWの両方を考える

DXが事業を変える取り組みなら、情報システム部門とその相方であるIT企業が前面に出る機会になると指摘されています。そのためにはゲームの3要素を考え抜くことが必要です。

以上