「レディ・プレイヤー1」 | やっぱり映画が好き

やっぱり映画が好き

正統派ではない映画論。
しかし邪道ではなく異端でもない。

【ネタバレ】あります。すみません、気を付けてください。

 

前略スピルバーグ監督様、この場でのご無礼をご容赦ください。あなたは私を映画好きにさせてくれた偉大なる映画監督の一人でもありますし、私の人格形成にも深く関わりがあると言っても過言ではありません。小学生時代の私は映画館へ行くといえば一大イベントでした。もっぱらテレビの映画番組を嬉々として観ていましたし、最新の映画情報はネットがまだ存在していなかったので本屋で映画関連雑誌の立ち読み、土曜早朝にテレビで放送されていた「映画の窓」における予告編映像、これらをダウンロードではなく脳内に刻み込む、そして幾度となく反復する。これが私の映画愛を育むものでした。その中でとびきり怖いサメ映画に出会い、あの予告編映像と映画ポスターは生涯忘れることはできません。また水野晴郎がホストを務めた映画番組で乗用車を運転する主人公が追い抜いたトレーラーから執拗に追いかけられる恐怖に怯えました。そして矢追さんの特集番組に代表されるUFOブームの頃、未確認飛行物体と遭遇する物語において異星人とのコンタクト手段の手話を見せる博士役でトリュフォーの存在を知りました。いずれもあなたの作品です。とてもとても映画の勉強になりました。しかしあなたは娯楽活劇だけでなく、人間ドラマをつくるようになり批評家から "賞狙いだ" などと揶揄されてしまい私もそれになびくようにあなたの作品から距離を置くようになってしまいました。振り返ると恥ずかしい限りです、世間の動向を気にしてばかりいる八方美人を装っていたことに猛省するばかりです。以降様々な作品を発表しては気になってしまう作品のみ映画館へと足を運びました。その完成度はやや物足りなさを感じますが、バックミラーに映る恐竜が迫ってくる姿やノルマンディー上陸作戦における兵士の耳をつん裂く銃声に驚愕、さらには異星人の来襲から逃げ切ろうとする乗用車の長回しの撮影、すごい、これは観たことがない、と何かひとつ新しい体感をさせてくれるクリエイターの技に惚れました。

 

ここから本題です。偉大なるクリエイターがVR仮想現実の世界を描くというまさにドストライクな企画にこれは観ないわけにはいかぬと劇場へ向かいました。正直傑作「ミュンヘン」以降嗚呼こんな感じかと落胆してしまう作品ばかり続きました。とはいえ貴殿の作品を全て観たわけではありませんので中には未見の傑作もあることでしょう。しかしなんなんですかこれは。あまりに酷い出来栄えではないですか。よりにもよって肝心のテーマを台詞にして創始者ハリデーが言ってしまうという暴挙、これは映像作家スピルバーグ監督作品ではない、こんな拙い演出をするわけがない、名前を貸しているだけなんだ、誰かゴースト演出家がいるんだと邪推するほどです。しかし、第2の鍵を探すくだり、登場人物とともに私達も確かに "あのホテル" に入ったのです。あのゾクゾク感、今までなかった新しい体感、まさしくあの瞬間スピルバーグを感じたのです。そうか、これはキューブリック側からこの許可を頂くのに彼の名前が必要だったのだ、あそこだけスピルバーグが演出しただけなんだ、邪推でしょうか、しかしそう感じました。でないと合点がいかない場面があるのです。これはゲーム・映画・アニメの世界、しかも70〜80年代を基盤とした世界観が描かれています。私は様々な場面で様々な映画の引用をうかがうことができました。それをここで列挙するつもりはありません、それはジコマンの域をでません、人それぞれわかる範囲でいいのです、そうではなく、終盤の現実世界におけるカーチェイス、BGMは確かに「バック・トゥ・ザ・フューチャー」(この作品の音楽もアラン・シルヴェストリご本人)を意識してるのになんで演出セルフパロディしなかったの、ここはショウ少年が代わって車の運転、下駄履かせてアクセル踏まなあかんでしょ!「…魔宮の伝説」じゃないですか!押さえなあかんツボ見事に外してる。合点がいきませんでした。

 

そもそも脇役のキャラ描写があまりに乏しいのです。アジア系少年二人はカーチェイスするバンの荷台に揺られているだけじゃないですか。ヒロインも顔の痣があるだけじゃ物足りません。基本可愛いのでは面白くないんです。仮想現実とのギャップがなくては…ここは巨漢ブスでまいりましょう。外見では測ることができない魅力をみせることがこの作品の主題にも繋がっていくのではないでしょうか。大企業IOI社の研究者の男女も大人と子供の懸け橋役としてもっと活躍すべきですし、IOI社責任者のソレントの陰謀(主人公の養母を爆殺)もそんなに主人公が心痛める結果になっていません。唯一の残酷場面がそれほど活かされていないのは、それまでの養母のエピソードが少なくて主人公との人間関係が希薄でしたし、その決行のタイミングも早すぎた事が起因となっていると考えます。

 

もしやこれはキッズムービーなんですね、イケてる男女がヒーローヒロインとして確立する世界、巨大企業(大人)と世界中のゲーマー(子供)達の対立、そして虚構と現実の折り合いを説法する。万人が理解できるようにテーマもセリフにして語ってしまおう、虚構にすがることは危ないよ、現実は大切だよ見直そうね。働き方改革法案にも似た上から目線を感じるあのラストに少し不快感を抱いてしまうのは、私が純粋な少年の心を宿していないひねくれ者だからなんでしょうか。素直になりましょう、大人の言う事を聞きましょう、わかりました、って嘘です。承服できません、偏屈爺と罵倒されてもこの最新作は稚拙なSF作品としか思えないんです。しかし名匠スピルバーグ様、もっと作品を作ってください、新しい体感を求めるあなたの足跡に感服します。敬具。

 

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