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日本の構造と世界の最適化

戦後システムの老朽化といまだ見えぬ「新しい世界」。
古いシステムが自ら自己改革することなどできず、
いっそ「破綻」させ「やむなく転換」させるのが現実的か。

国内総生産(GDP)の推移:底を打って改善局面か

GDPを成長率で見ると、消費税引き上げショックや中国経済不安を経てようやく改善局面にあるように見える。

 

世界のGDPの推移:中国も含め2017年に復活か

輸出ジャンキーと米国などから揶揄される日本だが、世界経済が上昇局面にあることが輸出を通じて日本GDP成長を後押しした可能性がある。また景気の高まりを受けて米国FRBも欧州ECBも金融緩和からの出口戦略へ軸足を移している。日本はそうなっていない。

米国でトランプ大統領が就任したが物議を醸しながらも支持されているのも米国景気が好調なためでもある。

 

2017年までのデータでは復活機運で「もう大丈夫だ」という感じだが、2018年に生きているあなたは、トランプ大統領による米国保護主義が露骨に打ち出され、それが口先でなく貿易戦争手前までいって上げ調子に水を差すおそれがあることがわかっているし、また英国のブレグジットが合意なしで離脱する可能性が高まっている。

 

米中貿易戦争以上に深い影響を及ぼすのは米国金利が上昇局面に入っており、それが2018年のトルコリラ暴落の遠因でもある。米国高金利により世界のマネーが新興国から米国へ還流することが2018年以降にどれだけのショックを与えるかが問題だ。

 

為替相場の推移:流れは新たな円安水準模索か

米国経済拡大→ドル高円安という図式があり、2015年で円安が天井に達していたが、米国経持ち直しもあり再び110数円付近の新たな円安水準を模索しているようである。

 

貿易収支の推移:順調な持ち直し、貿易黒字

世界経済の復活とこれに伴うドル高円安もあってか、輸出入が持ち直し貿易黒字が安定化している。

 

2014年をピークとする輸入増大は急激な円安に加え、原発停止と火力発電の石油を不利なスポット価格で調達したせいか。

 

2016年の貿易総額の顕著な落ち込みは2015年からの中国不安、中国貿易の大幅な落ち込みの影響のためだと思われる。好むと好まざると中国経済の影響力が大きい。国内的要因だけではもはや日本経済を見極められず、米国も中国が沈めば沈む。日銀の量的緩和が思惑どおりいかなかったのも、世界経済の回復がもっと早いと読んでいたためであろうが、輸入国が落ち込めば日本も浮揚しにくくなる。

 

国際収支の推移:投資立国、貿易黒字も安定へ。

国際収支全般は2011年から2014年までの状態がウソであったかのように貿易黒字・所得収支黒字が安定している。とりわけ第一次所得収支の黒字は貿易黒字の4倍の大きさがあり、債権国・投資立国としての日本を映し出している。

 

しかしまた日本経済が世界経済の影響をもろに受けやすいこと、エネルギー面での脆弱さを改めて思い知らされるものだ。また中国が世界経済に既に組み込まれてしまっており、中国の景気変動が有無を言わさず世界や日本を巻き込んでいく。貿易立国であれば世界と無関係でいられない。また日本では既に内需拡大という表現は消えてなくなり輸出頼みの傾向は強い。島国特有の偏狭さやプライド、世界と関わりたくないという気持ちがあっても、その経済は内助をものともせず世界の大波に簡単に揺さぶられる。

 

株価の推移:株価はリフレ、再び勢いを取り戻すか

株価だけ見れば日本経済は上げ基調で好調に見える。

 

日銀が年6兆円規模のETF買いで2017年末に累積17兆円超、GPIFや公務員の共済年金が2017年末で50兆円規模の株式保有しているから「上げ基調」は国家の下支えによる人為的な要素もある。しかし日銀が手を放しても日本株式は株高を維持できるほど健全なのか?

