本日は神奈川県の厚木市へ。
厚木は、東京から1時間半の都市近郊地域で
ありながら、自然が豊かな生産地でもある。
消費地であり生産地でもあるという
両面性を備えている地域です。
今回は、JAの方にご紹介いただき、
厚木市内で数少ない有機農家である
やまなみ農園の鈴木貴さんを訪ねました。
鈴木さんは、2011年の東日本大震災を機に、
サラリーマンを辞め、藤沢での研修を経て、
新規の有機農家として就農しました。
鈴木さんは、震災で感じたモノへの依存に
不安感を抱き、また「何もない」状況で、
衣食住すら確保できないことへの危機感が、
いまの有機農業のスタイルにつながったといいます。
鈴木さんは、近所から落ち葉を集め、
落ち葉堆肥をつくっています。
この堆肥は、苗床をつくるためにつかっており、
鈴木さんの畑に植える苗は、
全て自分で種から育てています。
そして、育った野菜のクズは、また堆肥になる。
畑の土に加える豚糞、鶏糞、牛糞も
ほとんどは地元の畜産農家と連携して集めています。
生産のプロセスにおいても、化学に頼りきりたくない。
有機農業は鈴木さんの意志を反映してます。
今回鈴木さんとお話しして感じたのは、
「循環」「連携」「関係性」という言葉の多さ。
落ち葉堆肥の話はまさに「循環」であり、
糞肥の話も地域の中の「循環」である。
その循環は「連携」により成り立っている。
そして、その連携は良好な「関係性」から成っている。
確かに、有機農業であれば、この3つのキーワードが
生産の面で欠かせないのは理解できる。
しかし、鈴木さんの農業経営において特出すべきは、
生産の面だけでなく、販売についても、「循環」であり
「連携」であり「関係性」で成り立っている点です。
鈴木さん曰く、
「顔と顔が見える関係性」
それこそが「美味しさ」の大切な要素なのだそう。
鈴木さんの販売方法は、
存在宣伝のために直売所へ
出荷していることを除き、
ほとんどが「提携」という販売方法による、
お客さんへの直接出荷です。
「提携」とは、日本に旧くからある販売方法で、
消費者が生産者を買い支え、
生産者が消費者の食の安全性を支えるという、
地域内消費の在り方を言います。
海外では、この「提携」の仕組みに習い
「CSA」というコミュニティ内での買い支えの
仕組みが地域の有機農業を残す手段として
注目を集めています。
現在、30数軒のご家庭と「提携」を結び、
その季節に採れた旬の野菜を販売しています。
お客さんは、鈴木さんのつくる年間60品目の
旬の野菜を毎週、あるいは隔週購入します。
露地での有機農業なので、もちろんこの季節に
トマトやきゅうり、ナスは売っていません。
鈴木さんとお客さんの間には、
それを理解してくれる関係性があります。
対等な立場を保ちながらも、
お客さんのことを思い、
お客さんから要望のあった野菜をつくってみたり、
必ず新鮮な状態の野菜を届けたり、
保存が効くようにあえて土付きのままお届けしたり、
関係性を良好に保つための工夫を凝らしています。
鈴木さんは、お客さんとの関係性と同様に、
地域の方々との関係性も非常に大切だといいます。
実際に、JAの部会活動だったり、消防団だったり、
さまざまな地域活動に参加し、活躍しています。
鈴木さんは、それもまさに、
「ご恩と奉公」だといいます。
鈴木さんの目標は、
「厚木の地域で有機農業の認知を広げる」こと。
そのためには、ゆくゆくはJAで部会をつくったり、
研修生を積極的に受け入れたり、さまざまな
要素が必要になります。
そのためにもまずは自分自身が
地域に貢献しなくちゃいけない。
そう、当たり前のように言います。
その姿勢は、お客さんとの関係性にも
共通するように感じます。
一見すると、鈴木さんの農業経営の在り方は、
旧くさく感じるかもしれない。
しかし、つながりや関係性の希薄さが嘆かれる
いまの世の中において、実はとても必要とされ、
一番求められている「美味しさ」
なのではないだろうか。
まさに、旧くて新しい農業経営のカタチ。


