大衆の衰弱と共に迷走する家電メーカー
家電メーカーは、自動車と並んで戦後の製造業の花形であった。
戦後復興に続く高度成長の矢先に「三種の神器(電気洗濯機・電気冷蔵庫・テレビ)」や高度成長期の「3C(カラーテレビ・クーラー・自動車)」において社会生活を塗り替えるような変化をもたらしてきた。
*電気洗濯機は「おばあさんは川で洗濯を・・」という桃太郎のような時代から女性を解放した
電源に差し込むだけで、ライフスタイルは変った。
家電メーカーのピンチ
しかし、バブル崩壊以降は家電メーカーは不調である。
昨今では、エコポイントでのカサ上げ、地デジ化でのカサ上げもあったが、驚くほど衰弱しているようである。もはや家電メーカーを育ててきた「勃興する上昇志向の大衆」がいなくなっているのだ。また政府の支援策は、後からエンジンがかかって賃金上昇につながるような成長がないと、ただの先食いになる。
*小泉政権は、食器洗い乾燥機・薄型テレビ・カメラ付携帯電話を「新三種の神器」に
*エコポイント制度により毎月の家電需要が1.8倍に増えた
・需要先食い エコポイントは失策か(真相深層) (2012/12/29日経新聞)
・家電ニッポンの凋落は10年前に分かっていた(日経ビジネス)
・テレビ崩壊で巨額赤字へ 存亡の機に立つ家電メーカー(2012/2/13ダイヤモンド)
世界金融危機以降には、半導体メーカーの瓦解と並んで、日本家電も大きく傾いたようである。
・米マイクロンの完全子会社に=エルピーダ(2013/7/31ウォールストリート・ジャーナル)
■PDAを踏み潰し、消費世界を塗り替えたスマホ
そう言えば
業界通が「次はPDA!ユビキタス!」と叫んでいたのに、アップルは「プレイヤー」としてのスマホを作った。マルチプレイヤーであるため、デジカメもウォークマンもゲーム端末も別途不要になったのか。PDA志向のブラックベリー携帯やノキア高機能携帯は大きく外れてしまったようだ。さらにパソコンはいよいよ落ちぶれていき、パソコン離れも進んでいる。マイクロソフトも相変わらずWindows OSとOfficeの黒字に頼っている。
*アップルはスカリー社長時代に「ニュートン」というPDAを出し失敗している。
*ニュートン以降のPDAのトップを走っていたのはパームとザウルス(シャープ)であろうか。
・日本製デジカメやゲーム機が苦境に!?中国の「スマホ集約化」は日本以上(2012/12/28ダイ
総合家電 → スマホ(マルチプレイヤーへ)
各部署が各製品 一つの製品に
ウォークマンの部署 ビジネス機器からではなく
携帯端末の部署 最初からプレイヤー
デジカメの部署
電子辞書端末の部署
■テレビでの失敗/枯れた製品か
プラズマテレビと大型液晶テレビの失敗がシャープ、パナソニック、ソニーに大打撃を与えたともされる。挙句の果てに中国・台湾マネーに頼ることになった。嫌中派はいるが、これが実態である。
・中国・台湾マネーに救済される日本家電、道をどう拓くか(2012/5/2WEBRONZA)
*プラズマと液晶の二つに投資を分散し続け、プラズマからの撤退も遅かった
日立は大型テレビ路線から早期に撤退したので傷は浅かったとされる。
テレビはもはや枯れた製品となったのか?
逆に、下手をすると他の家電メーカーは、「テレビという役割を終えた製品」から撤退できないのかもしれない。つまり負けるとわかっている戦いに兵力を投入し続けているのかもしれない。大艦巨砲の時代が終わっても戦艦にこだわり、これを作り続けるとどうなるのであろうか?
