アメノミナカヌシ、タカミムスヒ、カミムスヒのいわゆる「造化三神」の中で、アメノミナカヌシに関する情報はほとんど存在しない。
同様に、アマテラス、ツクヨミ、スサノヲにおけるツクヨミも、ホデリ、ホスセリ、ホヲリにおけるホスセリについても、古事記に登場の場面で簡単な記述が見られるものの、その後一切語られることもない。
このように、三組の三神について、それぞれの中心に一つ「無為の神」を持つというのが日本神話の特徴であると、著者は喝破した。
ただし、何も為さぬ「無為」の存在ではあるけれど、存在自体が無意味であるわけではない。
それどころか、「無為」という中空構造をとることが、日本人の精神的な基盤にもなっているんだと説く。
いっけん合理的な話ではないが、「中空構造」が日本人の精神的な安心感や、日本社会の安定感に大きな影響を及ぼしたといえる側面があるのかもしれない。
さてさて、そんな難しい話はさておき、この日本で代表的な三人組といえば、女性では「キャンディーズ」(ラン、スー、ミキ)、男性なら「シブがき隊」(やっくん、もっくん、ふっくん)、「少年隊」(錦織、東山、植草)なのである。
この三組の共通点は、人気の拮抗する2人のカリスマ的アイドルと「おまけの一人」という構造を持っているなんてことは口が裂けても言えまい
「おまけの一人」とは、ご当人にはたいへん失礼な話ではあるけれど、それだけ他の二人の人気が超越しているということにしておきたい。
キャンディーズは、ラン(伊藤蘭)とスー(田中好子)の人気が拮抗しており、ファンのほとんどが「ラン派」「スー派」に二分されていたのは事実だろうし、それにくらべて、「ミキ派」(藤村美樹)というのはほとんど聞かない。ガンバレ!ミキ派。
いや、実際には、ミキファンもいるにはいたのであろうが、正々堂々と「ミキ派です」と表立って名乗りを上げる清々しい男子が激レアだったということだ。
「おっさん、いつの時代の話をしてるんだい?」とのつっこみはスルーして続ける。
驚くべきことに!(まったくおどろかないが)、これとまったく同じことが、「シブがき隊」にも「少年隊」にも見て取れる。
シブがき隊の二大勢力といえば、やっくん(薬丸裕英)と、もっくん(本木雅弘)、これ決定。彼らと比べて、存在感も薄ければ、ファンも大人しいのが、ふっくん(布川敏和)、その通り。
さらに、少年隊の場合なら、人気を二分していたのは、錦織(一清)と東山(紀之)、彼らに比べ、植草(克秀)の存在はあまりに希薄(大変失礼)。
少年時代、ブラウン管の中で唄い、踊っている彼らを見ていた幼き鳩は、「なぜ、3人組なのだろう?」「二人組のほうがすっきりするのに・・・」と思ったものでさらに失礼。
はっきり言って、「ミキ」や「ふっくん」や「植草」が邪魔に思えたのは鳩のせいではあるまい。
何かをやっているようではあるけれど、何もやっていないように見える。
つまり、幼い鳩の目にも「無為の存在」に思えたのだ。
そんなアイドルを「おまけ」としてくっつけても意味がないのではないか?そう思ったものだ。
しかし、今にして考えると、二人組ではなく、あえて三人組にする必要があったのではあるまいか。
日本人はとにかく、「3」という数字が好きなんだ。
「日本三大夜祭」「三大花火」などのイベントはもちろん、「三種の神器」「御三家」「真田三代」から、「駆けつけ三杯」。
果ては、結婚式の祝辞に定番の「三つの袋」に至るまで、とにかく『三』という数字が絡む言葉が無意味にある。
なぜ、そうなのか?