 

2017年に株価が上振れたが変動幅も大きくなった感じ。国策介入が大きくてもはや株価は日本経済の実態を反映していない。

 

金利指標の推移:日銀の長短金利制御が作用か

日銀がインフレを作れない、手詰まり、緩和は限界、そういった声に押されてか、日銀は2016年にマイナス金利に踏み切った。

 

結果は金融市場が混乱したのか中止している。ただし、矢継ぎ早に「長短金利操作(イールドカーブ・コントロール)」を打ち出して失敗の痛手を覆い隠した。2017年に長期金利がマイナスから浮上し、プライムレートも下げ止まった。住宅ローン金利まだ低下中。しかし2018年に生きているあなたは、日銀がますます手詰まり感を強めていることはおわかりだろう。

 

銀行・保険・年金基金は長短金利が順ざやでないとビジネスモデルが崩れる。日本国債の利回りがゼロやマイナスに落ち込むと、代替を見つけなければならない。大企業を囲い込んでいない地銀などは行く先がなくなっていく。そして外債に逃げるが、米国債やドイツ国債など優良銘柄も低利回りであり利回りを求めてリスクの高い国の国債へ資金が流れる。また安定高利の代わりにリスク投資や金融商品売買手数料で稼ぐようになる。また昨今地銀が不動産融資に逃げ込んでいる様相がありそれが局地的不動産バブルを後押ししているかもしれない。

 

2018年に生きているあなたはスルガ銀行のシェアハウス融資問題を知っているが、これは氷山の一角であろう。

 

欧米の量的緩和が成功し金融引き締めに舵を切ろうとする時、金融緩和で先行していたはずの日本がいまだ五里夢中なのだ。2018年の日銀はあくまで2%の物価を目指しながら、追加緩和には手を出さず、「隠れ正常化(買取総額の縮小)」や金利の臨機応変対応に回っている感じである。長期金利のマイナス政策への地銀等からの反発も高まっている様子。

 

住宅着工件数の推移:住宅ローン金利低下だが

世界経済の復活を受けて経済が拡大し、住宅ローン金利が低下を続けるという好環境にもかかわらず、住宅着工件数は横ばいになった。日銀はREITも買っている(年間900億円のペース)のだから不動産市況は上げのはずなのだが。この辺がMAXなのか。

また貸家用は順調に拡大している。

 

 

地価はリフレ、住宅以外の不動産需要が寄与

地価は公示価格のデータからは安倍政権発足とともに下げ止まって高騰を続けている。日銀のリフレはここでは機能している。ただ地価の高騰が物価全体の押し上げに素直につながっていないのである。また住宅着工件数が横ばいにもかかわらず地価は順調に上昇を続けている。つまり住宅以外のオフィスビル等の要因が作用している。

地価はどんどん上がり続けているが、タワマンの竣工戸数は減っている。これだけでは何とも言えない。リーマンショック直前はタワマンはすごいことになっていた。それと比べると市場動向はまだ小さなものだし、既にネガティブな情報も多い。タワマンバブルの実態はわかりにくい。日本経済にそれほどインパクトがあるのか?転売などの仲介者らが盛り上がっているだけか?

 

新車販売の推移:国内販売台数が回復

国内販売台数が持ち直しているが、2015年軽自動車税を控えた先食いレベルには戻していない。日本のものづくりの花形である自動車産業だが、株価や地価のリフレが示すほどの勢いは見られない。

 

「輸出!輸出!」と言うが、日本の自動車メーカーは輸出台数の3倍以上の自動車を海外生産している。

 

2018年に生きているあなたは米国トランプ大統領が日本の貿易黒字を攻撃し、とりわけ自動車輸出への制裁関税を検討していることを知っている。「日本からの輸出」と日本メーカーからの輸出は別物で、安倍首相が中国で生産した日本メーカーのゴルフクラブをトランプ大統領にプレゼントしたことが象徴するように、日本メーカー品が中国輸出やメキシコ輸出に化けていることも米国人はようやく気づいただろう。

 

産業活動の推移:建設業(オフィス等)躍進

住宅着工件数が横ばいとなる中、住宅以外の建設が妙に躍進していることがわかる。これは民間のオフィス需要などによるものと思われる。企業が手狭なオフィスを思い切って拡張(設備投資)に乗り出しているということである。2018年も経済は引き続き好調さを維持しているように思われる。

 

鉱工業活動指数が100を超えたが、2014年以来である。世界経済の復活と連動しているように思われる。

 

細目では航空機、生産ロボット、生産機械、運搬機械、土木建設機械、半導体・フラットパネル製造装置、炭素繊維などが活況となっていた。こうした生産手段は生産拡大など更に事後的に好影響をもたらす明るい材料だが、トランプ大統領の仕掛けた貿易戦争がどれだけ2018年に水を差すことになるのか見極める必要がある。