*ラジオもかつての役割を終えたが販売されてはいる。しかしかつてのような花形ではない。
テレビ=戦艦 → ← スマホ等=雷撃機
高級高画質テレビにこだわる日本家電メーカー
70年代以降には、「量から質へ」が幅広く認知され、大量生産から「多品種少量生産」などもスローガンのようにビジネス界では叫ばれていた。しかし、現在から見るとこれも間違っていたようだ。
*日本のようにコスト高の地で多品種少量生産をすれば赤字となる
■直線的な発想という幻想
ところで
事業の建て直しにあたり、家電メーカーは依然として、高品質高価格テレビ(4K)に救いを見出そうとしているようだ。技術的には4Kの先もすでに視野にあるものの、その方針でいいのか?まあ、経営者・株主が決めることだが。メタメタになると経産省が介入して更にダメになっていく気もする。
・4Kでは家電も放送局も復活しない (大西宏BLOGOS)
・スーパーハイビジョン「8K」2020年放送開始 消費者「テレビまた買い替えか」の冷たい反応(2013/6/9Jcast)
プラズマテレビは液晶テレビに負けた/画質は勝っていたのに。
ビデオデッキでベータはVHSに負けた/性能は勝っていたのに。
*ドコモのFOMAは最先端すぎて失敗
*ベータ規格機器は複雑で需要爆発時の廉価版投入が難しかったという
・ビデオ戦争(wikipedia)
高性能なら成功するというのが幻想であることは、日本人は良くわかっているはずである。
素人的な感覚からも、「高画質さえあれば高く売れシェアを取れる」というビジョンにビジネスは感じられないし、説得力もない。高画質化というだけでは、白黒からカラーテレビへといったシフトほどのインパクトもないであろう。高度成長期のメンタリティーを引きずった老人が徘徊しているのか?
白黒テレビ → カラーテレビ(皆が飛びつく)
現在のテレビ → 4K等高画質大型高価テレビ?
■ものづくり幻想と大量生産
といって、日本家電が「ものづくり匠の技」という情緒で欧州高級家具やランボルギーニー、老舗のワイナリーみたいな高級職人芸路線を取れるわけがなかろう。実態は大衆向け大量生産である日本製造業を少数富裕層を相手にする商売に転換できない。それにそれでは膨大なホワイトカラー層は養えない。
*日本の老舗高級旅館は倒産が相次いでいる
ユニークな家電の健闘・専業メーカー
「総合家電」という時それは超大企業だが、それぞれの機器を製造する部門は相対的にそれほどでかくない。
■選択ではなく背水の陣、光る単品メーカー
ということは、専業メーカーが特定家電で高品質を追求し、ニッチをとらえて勝利することも可能となる。
例えばサイクロン掃除機のダイソン(英メーカー/英国外生産)は高級高価だが、大手家電の掃除機に負けないブランドを生み出している。ロボット掃除機ルンバも日本市場で脚光を浴びているようだ。
・ダイソンのサイクロン掃除機新機種 人気の秘訣は ダイソン「DC46 MH COM」 (日経新聞)
・働き盛りは「時間節約」、高齢者は「労力低減」に――ロボット掃除機「ルンバ」人気のワケ
掃除機というのは必需品だが枯れた商品だと思っていたが、そういうやり方もあると。
これらは専業メーカーで特化している。日本家電の掃除機にはない強いこだわりがある。というか、それが負ければ全滅である。「集中と選択」ではない。集中する以外に逃げ道はない。何よりも、商品ブランド力としては特化して先行したほうが消費者の心に残るのかもしれない。
*ただし日本家電はサイクロン掃除機ですぐに追いつき、性能では日本家電のほうが良いという声もある
総合家電=よろず屋という立ち位置は、日本人にとって自然なものかもしれない。雑誌でも何でも総合が多い。単品料理ではなく、ごった煮である。他方、欧米ではコンセプトを研ぎ澄ませた単品が目に付く。そもそもハンバーガー屋、フライドチキン屋、ドーナツ屋というのが単品追求型である。
総合屋 ← → 単品屋
「選択と集中」とは言うが 「選択と集中」ではない、選択肢はない
不採算部門リストラは難しい
■いい加減なシナジーや総合力にすがる
しかし総合で何もかもやっているが、どの製品も弱いというのでは話にならない。零細企業ですらオーナー社長が「ミニ財閥」を志向しやすいため、小さな会社のリソースがいくつもの事業部門に分割されてしまう。そして彼らは「シナジー」という言葉が大好物である。
「総合家電」という位置づけも見直した方がいいのではないか?
