発達障害の双子と共に〜「それ、間違ってる」

 


音楽家の秦万里子です。

33歳になるASD(自閉症スペクトラム)の双子の娘たちとの歩みを綴っています。
EテレのハートネットTV出演や「子どもを抱きしめたくなるコンサート」を通じ、障害児をはじめ、育児に寄り添うメッセージを届けています。

 

 

「それ、間違ってる」白黒つけたい娘と、

洋服もグレーが好きな私。

 

 

 

「正しいか、正しくないか」 「合っているか、合っていないか」 「本当か、嘘か」

 

世の中の多くのことを、この二者択一で判断する娘たち。

 一方で、「何事にも誤差はあるし、それこそが人間らしい」

と思って生きてきた、私。

 

この、まるで水と油のような娘たちとの価値観のすり合わせは、なかなかに、骨の折れる作業です。

 

例えば、車の運転中。 

よく助手席に座るHは、「人間交通法規」と化します。 

「今の、ちょっと線、踏んだよ」

 「制限速度、超えてる」

 

もちろん、彼女が正しい。

 

 運転は命に関わることですから、

私も「はい、承知しました」と、素直に受け入れます。

 

しかし、これが「食」のことになると、

少し厄介な問題が起こりがちです。 

 

そう、「賞味期限」の問題です。

 

もともと食に強い興味があるわけではない娘ですが、

もちろん好みはあります。

 彼女が好きそうなものを買っておいても、

期限までに食べきれないことがある。

いや、あることに気づかないことさえあります。

 

 

私にとっては、

「一日ぐらい過ぎても、大丈夫に決まっている」という感覚。

 

 「もったいない」という気持ちも手伝って、

冷蔵庫に残しておきます。 

 

「賞味期限が切れてるって?大丈夫、大丈夫!!

大丈夫でなければ、とっくに私は死んでいます」

というのが、私の長年の主張です。

 

 

しかし、彼女にとっては、

「期限が過ぎたもの=食べてはいけないもの」。 

その白黒は、絶対です。

 

だからといって、彼女がそれを自分で捨てることもしません。

 

相当長く冷蔵庫に残っていたものを

「これ、どうするの?」と彼女に聞くにも、

彼女なりの「質問を受けるタイミング」の見計らいが必要です。

 

 そうこうしているうちに、私が忘れてしまう…。

そんなことが、我が家では日常茶飯事です。

 

これは、あらゆることに通じます。 

仕事の「締切」もそう。 「もうダメだ」と諦める前に、

「少しだけ、相談してみようか」

という発想が、彼女にはありません。

 

「ダメ」と「大丈夫」の境界線が、どこにあるのか。

その見極めが、彼女にとっては、とてつもなく難しいのです。

 

私たち定型発達の人たちが、

経験と感覚で判断している「大丈夫」の範囲。 

 

それは、彼女たちから見れば、あまりに曖昧で、流動的で、

まるで手で水をすくおうとするくらい、

掴みどころのない、不安なもの、

ブラックボックスです。

 

 

その不安と戦いつつ、親はどんぶり勘定。

娘たちは、さぞ生きにくいだろうなとおもいます。

 

 そのことを忘れずに、今日もまた、

我々はお互いと向き合います。

 

「まあ、大丈夫!」この言葉ひとつとっても、

彼女たちには不可解でしょう。

 

「まあ、、って何?」ですよねええ。

 

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