 

物価の推移:持ち直しに転じたが、目標には程遠い

2016年の落ち込みを経て2017年には物価の持ち直しがあった。これは石油価格の持ち直しが背景にあると思われる。しかし株価や地価の盛況ぶりからすると消費者物価からはアベノミクスの効能は感じられず2%実現はほど遠い。

 

さらに企業物価指数と消費者物価指数の勢いの差がかなり大きい。これは消費財の値上げができる状態にないことを仄めかしている。

 

石油関連指標の推移:底を打って上昇へ転じる

ここ数年間の石油の暴落も2016年にようやく底を打ったようである。といっても2017年はまだ2011年の価格水準の半分にも届かないが、底なし沼から脱した。これによって異例の石油安という異常要因が解消され、物価にも押し上げ圧力が働くかもしれない。日本株価は米国株価に追随する傾向があり、米国株価は石油価格に追随する傾向があるから少なくとも株価の上押しとはなっているはず。

金属関連価格指標の推移:底を打って上昇へ

石油価格の持ち直しに呼応するかのように金属価格も底を打って上昇に転じている。

 

 

売上関連指標の推移:小売は回復中

商業販売などを見る限り、株高が示すような上げ基調は2014年をピークに崩れて落ち軟化ている。小売は2014年の消費税のショックがようやく取れたというところなのか。2019年の消費税引き上げがどれだけダメージは与えることか。

 

代表的な小売店舗の状況としては、百貨店の落ち込みが止まらない。百貨店という業態自体がもうオワコンだったりして・・・。意外というか消費低迷機運の中でコンビニが健闘している。商品開発も含め非常にタフと言える。コーヒーだけでなく、カット野菜や豊富な魚系缶詰など単身者増加という時代の変化にうまく対応しているからか。

家計最終消費からも2014年消費税引き上げのショックが取れたことがわかる。

労働関連人口の推移:労働力不足の認識強まる

生産年齢人口(15歳~64歳)が8000万人を割り、いずれ7500万人も割る。

 

女性の労働力参加は安倍政権の方針でもあるが、景気持ち直しもあってか就業者数は着実に増加。セクハラ問題はこうした中で単なる個人の価値観にとどまらないものとなっている。男だけで経済が回らず、男の稼ぎだけでは少ない。

 

就業者数の増加・失業率の驚異的低さと景気浮揚は喜ばしい話だが、低成長状態にとどまっているのに既に労働力逼迫へ向かいつつある。政策をいくら打ち込んでも労働力インプットの制約がある。就業者数がどんどん労働力人口に近づいていることを見ると限界はすぐ先にある。こうした状況を受けてか、政府は新たな在留資格を設定する見込みとなっている。外国人技能実習制度の実態が安い外国人労働力の確保であることは明白であり、誤魔化しではなく正面から手を打つ必要があるが・・

他方、正規雇用3500万人に対し非正規雇用は2000万人

 

「サラリーマンの皆さん今年のボーナスは?」なんて言う毎年恒例のマスコミ記事もこの状態では嫌味に聞こえる。戦後サラリーマン社会は確実に変質していっている。文化も変質するだろう。

 

また人手不足だからといって非正規が簡単に正規に転用されるわけでもない。派遣の雇い止めもある。それは人手不足だが賃金は上げたくない、あくまで安い労働力が欲しいという企業の本音が見え隠れする。それは1億総サラリーマン社会の連帯感の崩壊を如実に物語っている。

 

 

賃金統計の推移:実質賃金は再びマイナスへ

経済に目的があるとすれば、政策が目指すべき最終的な果実は実質賃金の増加である。

 

株価と地価はリフレだが、実質賃金にはアベノミクスや黒田バズーカ砲の恩恵はまったく感じられない。実質賃金マイナスとは、物価を勘案すれば前年より貧しくなったことを意味する。

 

失業率が驚異的に低く、人手不足であるにもかかわらず賃金が伸びない。結局、賃金競争が生じる環境が備わっていないことが原因として挙げられるだろう。不安の中で正社員にしがみつけばますます賃金競争は生まれない。中堅がどんどん転職して企業を脅かせば賃金上げ圧力となるが・・それは日本の労働慣行上あり得ないし財界も歓迎しないだろう。行き詰まりだ。