海外工場で低価格大量生産で世界で勝負するのか、特定製品を研ぎ澄ましニッチな高級高価高性能を狙うのか?
電波利権が通信・放送の融合を殺す
■放送とテレビ
テレビ放送業界は、「電波の希少性」を盾に『放送法』と行政の保護の下カルテルとなって君臨してきた。まあどこが放送しようが新聞も含めてコンテンツ卸問屋は電通である。こうして過去45年間以上もの間も新規参入は皆無だった。視聴率競争などというが、リスクの大きいテレビ芸人はともかく、テレビ局社員の高給にほとんど影響もない。
*テレビはカルテルゆえに公共的要求が強くなる。自由参入であればそこまで縛られない。芸人の中には縛りが強くなってくることへの不快感をあからさまにする人もいるが、それはテレビが権力だからだ。
そして放送技術も、既得権を守る方向で規格化されていく。これではますますガラパゴスとなる。土建屋が地域カルテルを守っている商慣行と同じなのだ。
特筆すべき点は、通信・放送の融合の時代に「放送の大御所を守る」ということで、巨人NTTも除外されている点だ。大御所既得権同士お互いのシマを荒らさずにということか?
「新しい時代など来ねー!新規参入も許さねー!これからも俺たちのシマだ!役人も味方だ!」ということである。まさに封建サムライ・スピリッツ。既得権を守ろうとするアニマルスピリッツだけは凄まじい。
このようにして、テレビやネット、デジタルを融合してしまう経済革命は頓挫した。
繰り返される「親方日の丸」型技術革新
アナログ・ハイビジョンTV → NHK主導MUSE規格/
しかしデジタルではオープンなMPEG-2がHDTV規格となる
BSデジタル → 帯域をふさぎ新規参入を制限
セキュリティーを理由にB-CASで機器を支配
インターネットを恐れBMLというガラパゴス規格
地上波デジタル → BSや衛星で技術的に十分なのに地方民放延命のため始動
衛星よりも莫大なコストがかかる
ワンセグ → 総務省と放送局カルテルでホワイトスペースふさぐ
NHK契約・NHK受信端末が必須
通信・ネット系の参入不在
携帯端末への標準装備も減り失敗か
米はスーパーWiFiへ(MSやグーグルが歓迎)
プラズマTV → 失敗・小型機器に応用できない
3Dテレビ → 失敗・3Dメガネが面倒くさい
- 新・電波利権/アゴラブックス
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土管の根元を押さえ料金を取る。
そういった中央集権型ビジネスモデルが既得権保護行政とぴったり手をつなぐ。これを親方日の丸という。一方、インターネット技術の進化により、非中央集権型/自由参入型のコンテンツ・ビジネスが勃興している。情報発信は長老と特権によるものではなくなった。
・さまぁ~ずの三村マサカズが、「若者のテレビ離れ」についてツイート
既得権は、あたかもIP技術とは無縁なガラパゴス・インフラを作って日本人をそこへ閉じ込めることを考えている。だが似たようなものは二ついらないのだ。鎖国でもしないとガラパゴス技術は負ける。
だが世界で商品を売ってきた日本にとって、国を閉じてガラパゴス技術を強制することは自滅行為であろう。
こうして既存の日本独自のインフラ環境に適応すればするほど、世界市場では太刀打ちできなくなっていくのである。
必要なのは「がんばがんば」の精神論ではなくそういう環境の認識ではないか。既得権を守る行政仕込みの技術革新を批判する政治勢力を作ることであろう。このままでは、一部の者の利益と引き換えに日本全体は大きく立ち遅れることにならないか。