全力疾走! | メンズビギ マルイシティ横浜店 GM(ゼネラルマネージャー)の極私的ブログ

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GM(ゼネラルマネージャー)独自の視点で綴るブログ。

全力を出せ!
とか、
本気を出せ!
とか、
軽々しく言うもんじゃないな…
と私はつくづく思った。


その日の朝、
私は文字通り全力で走った…
というか、
走らざるをえなかった。
師走だからではない。
お店の開店時間まで
あと5分しかなかったからである。

私の辞書の中に
「全力で走る」という文字はない。
最後に全力で走ったのがいつだったか
記憶にないぐらいだ。
走るぐらいだったら、
予め時間に余裕を持つ方を選ぶ。

電車の駆け乗りもしない。
閉まりかけたドアに突進するなんて
私の中ではあり得ない。

たまに発車の合図があったにもかかわらず、
なかなかドアが閉まらない時がある。
普通の人ならラッキー!とばかりに
即座に乗り込むだろう。

私はしない…。

それは昔一度、
停車する電車に華麗に乗り込もうとしたら、
まるでタイミングを見計らったように
全身がドアに挟まれたことがあったのだ。
それはそれは見事な挟まり方だった。
もし“全国挟まり方選手権”でもあったら、
初出場でメダルが狙えたはずだ。

したたかに全身を打つ音が車内に響き渡り、
他の乗客の冷たい視線に晒された。
恥ずかしかった…。
悪意さえ感じた…。

それ以来私は発車のベルが鳴ったら、
Instagramのブーメランのように、
恐る恐る車内に足を踏み入れたり
引っ込めたりすることはしない。
誰よりも乗りたい気持ちをグッと堪え、
電車に対し
180度後ろを向くことにしている。
私なりの固い意思表明である…
(何に対し?)


さて、そんな私はいつもお店のある横浜に
開店1時間以上前に着くことにしている。

前にも書いたが、
私が利用する通勤電車はよく遅れる。
しかし大きな事故や自然災害がない限り、
1時間も遅れることはまずない…
と思っていたが、
その日は実際に起こったのである。


ほぼ時刻通りに発車したはずの電車は、
新宿駅での「ホーム上安全確認」の為、
徐々に遅れ始めた。

これくらいはよくあることだ。
この時点ではまだ鷹揚に構えていた。

その後池袋駅での「急病人救護」の為、
さらに遅れ始めた。

うーん、ダブルで来たか…
急病人救護なら仕方ない。
私はちょっと焦り始めたが、
まだ持ち時間はある。

すると今度は「車両点検」の為、
駅間で立ち往生し始めた。

えっ⁉️ マジで?
私は時計を何度も見始めた。

さらに追い討ちをかけるかのように
「線路内人立ち入り」の為、
遂に運転見合わせ状態に突入した。

これは完全にマズい!
その日の早番は私一人だ。

一つ一つの理由は大したことないが、
これだけ重なるのは初めてである。
これじゃ遅延理由の総合デパートだ。
このままさらに
「お客様同士のトラブル」や
「荷物挟まり」でもあったら、
“遅延理由スタンプラリー”は
あっという間にゴールだ。

いつもなら新宿まで30分弱で着くのが
すでに1時間10分も経過している。

私に残された時間はあと40分しかない。
横浜までは30分だ。
このままスムーズに動けば
なんとかなるかもしれないが、

「この先電車が詰まっていますので、
各駅到着が遅れることが予想されます」

というアナウンスを聞いて
私は愕然とした。

事実、新宿・渋谷間は
ママチャリで立ち漕ぎすれば、
私でさえ勝てそうな気がする速度だった。
私の焦りはMAXに達した。

電車の遅延や急病などで
開店に間に合わない場合は
丸井に連絡するのが義務づけられているが、
混雑した車内から電話するのは躊躇われた。

「もしもし、7FメンズビギのGMです…」

などと言えば、

「えっ⁉️ あのGMが乗ってるの?」

と車内が騒然とする可能性がある…
(何で?)


私は一縷の望みをかけ祈り続けた。
すると普段なら絶対にないことだが,
あろうことか急に便意を催した。
精神的に追い詰められている証拠だ。

気持ちを静めるために、
私はブライアン・イーノの
アンビエント音楽を聴くことにした。
すると不思議なことに便意は治まった…
(是非お試しあれ!)

恵比寿・大崎を過ぎた辺りから、
電車は快調に走り出したかにみえたが、
武蔵小杉で再びつまずいた。
先月から無理矢理JRに乗り入れてきた
相鉄線がネックになったのだ。
だから私があれほどムリだと言ったのに…
(誰に?)

時刻はもう10時10分だ。
10時半の開店まであと20分しかない。
もし私が騎手だったら、
迷わず新宿湘南ラインに
ムチを入れただろう。

事は一刻を争う。
その後新川崎駅を10時16分発車、
そして鶴見駅付近を10時20分頃通過すると、
私は居ても立っても居られず
早々とドア付近に移動した。

10時25分…
遂に電車は横浜駅のホームに滑り込んだ。
私はリュックのストラップを締め直し、
スターティングポーズをとって
ドアが開くやいなや猛ダッシュした、、

階段を駆け降り、改札口を目指す!

そこのけ、そこのけ、GMが通る!

改札を抜けると自由通路を
一路東口へ舵を切る!

やればできる!
全力を出せ!
本気を見せろ!
と自分を奮い立たせながら、
私は無我夢中で走った、、

髪を振り乱し、
鬼の形相で走る私の姿は
「西宮神社の福男」に被って見えたのか、
それとも単に気味が悪くて
関わりたくなかったのか、
周囲の者はすんなり道を空けてくれた。

東口地下街のポルタへ突入すると
身体が悲鳴を上げ始めた。
息が上がるのに足は上がらない。
さぞや無様な姿だったに違いない。
口からは心臓が飛び出しそうだ。

最後の難関である
スカイビルのエスカレーターを
駆け登った時には、
自分の身体が自分じゃないような気がした。

それでも最後の力を振り絞り、
もんどり打ちながら
従業員専用入り口へ滑り込んだ。

受付に立つガードマンに向かって、

「タイムは?」

と思わず聞きそうになったが、
声が出ない。
受付のデジタル時計を見ると、
10時29分を指していた。

間に合った…
小さな奇跡!
やればできるのだ!


しかし…
その代償は大きかった。

お店に辿り着いた私は、
産み落とされたばかりの子馬が
初めて立ち上がる時のように、
足がガクガク震え始めた。

心臓のバクバクは治まらず、
うまく酸素が脳に行き届かないのか
その日は一日仕事が手につかなかった。
売上げも散々だった。

翌日以降…
私は体調を崩した。
筋肉痛もなかなかとれなかった。


全力疾走…
私は二度と止めようと思った。
聖火ランナーのオファーが来た時以外は…。
(ナイナイ…)

……………………………………………………………………………

私は帰りの電車でその日の朝を振り返り、
全力疾走風の曲を立て続けに聴いた…。

                         「Pink Froyd」
             “Run Like Hell”

            「The Velvet Underground」
             “Run Run Run”

                         「New Order」
                “Run Wild”

                     「Renaissance」
           “Running Hard”
……………………………………………………………………………

あ、そうそう。最近の更新ペースだと
これが今年最後になるかもしれないので…

今年も1年間、
ありがとうございました!

あっ、そうだ。
その前に、
Merry Christmas!

それでは皆さん来年も
  LAUGH  PEACE

メンズビギ横浜店 GMより