「ザ・ナイト・オブ/ナイト・オブ・キリング 失われた記憶」 | やっぱり映画が好き

やっぱり映画が好き

正統派ではない映画論。
しかし邪道ではなく異端でもない。

【ネタバレ】あります。すみません、気を付けてください。

 

タラレバこんな事にならなかったのに。ある一夜にして殺人事件の容疑者となってしまう青年に容赦なく襲いかかる現実が描かれる。真犯人は誰なのか、推理要素も加味したクライムサスペンス。U-NEXTにて配信中。

 

リズ・アーメッド演じる青年ナズが変貌していく姿に恐怖がつきまとう。彼が遭遇した事件を発端に周囲の人々が奔走する過程に人間の業が如実に浮かび上がってくる。信念・裏切り・憎悪・博愛、人々は皆戸惑いながらも道を誤らないよう懸命に生きようとする。"正義という宝刀" では裁かれない司法の場で真実を見いだせるのか。私たちは生活の中でいくつかの不正義を黙認する。それに抗えば生活基盤が揺らいでしまうことを望まない "心の弱さ" が起因となる。打算的な行動に "偏見" という私たちの感情が問われてくる。

 

ジョン・タトゥーロ演じる弁護士ジョン・ストーンが人間臭いキャラで登場する。彼が克服しようと試みる "皮膚炎" 治療は見ているこちらもむず痒くなるし、"猫アレルギー" なのに猫と同居する無骨な優しさに応援したくなる。司法取引を持ちかけて "はみ出し者" と現金商売する三流弁護士生活の中に、良心を守ろうと彼は奮闘する。

 

不正義とは何か。ルールの正しさは時に苦しい。規律に囚われると物事が上手く運ばないという言い訳に負けて自身を誤魔化してしまう。都合良い選択に人は流れていく。出来るなら楽な立場でやり過ごす。しかし当人が見ない見ようとしないところで弱き立場の人々が苦しんでいる。にも関わらず保身から "差別していない" と豪語して、その立場に気付かない悪気はなかった、と情状酌量を得ようとする。それでいいのか、相手を慮ることをせずに帰結することは卑怯である。まかり通れば、誰にも正論が享受されない。泣き寝入りが通例となり被る側は我慢を強いられる。

 

このドラマでは、その不正義の間で "誤魔化す者" と "弱き者" が揺れ動く。誤魔化す者は自省して正義を取り戻そうとする。しかし弱き者は不公平な社会を悲観して不正義に甘んじてしまう。この悲しき現実は、望まない差別を連鎖する。終盤で "苦しさの向こうに自由がある" と訴えてくる。この重厚な主題に弁護士ジョン・ストーンの "皮膚炎" そして "猫アレルギー" は暗喩とユーモアを加味している。

 

リズ・アーメッドに注目して彼の出演作を連続して鑑賞する。え?今更ですよ、インタビュー記事で彼が昨年コロナ禍で結婚したのも、彼が抹茶ラテ好きだと知ったのは。純喫茶愛好家の私は抹茶ラテを飲んだことない。飲みたいとも思わない。めんどくさいなぁ、融通のきかない頑固爺の出来上がり。

 

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