今年の大相撲九州場所は横綱不在のなか、小結の貴景勝が132敗で優勝した。千秋楽の前日、2敗で追う高安に敗れ星を並べて迎える千秋楽前夜の気持ちをインタビューで語っている。

  高安に敗れたとは言え、正直言って相撲そのものでは勝っていたと思う。それゆえ千秋楽に向けての緊張感は複雑なものがあったに違いない。貴景勝は「自分とどう向き合っていくか、弱い自分が出そうに何回もなりましたが、あきらめずにやってきて良かった」と語っている。

  神様は貴景勝にひとつの試練をあたえたのであろうか。人間には弱いところ、強いところ、必ず両方がある。そしてその葛藤が必ずある。その葛藤を克服するのは自分自身の意思の強さだろうか。

  貴景勝はその名からわかるとおり、九州場所開幕直前に無くなった貴乃花部屋の力士である。部屋が消滅し千賀ノ浦部屋に転籍し環境の変化があったにもかかわらず「新しい部屋でも白星黒星を考えず、内容を求めて一生懸命がんばった」と語っている。そのまっすぐな思いが意思の強さを生み出したのかもしれない。

  九州場所の貴景勝から良い教訓を授かったように思う。