やっぱり映画が好き -7ページ目

やっぱり映画が好き

正統派ではない映画論。
しかし邪道ではなく異端でもない。

【ネタバレ】あります。すみません、気を付けてください。

 

刑務所から仮釈放されたアダム(ウルリク・トムセン)は田舎町の教会に寄宿する。悪態をついても怒らない牧師イヴァン(マッツ・ミケルセン)のもとで更生する日々を過ごさなければ晴れて釈放の身にならない。他にも前科者が身を寄せる聖域で牧師に何か目標を立てよと問われたアダムは、庭にあるリンゴの木を収穫してアップルケーキを作ると安易に返答する。翌日から不穏な現象が起きる教会の生活に戸惑うアダム、イヴァンは全て悪魔の仕業だと忠言する。それにしても災いが続く日々でアダムは、イヴァンの過去に疑念が募っていく…

 

時折破綻気味の物語進行だが、テーマをしっかり据えているので見事なラストを迎える。森羅万象は運命によって定められているのか、それとも偶然が交錯する事象なのか、宗教に限らず言葉を紡ぐことで人は救われたり絶望に陥る。心が平穏であるひとときは千差万別であって、"こうだ" と決めつけたり偏見で押し通すのは愚劣であろう。

 

悪魔の所業か、神による人への試練なのか、数多の災いを経てアダムは "気付き" を受け止める。そしてイヴァンも心を改める。そこに今作のカタルシスが表出する。脚本が巧い。

 

今作をマッツ・ミケルセン生誕60周年祭の上映作品として鑑賞する。洋画が低迷する映画興行において集客が見込める海外映画スターとして賞賛する。昨今各地における映画館の窮状を報道で知ると胸が痛む。これも悪魔の所業か、神による試練か、きっと私たちは "気付き" を得るよ。マッツ、そうでしょ。

 

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ロンドン警視庁・爆発物処理班が活躍するドラマ。ある公営団地に爆発物があると通報を受け爆発物処理班のラナとナットが現場に駆けつける。団地の一室で監禁された母子を発見して保護する。部屋中を捜索するとバスルームに爆弾を見つける…全6話。U-NEXTにて配信中。

 

出だしから緊張感走る連続爆破事件、各話異なる仕掛けの爆発物に対処する爆発物処理班は、事件の背景に何があるのか追及する。次々と表出する疑念や疑惑によって捜査が滞ってしまう。そして爆発による被害者への悼みはメンタルを疲弊させる。重責は現場で活躍する人びとを苛んでしまう。そして視聴者は真犯人は誰なのか?謎解き要素を楽しめる。

 

惜しむらくは最終話、事件の真相が説明的台詞に終始するので、こちらは詳細がうまく呑み込めない。そこが物語の要なのに強引すぎやしないか。それでもサスペンスとしての見所が数多ある。さすが「ライン・オブ・デューティ」の製作者がいっちょかんでるだけあって珠玉のクオリティ。でもね、第2回以降の "前回のおさらい" & "キャスト・スタッフのテロップ" が「ライン・オブ・デューティ」まんまなんだよね。スピンオフってな感じじゃないし、そこもっと違う演出なかったのかなぁ…と愚痴っぽくなるのもファンだからこそ…次シーズンも観たい!

 

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殺人罪で収監されたジェニー(ハンナー・ヘルツシュプリング)とピアノ教師のクリューガー(モニカ・ブライプトロイ)が刑務所で出会う事から物語は始まる。それぞれの過去が次第にわかってくると共にふたりの丁丁発止のピアノ特訓から何を求めているのかが主題となっていく。2006年製作のドイツ映画。あいにく配信はどこも無い。レンタルDVDにて鑑賞。

 

作中、時間軸をずらしていくことで回想シーンを煩わしくさせない効果が生まれている。回想シーンは概ね対象となる人物の過去を説明する、現在に至るその人の心情を補充する手段となる。だがこれを安易に使うのは作品の質に影響をきたしてしまう。説明的に陥ると、映像表現の機会が乏しくなるのだ。

 

脱線するが、黒澤明監督「羅生門」はその回想シーン自体を主軸にもっていく。登場する三人の回想が同じじゃない。三様の過去が語られる。真実は決してひとつじゃない、と提起する。そして「4分間のピアニスト」は冒頭からジェニーとクリューガーが出会うまでの時間軸をずらしてみせる。そこから次第にふたりの過去も描かれていく。その過去は決して公言したくない性に関するもの。社会的抑圧やハラスメントという暴力が介在し、秘匿したいプライバシーとなる。各々の胸の内というストレスが時間という蓄積を経ている状況へと表現している。

 

ジェニーとクリューガー、奇妙なつながりを持った双方鬼気迫る人物像がクライマックスの大舞台までハラハラさせる。ラストのジェニーの表情はクリューガーに対する感謝か、嘲笑か、既成概念を自身の過去と重ね合わせ抜け出そうとする。その破壊にも通じる荒々しさは伝統やジェンダーという強固な壁に対抗する手段となる。ジェニーの粛々と行使しない姿勢が人間臭くて感嘆する。

 

クリス・クラウス監督の最新作は「15 Years」2023年製作だが、現在日本劇場&配信未公開。でも諦めないよ。ノラ・フィングシャイト監督「システム・クラッシャー」は2019年製作だったけど昨年日本劇場公開、なんと5年越しだからね。配給会社のみなさん、是非とも日本公開してください。

 

追記。「羅生門」で有名になった脚本家、橋本忍のほぼ全編回想シーンの極み「切腹」は名作。ここで扱われる回想シーンの意図は主人公の過去の説明と共に現在に至る感情をサスペンスとして誘っている。早く先が知りたい、という観客の関心を見事に捉えるのは橋本忍の十八番であろう。今作の主演は先日国内外で訃報報道が駆け巡った仲代達矢翁。ここで哀悼の意を表します。

 

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