「わたしの叔父さん」 | やっぱり映画が好き

やっぱり映画が好き

正統派ではない映画論。
しかし邪道ではなく異端でもない。

【ネタバレ】あります。すみません、気を付けてください。

 

両親がいない女性クリスは叔父とふたりで酪農を営んでいる。足が不自由な叔父をサポートするクリスは、飼い牛の難産という出来事から自身の過去の夢であった獣医の道に興味を抱いていく。2019年のデンマーク映画。AmazonPrime U-NEXTにて配信中。

 

いつもと変わらぬ日常はルーティン生活で過ぎていく。クリスと叔父の会話がほとんど無い演出は、そこにリアリティを求める以上にクリスと叔父の信頼が垣間みえてくる映像表現に他ならない。その日常に変化が訪れる。物語はそこから発展して、ふたりの気持ちは通じあうが、すれ違う。切なく微笑ましい関係が近親者同士の愛情にたどり着く。

 

ルーティンを乱す言動が露呈する時、ある時は苛立ち、ある時は看過する。なぜかしら日常を壊したくない不安や妥協が入り混じっている。相手を慮る過保護もまた、相手にとってはお節介でしか受け取らないだろうし、逆にそこから感じ取れる無下な愛情表現に安堵してしまう。この微妙な駆け引きや押し問答の交錯がクリスと叔父の生活を継続させている。

 

まだ若いクリスは変わらぬ日常から抜け出したくなる。それは将来の道がこのままだと閉ざされていくのではないか、という焦燥からであり、決して叔父に対する不満や不義理ではない。各人の人生においてベストな選択肢を判断するのは難しい。"たられば" でジャッジしても愚痴にしかならず、周囲の意見もノイズでしかない。とどのつまり、最終アンサーは自身であり、そこに世間体は介入すべきではない。ラストに些細なルーティンの乱れが生じる。戸惑う叔父を見つめるクリスの密かな表情が印象深い。たわいない日常の変化を楽しむ。幸せはそんなところにも潜んでいるかもしれない。

 

ほんの少し世間とズレたところでも、うらぶれた場所に佇んでいても、人びとの生活は嬉しくなる時間を享受する。決して金銭や格差で切り捨てられるものではない。"映える" という向上ばかり求めていると、"たわいなさ" の良さを見過ごしてしまうのではないか、ふたりの生活からそう感じる。家業に明け暮れる日々は理想の夢を諦めた殻ではない、家業にも日常に変化をもたらす小さな夢が育まれている。きらびやかとは縁遠いルーティンを侮るなかれ。

 

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