山神信仰というのは、いくつか種類がありますので、個別に紹介したいと思います。

1)水源となる山への信仰
 日本は、お米の国なので、特に農村部では、山は大事な水源の1つですから、山に向かって手を合わすことが多くなると思います。
 この山の神への信仰は、春になると「山の神」が馬(地域によっては他の動物もあります、イノシシ等)に乗って、里に降りて「田の神」となり、秋の収穫を終えると、また山に帰るというサイクルになります。

この例として、水源にある神社を紹介します。

 奈良時代から、日本でも律令制が始まって、律令国家になります。そして、天皇を中心とした政治が行われます。その中で、国を安定させるために、神祇祭祀を積極的に行っていくことになります。国家祭祀を毎月のように行っていました。

 特に重視されたのは、春と秋に行われるお祭りです。
 春は、「お米がたくさん収穫できますように!」と祈念する祈年祭、
 秋は「お米がたくさん収穫出来ました、ありがとうございます」と感謝を捧げる新嘗祭(収穫祭)です。その他にも、疫病を抑える祭、台風などの悪風を防ぐ祭が行われました。

<奈良時代の国家祭祀>

仲春 2月 祈年の祭

季春 3月 鎮花の祭(大神神社、狭井神社)

孟夏 4月 神衣の祭(伊勢神宮)
       大忌の祭(廣瀬神社)
       三枝の祭(率川神社)
       風神の祭(龍田神社)

季夏 6月 月次の祭
       鎮火の祭
       道饗の祭
       大祓

孟秋 7月 大忌の祭(4月と同様)
       風神の祭(4月と同様)

季秋 9月 神衣の祭(4月と同様)
       神嘗の祭(伊勢神宮)

仲冬11月 相嘗の祭
       鎮魂の祭
       大嘗の祭 (新嘗祭)

季冬12月 月次の祭(6月と同様)
       鎮火の祭(6月と同様)
       道饗の祭(6月と同様)
       大祓  (6月と同様)


 上記の2月に行なわれる「祈年の祭(としごいのまつり)」は、稲の豊穣を祈願する為のお祭りです。
 平城京の神祇官に、全国各地の神社の祝(はふり:現在の神主さん)が集まり、各神社の祭神に、朝廷から捧げ物の「幣帛(へいはく)」を配ります。そして祝は、神社に戻り、その幣帛を捧げて、祈年の祭を行いました。

 この時に、呼ばれていた神社の中の1つに、水分社(ミクマリシャ)があります。

 平城京があった大和国には、水分四社と呼ばれる、大和国の東西南北に位置する四つの水分神社があります。

 東に宇太水分神社(うだのみくまりじんじゃ)
 西に葛木水分神社(かつらぎみくまりじんじゃ)
 南に吉野水分神社(よしのみくまりじんじゃ)
 北に都祁水分神社(つげみくまりじんじゃ)の各社です。

 それぞれの神社が見守る川を持ち、御祭神は各社それぞれで異なっていますが、共通して祀られているのが、「天水分神(アメノミクマリノカミ)」です。

 この「天水分神(アメノミクマリノカミ)」という神様は、流水の分配を司ります。山からの田まで、水をスムーズに通す役割です。
 ちょっと言いにくい「くまり」ですが、「配り」を意味します。水源地や分水点に祀られることが多いようです。


 古事記に出てくる、速秋津日子神(ハヤアキツヒコカミ)、速秋津比売神(ハヤアキツヒメカミ)は、河と海との境界の神様ですが、この子どもが、「天水分神」「国之水分神(クニノミクマリノカミ)」になります。

 この水分社に対して、「今年も、たくさんのお米が収穫出来ますように、田まで水を流してください」とお願いしてきました。また、雨乞いの祈願なども行われたようです。

 次回も、この山神信仰の対象となっている神社、祭神名を紹介していきます。