日経コンピュータ2017.10.12 | HATのブログ

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IT関係のニュースを中心に記事を掲載します。日経コンピュータで重要だと感じた記事とコメントを2010年9月1日号から書いています。
このブログは個人的なものです。ここで述べていることは私の個人的な意見に基づくものであり、私の雇用者には一切の関係はありません。

特集は<IT部門、「攻守統合」 見えたIoT時代の進化系>です。数年前に某元編集長が「IT部門不要論」を声高に叫んでいましたが、この特集ではもっと地に足を付けた記事で安心しました。IT部門の役割と第2IT部門の役割を明確に定義しながら統合の形をパターン化するという良い特集でした。

【日清食品が「即席」経費精算 年8300時間減の実績を外販へ】(P.07)
経費精算業務のムダを省くため日清食品はSuicaの履歴データを連動出来るようにJR東日本に申し入れして認められたそうです。社内で使用している経費精算システムを外販するという事ですが検索してもサービスのページはありませんでした。広報のPDFに「サービス導入を検討したいお客さまは、財務経理部に電話して欲しい」とだけありました。既にキューピーには入っているそうです

 

経費精算クラウド大手のコンカーにも同じ仕掛けを提供するそうです。

【ANAがビジネスチャット導入 まず空港業務、現場判断が速く】(P.08)
羽田空港内の搭乗口や貨物担当との連絡を、トランシーバーを使った音声からチャットツールに変えることで効率化したというニュースです。採用したのはL is Bの「direct」だそうです。チャットワークでもslackでもなく日本のベンチャーのサービスを採用したのに驚きました。

【「船舶IoT」で燃費向上 日本郵船や商船三井が本格活用】(P.10)
外洋航路の船舶はインターネット接続が出来ない地域を通りますので船舶内のローカルシステムがほとんどでした。NTTやNTTデータが来年(2018)夏ごろまで実証実験を行うそうです。大型コンテナ船で欧州まで航行すると燃料費は最大で10億円を超えます。数パーセントでも効率があがると大きなコスト削減になります。
メインエンジンと発電機の状態監視システムを積み、エッジコンピューティングでローカル処理しながら衛星経由で情報を集めて深層学習などで分析するそうです。

【中堅企業も建機IoT、エッジ活用 東空販売と安川情報が開発】(P.11)
パワーショベルの先端にとりつける油圧ブレーカー向け稼働監視システム「TO-MS(トムス)」を開発し2018年春ごろから提供をめざします。故障予測を行います。
深層学習はクラウドでなく建機内のIoTゲートウェイで行います。
今後は結果としての精度勝負になるでしょう。

【ネット大手がビットコイン事業 GMOは100億円投じる皮算用】(P.14)
GMOインターネットが専用コンピュータを自ら開発して、データマイニング事業を2018年前半に始めます。DMM.comは仮想通貨マイニング事業を2017年10月から、SBIホールディングスも9月から参入します。
現在の全体のマイニング総報酬は円換算で1日当たり8.5億円。GMOは電力コストが安い北欧のデータセンターにサーバを約400ラック並べて、世界全体のハッシュ生成数の6.3%を占める計画。予定通りだと毎日5300万円を稼ぐ計算になります。
個人的にはゴールドラッシュのようなお祭り騒ぎは好きではありません。

【スマートホーム普及に77社終結 世界30兆円市場狙い、前のめり】(P.15)
スマートホーム向けIoT機器の普及を図るため、77社が集まり「コネクティッドホームアライアンス」が設立されました。主な企業は次の通り
 自動車:トヨタ、日産、ホンダ
 IT:NEC、NTTデータ、IBM、HP、MS、日立、富士通
 住宅:LIXIL、YKKAP、大和ハウス、トヨタホーム、パナホーム
 電気ガス:大阪ガス、中部電力、東北電力
 電機:パナソニック、三菱電機

他陣営として、つぎの連携が挙がっていました。
 TEPCOスマートホーム:東電+ソニー
 plusbenlly:NECパーソナルコンピュータなど50社
 auHOME:KDDI
ガラパゴスで競っている間に黒船来襲という事がないようにインターフェースは共通化してグローバルでのコンセンサスを取って欲しいです。

【乱反射:都銀の基盤をクラウドに集約 世界で存在感を示そう】(P.17)
北川賢一氏のコラムです。あまりにショッキングな数字が載っていました。
世界のITマーケットに占める日本のシェア(一部想像)
 1993年:20.3$
 2010年: 9.3%
 2017年: 5.6%
このままの状態だと10年後には3%程度に減り世界から日本は相手にされなくなるそうです。
そんな状況なのに「日本市場におけるITベンダー各社は、自社顧客には儲かるレガシーを薦め、他社顧客に儲からないクラウドを薦めている」ので危機的だという提言でした。

【IT部門、「攻守統合」 見えたIoT時代の進化系】(P.22)
事業部が出自の「第2のIT部門」の取り組みを全社に広がるために「第1のIT部門」と統合する事例が多く挙がっています。既存のIT部門の3つの力を期待されています。
 その1.IoTサービス基盤などのセキュリティ確保やインフラ調達
 その2.基幹系とIoT基盤などとのデータ連携
 その3.IoT関連のシステムを継続運用するために必要な要員やノウハウ