 

労働生産性は順調に伸びている。しかし労働生産性が上がろうがどうなろうが実質賃金は増えないのだ。

 

日本経済の雑感のまとめ(中国頼み?国内手詰まり)

2016年の世界経済の崩れ方が大きかったことが2017年の回復よりも危惧される。

 

2015年の中国株暴落後も中国不安・中国経済縮小が大きくこれに全世界が揺さぶられた観がある。他方イギリスではEU離脱の国民投票が成立しアメリカでは保護主義が濃厚なトランプ候補が大統領に当選した。トランプ大統領の保護主義は口先だけではなかった。

 

中国経済が世界経済の牽引車となっているが、それは矛盾を抱えた体制であり、不採算の国策系ゾンビ企業が大量の不良債権を抱え、資本取引規制に見られるようにマネーも脆弱な地位にある。リーマンショックの打撃への対策として中国が仕込んだ金融措置がゴーストタウン都市などの不動産バブルを招いていた。中国政府はこうした状況を改め、内需消費社会を目指しているつもりではある。

 

また一帯一路という中国シルクロード計画は自由貿易圏というより中国重商主義の匂いがし、しかも採算を度外視した政治的なものである。また資本主義を過信する欧米イデオローグは資本主義注入で中国を安全化するつもりであったが、これは失敗だ。

 

なぜ日銀は行き詰っているのか(北風政策の失敗か)

日本経済は2017年の持ち直しと2018年もその勢いが続いている。世界経済の回復の遅れ、中国経済への日銀の過信が誤算となったのかもしれない。しかしそれだけではなく、どうやら日本経済は「悪循環」にはまっている。

 

人口問題がずっしりとのしかかっており、社会保障崩壊を阻止するため増税の必要がある。増税するから消費が伸びない。だから賃金も伸びない。賃金が伸びないので消費が伸びず、企業は低価格を維持してなんとかシェアを守り、利益を維持するためコストである賃金を上げない。そして・・・同じところをグルグル回っている。

 

ただし、「悪循環」と言っても不況ではない。日銀金融トリックという点滴を打って安定している感じ。低成長だが長期プラス成長である。ただ日銀がETFまで買ってしまうと、売ると株式市場が暴落するため将来も売れず、出口戦略は塞がれることになる。

 

またインフレは通貨を信頼しなくなった時に起こるが、不安があれば会社に一層しがみつき(賃金低迷)現金を大事にするだろう(通貨万全=インフレ刺激なし)。失業率がこれほど低いというのに、「いつ会社やめてもどこにでもまた入れる」という楽観は若者にも感じられない。「給料は今は安いが日本は不沈空母で将来はバラ色なのでローンでどんどんスポーツカーとか買おう」という姿勢は皆無だ。バブル崩壊後のバッファとなった非正規の行く末を見た若者達は震え上がり、正規社員の地位に尚更しがみつくだろう。

 

インフレ政策は太陽政策ではなく、うまくいかない北風政策ではなかろうか。

「貯金などせずに投資しろ!」「インフレ政策だから消費しないと損だぞ!」と北風を浴びせてもますます保守的になるのみ。

 

また年功序列終身雇用がたたって労働市場に流動性をもたらすことができず、賃金が上がらない問題を是正できない。安倍政権の労働改革も結局、流動性促進ではなく企業の囲い込みを資するものに終わっている。

 

大局的には、日本だけでなく戦後中流をバックボーンとした先進国の消費経済社会が行き詰っている。中流が永遠に増殖し続けないかぎり、戦後確立されたこのカラクリは崩れ去る。欧米は移民を取り入れることでこれを維持しようとしたがアンチ移民機運やナショナリズムや盛り上がることとなった。

 

日本は戦艦大和に多くの穴が空いて少しずつ沈んでいく感じ。

しかも穴をふさぐ板を得るため船体を剥がし別の穴を作ってしまう。財政不安や社会保障不安を解消するはずの消費税引き上げがまさに船を剥がして別の穴をふさごうとするものだ。実態として点滴を受けている程度の経済には再度の消費税引き上げは非常にネガティブに響くことになる。日銀の緩和も限界だ。