私が服部克久先生の音楽に接していると,「なるほど!」「さすが!」ということが数多くあります。それは必ずしも音楽的なこととは限りません。この《うらぎり》という楽曲が『音楽畑16(Friends)』に収録されているのも,服部先生流の1種のシャレですが,これも「なるほど!」と思ったものです。また,この《うらぎり》はタンゴの楽曲です。音楽畑シリーズにも何曲かタンゴの楽曲がありますが,大胆なコード進行やオーケストラのシンフォニックさなどからすると,もしかしたら1番好きなタンゴの楽曲かもしれません。

 楽曲は♭4つのFマイナーではじまり(これも「音楽畑」シリーズとしては珍しい)中間部でメジャー・キーに変わるものの,最後まで調号は♭4つのままです。しかし,低音部の伸ばしにのって,高音部が音型ごとに目まぐるしく(1拍半や1拍ごとに)コードが変わります。そしてタンゴのリズムが提示されるとアコーディオンのソロが登場します。アコーディオンのソロは風間文彦氏ですが,これが絶品なんです。服部先生のピアノも含めて,「音楽畑」シリーズに登場するソリストは,作品へのアプローチが極めて適切で,妙に没入したり,艶めかしくならないところがいいんです。だから聴き手である私たちは作品に集中できるのだと思います。(演劇などでも同様なことが言えると思います)そしてタンゴのリズムを引き延ばしたかのような2小節単位の音型が2回現れ(後半は3拍子をはさむ)ヴァイオリンのソロを伴う中間部に入りますが,12小節間のみでヴァイオリンの駆け上がりから今度はヴァイオリンによるメロディーが始まりますが,ここのヴァイオリンが超高音でありながらキレッキレで大好きなんですよねー。そして同じキーで再びアコーディオンによるメロディーが始まり,前述のタンゴのリズムを引き延ばしたかのような2小節単位の音型が今度は4回現れ,続いてイントロの音型と主部のメロディーが同時進行して,最後にもう1度タンゴ引き延ばし音型(今度は4拍子+4拍子+2拍子)が2回登場し,短くイントロの音型が2小節現れて終わります。

 ちなみにこの楽曲は『バンド維新2011』にも《タンゴ・アパッショナート》というタイトルで吹奏楽版が収録されています。(演奏が航空自衛隊:航空中央音楽隊)服部克久先生の音楽がより広まっていくためには,吹奏楽曲も欠かせません。そういえば,今から50年前に始まった『ニュー・サウンズ・イン・ブラス』の記念すべき第1作の復刻CDが先日発売されましたが,服部克久先生も2曲アレンジを手掛けておられます。