「システム・クラッシャー」 | やっぱり映画が好き

やっぱり映画が好き

正統派ではない映画論。
しかし邪道ではなく異端でもない。

【ネタバレ】あります。すみません、気を付けてください。

 

Netflix映画「消えない罪」のノラ・フィングシャイト監督の長編劇映画デビュー作がようやく日本公開される。保護施設や里親にたらい回しされる9歳の少女ベニーは奇行が絶えない。このままだと精神病院送りになってしまう。社会福祉課のバファネは新たな通学付添人のミヒャに望みを託す。なんとかベニーが社会から疎外されないように手を尽すミヒャなのだが、一向に改善の道へと辿り着けない…

 

子供は可愛い。その反面優しくない言動を振る舞うことがある。

 

ベニーは怒りのコントロールができない。親からの愛情が足りない環境によって、彼女は言葉でなく暴力という手段を優先させてしまう悲運へと踏み入れる。ベニー本人に罪は無い。ただ受け入れてくれる居場所が少なくなってしまう社会の不合理が待ち構えている。バファネたちのベニーに対する愛情や倫理観を礎にした救済は、ベニーの喜びや感謝という反応ではなく、彼女の独占欲やわがままによって翻弄される。ここで忍耐できず心が折れそうになる大人たちは無責任なのか。そうではない。"誰が悪い" という責任追及は不毛、この苦悩に胸締め付けられる。

 

欲言うならば、ラスト場面はそんな大人の悩みを蹴散らすベニーの奇行をポップで締めくくるのではなく、明確な気付きは無いにしろ一縷の光明を表現する帰着を望んでしまう。劇的な変化は誰しも滅多に起きない。しかしふとした所作や光景がのちの人生に関わってくる。リアルタイムでは分からない現実の積み重ねが私たちの生きている道程であり、その断片を映し出すのがドラマの醍醐味であろう。

 

ノラ・フィングシャイト監督は新作「The Outrun」が完成して今年のサンダンス映画祭で公開される。(本国ドイツでは2024年11月劇場公開予定)スコットランド出身の作家エイミー・リプトロットの回想録が原作で主演シアーシャ・ローナンとくりゃ日本公開もあるでしょ。気長に待つよ。健忘症だから怒りません。怒りのコントロール以前の問題を抱えてます。

 

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