第89話 西ドイツから九死一生でたどり着いた時計の話し その3 | 鳩時計修理”鳩ぽっぽ屋"のブログ

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牧師は信者さんに尋ねた。「この動かない古時計は、この先ずっと置いておくのですか。そもそも、この時計はどうしてこの教会にあるのでしょう。わざわざカトリック的な形した時計を教会で購入するはずはないだろうに。」

国王と六聖人が元の様に配置できました。トランペットを吹く人形の動作を操る仕掛けを作成しました。

すると、この時計の出処を知っている長老が答えた。

 

「この教会設立当初から教会員であったクリスチャン家庭があり、そこの次男さんが寄贈されたんです。プロテスタント教会にはあまり似合わないと意見された教会員も居ましたが、長年当教会に貢献された教会員と言うこともあってこれを受け入れたんです。その次男さんですが、航空パイロットのお仕事をされていて、世界中を飛び回っていたんです。その方が定年を迎えた時に、休暇を兼ねた最終フライト地を西ドイツに選び、そこでこの時計を買ったと聞いてます。その時計を教会設立記念日の記念品にと教会に寄贈されたんです。その時は父親も元気で礼拝に来られてましたが、牧師が赴任する3年前に天国に召されました。

振子も欠損で、他サイトにあった写真を真似て作成しました。

その次男さんは東京に居を構えていたので、年に数回いらっしゃる程度でした。その頃は時計は動いて、集会室では教会学校の始まりと終わりの合図が鐘の音とウエストミンスター寺院のオルゴールの音で知らされ人気がありました。信者ではなくても子供は教会学校に入れるご家庭も多かったですが、その親達はこの時計を「見たこともない、凄いです。」と感嘆の声が上がっていました。しかし、時計が遅れたり止まったりするようになって、やがて動かなくなってしまったのです。街の時計店に修理依頼しても断られ、致し方なく倉庫にしまったと言うわけです。」

「なるほど、良く分かりました。しかしですよ、壊れたものをそのまま置いて置くことには意味がないです。処分しましょう。」と牧師は言った。

トランペッターの腕を作成し、トランペットを握る部分はネジを切ります。

その後、東京の次男さんに連絡したら、そちらで処分して欲しいとの事で、地元の古物商に引き取られる運命になった。西ドイツの由緒ある時計が、突如ガラクタに変わった瞬間だった。古物商は安く買取り、骨董市にこれを出品した。普通ならば、古時計ファンが買い取って自分で直して楽しむことだったでしょうが、あまりの壊れようで買い手が付かなかった。その古物商はいたしかたなくネットオークションに出したのだった。

来月に続く