解決する形態として3種類に分類して事例が報告されていました。
1.第1と第2のIT部門を統合する
 IHI、日立造船
2.第1と第2のIT部門を分離したまま連携(トップが兼務など)
 トヨタ、SOMPOホールディングス、三井物産
3.統合せず第2IT部門を中途採用で固め社内シリコンバレーにする
 デンソー、三菱ケミカルホールディングス

【10年後、自動運転は当たり前に 宅配注文は99%予測できる】(P.48)
ライドオンエクスプレスホールディングス社長 江見 朗氏です。「銀のさら」などフードデリバリーを行っている会社です。
・宅配ずしは「銀のさら」が市場シェアの半分を占めている
・客単価は5000円、粗利率は7割
・人件費を考えるとビジネスは難しく参入障壁は高い
・寿司の年間消費額は1兆7000億円で断トツの1位。焼肉で5000億円
・デリバリーはその中の2~3%。まだ伸ばすことが出来る

明晰な語りで面白かったです。「銀のさら」は試しに1度だけ頼んだことがあります。思った以上に美味しくて驚きましたが、2回目は頼んでいません。

【日立、海外IT事業再編 IoTと「協創」で勝負】(P.52)
日立製作所のIoT基盤「Lumada(ルマーダ)」を米国で流行するオープンソース製品で全面刷新し、「Lumada2.0」になりました。元々のLumadaは米国子会社の日立データシステムズ(HDS)が開発していました。米マイクロソフトや米Amazon.comから人材を採用するためにシアトルに開発拠点を設けるなど戦略的な動きをしていました。

今回HDSとHDSが2015年に買収したBIツールベンダーの米ペンタホを統合して社名を日立ヴィンタラに変更し、Lumada2.0を使った協創ビジネスを開始しました。2017年10月には直前までGEデジタルのCOO(最高執行責任者)だったブラッド・スラク氏を引き抜いてLumadaの製品戦略を統括することになりました。

日立製作所の社長、東原敏昭氏のインタビュー「全社的に発想を転換できるように、これまでに1万人以上の社員が新しい方法論をトレーニングしてきた」

GEのようです。ただ違うのはGEは自社でメリットが出てから外販したことです。機能でなく事例としての効果で競って欲しいです。

【セブン銀行:東阪で勘定系を交互運用 システムも「年中無休」へ】(P.56)
セブン銀行の勘定系はWindowsで動作する日本ユニシスのパッケージを使用しています。いままで東京のDC(データセンター)内の2系統クラスタシステムで本番/待機系を切り替えて運用していました。BCP用に大阪DCでも同じ構成を非稼働状態で持っていました。大阪DCは今まで一度も稼働したことがないため万一の時の不安がありました。

2018年春には東京DCと大阪DCを交互に本番として稼働します。切り替え時間は30秒。ATMの操作時間内に切り替わるので実質上24時間稼働となります。
データ同期の方法としてSQL Serverの「AlwaysOn」という機能を使うそうです。ミラーリングとは、(1)複数DBをまとめて管理可能(2)最大4か所に複製可能(3)複製DBが活用しやすくなった という違いがあるそうです。

マイクロソフト製品の勘定系とは知りませんでした。待機系を頻繁に使うというやり方は参考になるでしょう。

【なぜなぜ分析でヒューマンエラー撲滅 第2回】(P.86)
今回は<当事者を追い込む「なぜ?」は誤り>として陥りやすい分析ミスについてです。「なぜそのミスが起こったのか?」と分析する時に「本人が馬鹿だったから」では「クビにする」という解決策しかなくなります(笑) 

 

組織としての解決策を考え、会社や組織全体で似たようなミスを撲滅するという視点が重要です。

 

代表的には次の5つの視点で追及すると良いそうです。
(1)どのような種類の間違いからミスが起きたのか?
(2)その間違いは「人の不完全さ」に起因するものなのか?
(3)その間違いは「物事の不完全さ」に起因するものなのか?
 ※職場の役割分担や体制といった管理面を含む
(4)どの時点で間違いに気付けていればよかったのか?
(5)間違いに気付かなかったのは、気づくための方策がまずかったからなのか?あるいは気づくために何の工夫もしていなかったからなのか?

【社長の疑問に答える IT専門家の対話術 第95回】(P.102)
自社のWEBサイトを作ることで会社の「コンセプト」を作成する練習をする方法です。
※記事では「経営者に通りがよい」からWEBサイトをホームページと呼ぶと冒頭に書かれていますが、ここではWEBサイトと書きます。

自分の会社をどう伝えるのか。これを考える事がコンセプトを作成する訓練になります。その方法として<5000サイト、200億広告運用のプロが教える 儲かるホームページ9つの兵法>から「コンセプトワーク7つのステップ」を引用されています。
①そもそもリアルな事業コンセプトは何か
②WEBサイトにどんな役割を持たせ、見込み客にどう思われたいか
③具体的にWEBサイトにどんな仕事をさせるのか
④USP(ユニークセリングポイント)を20秒で語れるか
⑤誰に見てもらいたいのか
⑥ターゲットは何を欲しているのか
⑦反応してくれた人にどう接するのか

④のUSPを明確にするというのは特に重要だと思います。簡潔だが効き目がある言葉。口に出し20秒(120~150文字)で語る。長年の顧客や成績優秀な営業担当者に尋ねてみる。
会社のUSPが作れるようになれば情報システムのUSPも作れるでしょう。

以上