やっぱり映画が好き -5ページ目

やっぱり映画が好き

正統派ではない映画論。
しかし邪道ではなく異端でもない。

【ネタバレ】あります。すみません、気を付けてください。

 

インドで起きた集団レイプ事件。13歳の少女を三人の男が襲う非道にも関わらず、村の住民は事荒立てず内内で収めようとする。少女の両親はこの理不尽に憤り、村八分にされる覚悟で警察に告発する。支援団体や村の有力者などの言動が、一体誰を救うためなのか如実に表れてくる。個人の常識ほど身勝手なものはない。被害を受けた少女の尊厳は果たして守られるのか。見応えあるドキュメンタリー作品、映像から見えてくる各人の心の機微に胸熱くなる。Netflixにて配信中。

 

配信系のドキュメンタリー作品でありがちなのは、関係者のインタビュー映像でほぼ全編構成されている代物。好みによるだろうが、私は正直退屈になる。インタビューを受ける被写体の言葉や表情を窺ってしまう。話盛ったり、自分に都合よく歪曲してはいないか、作為なくても人は承認欲求が働いてしまい、その事件や出来事の真相から遠ざかっているのではないか訝しんでしまう。

 

今作はそうではなく、被写体の日常をとにかく追いかける。愛娘の性被害に正義をもたらそうと訴訟を起こす両親。どこまで被害者家族に寄り添っていいのか手探りで奔走する人権団体の支援者。被害者側か加害者側か、どちらに肩をもつのか煮えきらない村の有力者。彼らから垣間見える言葉の真偽や立ち振る舞いの違和感、見ている私たちがそれぞれの真相を手繰り寄せる。

 

本心はなかなか見えない。私たちも本心はそう易々と見せないのだから当然である。この事件を経て彼らが何を思い行動したのか。そこに達成感や過ち、悔恨や希望を背景に人を映し出していくのがドキュメンタリーの本質である。

 

デヴ・パテル(上写真)が製作総指揮に名を連ねている。「スラムドッグ$ミリオネア」の主演で有名になった彼の監督最新作「The Peasant」がインドでの撮影を無事終えた。昔々ひとりの羊飼いが村を荒廃させた傭兵たちに復讐するアクションスリラーとの事、もちろん彼が主演。前作「モンキーマン」しかり、虐げられる弱者の抗いは彼の信条なのだろう。

 

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1950年代の日本、売春防止法施行前の吉原で働く女性たちの葛藤を描く。「雨月物語」「山椒大夫」の溝口健二監督の遺作となった作品。U-NEXTにて配信中。

 

舞台となる吉原 "夢の里" の美術など見どころ満載で、各人の思いは違えど、それぞれ分かる。足を洗って普通の家庭生活を望む女、病気の夫と幼児を養う女、上京してきた息子との同居を望む年増女、客を騙して大金をせしめる女、派手な格好で実家から抜け出した女、これらキャラクターの巧さが群像劇として完成度を高めている。時勢は移り行くけど人はそんなに変わらない。その芯の強さと愚かさがラスト場面で活きてくる。

 

このラストは、北野武監督「その男、凶暴につき」にも通じる。はなはだ "その世界" に馴染まない人が "その世界" に足を踏み入れてしまう。これは個人の意思は少なからずあるだろうが、大人の都合やしきたりによって背中を押されてしまう。それは自己責任か、社会の背徳か、誰にも責められないやるせなさに胸締めつけられる。しかしそこに当人の生きる渇望が垣間見えてしまうのが、先述した "芯の強さと愚かさ" となる。

 

今作であからさまに描かれるのは、職業差別やジェンダー意識の未発達。現代はどれだけ進歩しただろうか。弱者の声をあげる機会は幾分増えてきたがそれほど進歩してない。違う意味で "芯の強さと愚かさ" が横行している。

 

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アレックスとテス、ふたりの小学生の子供がいる中年夫婦は明確な理由もないまま別居生活に踏み切る。ニューヨークのコメディクラブにふと足を運んだアレックスは、スタンダップコメディの世界に生きがいを感じるようになる。そしてこれからの人生を見つめ直す彼がとった行動は…。ブラッドリー・クーパー監督最新作、彼はアレックスの友人ボールズ役を兼ねている。

 

倦怠期の夫婦が織りなす丁々発止は止め処ない言葉と感情の起伏で渦巻いていく。インディーズ映画を代表するカサヴェテス監督作品を思わせる撮影や台詞にブラッドリー・クーパー監督の映画愛が滲み出ている。

 

私が常々考察している傑作の要件、

・"苦悩" と "怒り"

・ボタンの掛け違い

・持ち上げてから突き落とす

が、今作に詰め込まれている。何気ない伏線(子供たちの楽器練習やテスの若かりし写真)で、もう一回捻ってくる展開がイイ。おまけに脇役ブラッドリー・クーパーのこけっぷりも必見、最近の彼のキャリアに少々不満だったけど今作の完成度の高さに感嘆する。

 

原題「is this thing on?」

マイクテスト時に「これ聞こえてる?」と確認する意味合い。

 

アレックスの本心を本当に伝えたい相手は誰なのか。それはパートナーのテスも同様。そんな中年の親たちの迷いや葛藤を冷静に見つめているのが子どもたちであり、人生の後輩が送るアンサーソングがラストシーンへとつながる。巧い。

 

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