第89話 電池で動く鳩時計は | 鳩時計修理”鳩ぽっぽ屋"のブログ

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ヤフーショップ”鳩ぽっぽ屋”の主人でございます。鳩時計が好きで、修理と販売のショップをしています。※ブログの記事は作り話で、過去の所有者様と何ら関係はございません。鳩ぽっぽ屋

鳩ぽっぽ屋に修理依頼で来られる鳩さん達は、約7割が電池式です。

鳩時計をお買い求めになられるお客様は、きっと時計にちょっと温かみを求めていらっしゃるかと思います。鳩時計は昔ながらの錘で動く鳩時計ですと、毎日鎖を引っ張ることで鳩さんにエネルギーという食事を与えるような感覚で、それこそ鳩を飼っているみたいですね。そういう重錘式が良いとおっしゃるお客様は大勢いらっしゃいます。一方、毎日鎖を引き上げる手間は面倒だけど、鳩時計が欲しいというお方には、電池式がとても便利です。

 

電池式時計の修理の場合、時代時代で仕組みや形状が変わり、実は修理屋としては、部品揃えが大変なんです。法的には、製造販売終了後5年間は修理用部品をメーカーは提供しなければなりません。しかし、50年前の電池式鳩時計の部品を持っている時計屋は日本全国探しても鳩ぽっぽ屋の他には見つからないでしょう。

 

さて電池式鳩時計の変遷をちょっと紹介します。年代は正確な文献によるものではなく、あくまで修理経験での推定です。

 

〇1960年頃かと思います。モーター駆動機械式ムーブメントが開発されました。

時刻になると電気接点が閉じ、鳩がモーター動力で鳴く仕組みが組み込まれています。と同時にモーターの回転が時計側の香箱に取り付けられた歯車を廻し、ゼンマイバネを巻き上げます。時計は機械式なので、雁木車、アンクルで振子を動かしますので、振子は重要な要素です。なかなかのアイデアですね。欧州製では見たことがありません。

 

〇1965年頃からトランジスタ式ムーブメントが開発されました。

時計はトランジスタ制御で磁石に電流が瞬時流れ、テンプの磁石と引きあったりする動きをアンクルと雁木車に伝え時計が動く仕組みです。鳩鳴きの仕組みは、時計の短針軸と噛み合う歯車が、カムとロッドを動かし、時刻になると電気接点が閉じモーターが回転し、ふいごを動かす工夫が施されています。この時計では振子は不要ですが、振子が無いと鳩時計の雰囲気が出ないので、振子はトランジスタ式で別の回路装置によって動きます。

 

〇1970年頃からクオーツ式が鳩時計にも装着される様になりました。時計はクオーツで正確、しかし鳩鳴きは従来のふいご式で味わいがあり、とても便利な時計です。飾り用の振子運動の駆動はトランジスタ式が組み込まれています。

SEIKOと手塚時計(手塚時計解散後はシチズンへ)がそれぞれのタイプ、また年代で変化して行きます。最後の写真のタイプはなんとドイツに輸出されドイツ製のクオーツ時計に使われたいた例を見ました。

 

〇2010年以降はふいご式の鳩鳴きが電子音に代わり、同時に電子音オルゴールが組み込まれる様になりました。現在販売されている電池式はこのタイプです。

このタイプでは回路とモーター駆動装置、音響装置すべて一体化され、壊れてしまうと直し様がありません。ただ同じタイプの一体型ムーブメントは、販売終了後5年以内はメーカーが部材を用意しているので、メーカーで修理することが出来ます。

 

以上で電池式鳩時計の変遷を紹介しましたが、皆様のお好みは如何でしょうか。

 

最後になりますが、時計が止まってすぐに電池交換をしないと電池から液が漏れ、電極を腐食させ、酷い時は装置まで腐食させてしまう例が多くございます。高価な鳩時計がたった電池交換を怠っただけで台無しにしてしまいます。電池は1年に1回、時計は動いていても定期的に交換することをお願いします。