拙著「タワーマンションの真実」(建築画報社)でも述べているのですが、将来の管理が不透明な現状にもかかわらず、

 

1.行政:インフラの整備、耐震性の向上、木蜜地域の解消などを行政側は事業者に対してわずかな補助金を出すことで、実現でき、将来の配管などの更新も住民の費用で行われ、多額の固定資産税や住民税が期待できる。

 

2.購入者:比較的利便性の高い地区に建設され、賃貸にすることも可能な優良な資産となる可能性が高く、特に都心部では供給量も限られ、現在は資産価値も高くなり、戸数が多いことで、管理費も比較的安価に抑えられる。また、共用部に魅力的な施設が設けられていることが多い。

 

3.事業者:一度に多くの戸数を販売でき、手離れがよく、利益が確定しやすいことや、駅近かで、利便性をアピールして人気物件となることが多く、販売戦略が立てやすい。戸数が多いことももあり、プランのバリエーションも多くでき、販売エリアを広くでき、物件によっては高額物件を世界の富裕層に販売することも可能で、高い利益率を確保することができる。

 

4.施工者:最近では、ほとんどのタワーマンションがPC(プレキャストコンクリート)化され、1層を3日から5日で施工するという超短工期が可能になっていて、オフィスビルなどと比べて建設費が安価で、同じパターンで躯体が作り上がっているということで、店舗などの複合施設が多い超高層ビルに比べて、手間がかからない。

 

 他にも塔上の超高層のビル用ということで、眺望が良く、共用部が比較的高級に仕上げられているなどもあり、また、購入欲をかきたてる魅力的に演出されたモデルルームなどもあります。

 

 このような理由で、将来の維持管理の不透明さにも関わらず、現在の「縦長屋」は、今も次々と建設されています。特に、土地の価格が高い都心部での高層マンション化はしばらくは続いていくでしょう。

 

《夕暮れのタワーマンション建設現場》