よくわからぬが、いくつかの仮説があり、「陰陽思想」もその一つだといわれている。
陰陽思想では、奇数を陽数、偶数を陰数とし、陽数が縁起のいい数字で陰数は縁起の悪い数字とされている。
さらに、「一」は物事の始まりを表す神聖な数字で、次の奇数である「三」が区切りが良く縁起も良いとして好まれてききたんだそうな。
その影響で、日本では「三」が最も好まれる数字となった、という理屈。
また、「三」という数字は「調和」を表すものとされ、二や四などの偶数では割り切れてしまうことから対立を生じやすいと考えられてきたことも大きい。
かといって五や七では多すぎるし、三つは「満つ」「充つ」にも通じ縁起が良いので、色々な意味で「三」が具合がいい。
要は、「三」というのは、『調和の象徴』のような数字だということであろう。
そう考えると、三神で一つのグループを形成するパターンがやたらと多い古事記神話の構造にも合点がいく。
そして、三神の中の一神を『無為の神』として、あえて存在感を薄めることで、両脇の二神の存在を際立たせる、という巧みな演出がなされていると見ることができる。
たしかに、アマテラスとスサノヲの二神だけを登場させたのでは、物語に奥行きがない。
あるときにはアマテラスの存在感が際立ち、別のあるときにはスサノヲが英雄視されるなどということは起こり得ず、どちらかが正義とされ、どちらかが悪とされて、その価値観が永久に固定されてしまうという事態になりかない。
徹底的にやり合わない分だけ、絶対的な勝者は生まれないけど、実質的な敗者も生み出しえない構造だといえる。
河合さんの説く、「中空構造」というのは、こんなふうに絶対的なモノを生み出しえない精神構造のことではないか?と、鳩ながらにして思う。
つまり、ミキちゃんも、ふっくんも、植草かっちゃんも、無為の神なのだ。
これによって、ラン派・スー派の対立構造を超えて、グループとしての調和をもたらす。
やっくん派・もっくん派、錦織派・東山派が対峙する構造も同じだ。
そういえば、中学2年の頃、クラスメイトの女子二人が、取っ組み合いのケンカをしたことがあったのを思い出す。
一人は、「やっくん派」、もう一人は「もっくん派」。最初は軽めにお互いのアイドルを中傷していたにすぎなかったんだが、次第にそれがエスカレートしてゆき、ついにはキックボクシングの試合のような有様になってしまうというコメディ。
たしか、綺麗な顔立ちのほうの彼女の鼻から、スーっと鼻血が滴れていたのを覚えとる。
ひとしきり殴りあっていた彼女らが手を引っ込めたのは、制止に入った副担任の女性の先生の、「どっちもシブがき隊のファンじゃない!」というひと言だった。
本当に、その言葉で嘘のようにピタッと殴りあう手と手が止まった。
彼女らを制止したのは、「どっちもシブがき隊の・・・」という言葉だったんだが、おそらくは彼女たちの脳裏には、「笑顔の3人組の姿」をかすめたのであり、そこには当然、「ふっくん」の姿もあったのだ。
つまり、彼女らのケンタを止めさせたのは、本当は「ふっくん」なのだ。
もし、シブがき隊が、やっくんともっくんの二人組だったなら、そう簡単にケンカは終わることなく、とことんまでやり合っていた可能性があった。
ケンカの理由の当事者ではない、「ふっくん」の存在が緩衝材となって、彼女らは自分を取り戻したのである。
そう考えると、「無為の神」の存在は非合理的なものでも無駄なものでもなく、グループ全体の価値を維持し、高める機能すら持っていると考えられる。
このように、「無為の神」は無為であっても、だた存在するだけで、緩衝材としての機能や、調整役としての機能を発揮する。
これによって、対立し合う二者のどちらかを完全に否定することなく、ある場面では一方を、別の場面ではもう一方を巧みに引き立てる機能をも「無為の神」が担っていると考えると、なぜ、日本で三人組のアイドルグループが立て続けに生まれたのか?も合点がいくのだ。
河合さんのいう、「中空構造」というのは、このようなものなのではあるまいか。
そう考えると、世の中には、「対立し合う二者」をたくさん見つけることができるが、そこに「無為の神」の存在を認めれらるケースが少なくなっているような気する。
しかも、自分と立場の異なる人を攻撃する輩は急増していますが、弁証法的に発展した議論とは程遠い、中傷のための中傷が跋扈していると感じる。
こりゃあ日本的ではありません。
たとえば、立場の異なるもの同士の対談企画などがよく行われたりしているが、お互いの意識が自論を展開することよりもより高次元の接点を見い出す方向に動いていかないと企画倒れになってしまう。
もちろん、二人の論者に任せ切りであっても、弁証法的に議論が発展していけば良いのだろうが、本人たちに相当な自覚がないとまず無理難題。
だとしたら、対立し合う二者の間に「無為の神」を充てて、弁証法ではなく、中空構造を生かした議論を試みる機会を増やしてはいかがなもんか。
「無為の神」の存在を意識するだけで、議論の矛先が敵対者に向かうだけでなく、同時に「無為の存在」に向けに中和された、より建設的な議論に形を変えつつ、互いの接点を見い出しやすくなっていくものと思われ。
「無為の神」は両者の議論の狭間に立って、時折頷いたり、理解できない部分を聞き返したりしているだけのこと。
これだけで、一般的な視聴者には理解しやすい、発展的な対談を提供できるようになるんじゃあるまいか。
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