「フライト」 | やっぱり映画が好き

やっぱり映画が好き

正統派ではない映画論。
しかし邪道ではなく異端でもない。

【ネタバレ】あります。すみません、気を付けてください。

フライト

ロバートゼメキス監督、デンゼルワシントン主演。

アトランタ行きの旅客機が原因不明のトラブルで急降下。
とっさの判断でマニュアルにはない背面飛行による
最低限の犠牲者にとどめた奇跡の緊急着陸で
英雄となったパイロットが主人公。

しかしその後、血中検査でアルコールと薬物が検出されて
刑事告訴に発展する犯罪者となる。
家族にも仲間にも見放された彼を受け入れる社会はあるのか?

と書けば、サスペンス調の展開を期待するが、
この作品は、アル中の主人公を主観にした人間ドラマに徹する。
しかし、この出来事は合法か?非合法か?
情念ではなく立法の観点でしか物語らないところは残念。
それならば、弁護士の目線で展開するべきではなかろうか?

英雄から犯罪者へと陥れられる主人公には、道徳の観念はすでに失い、
周りからの同情を求める受け身の弱い存在になる。
弱きものを助ける者こそ英雄であるが、
ここに登場する者は皆、保守的な行動をとる。

終盤、主人公は保守する己を恥じて、再度マニュアルにはない行動にでる。
それは英雄行動ではなく、自己への審判であり、
助けようと手を差しのべてくれた仲間への謝辞となる。

果たして彼は英雄となり得たのか?
それは社会ではなく、時間が決めるものなのだろう。
断絶していた家族の修復は、英雄という看板ではなく、
受刑という償いでもなく、己を変える決断から始まる。

英雄はいずれ忘れられる存在だろうが、
愚直な思いは周りの人々へ静かに伝わる。

そういうラストを用意するならば、やはり
モラルや法律の観点に対抗する構図が欲しかった。

個人的にはジョングッドマン演じるドラッグの売人は
惜しい存在だと感じる。もう少し登場の場がほしかった。

セミナーに行けば、人生やり直せる…そんな簡単なものじゃない、
理屈で行動に移すのは難しく、感情が大きな要因となる。
安易に片付けられているシステムに唾を吐きかけるのは、
主人公の立場では身が重すぎるので、
アンチの立場からの活躍に期待するのは私だけではないはず…

予告編とは違う静かな印象の作品です。
それだけにもう少し構成をまとめたら、傑作となったであろう。


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