9/15(金)のリニューアルオープンに合わせて取引形態も変わる為、防火・防災管理者の資格を取得しなければならなくなった。
丸々2日間の講習である。
講習なんて最近全く受けてない。
普段から落ち着きのない私は、果たして長時間同じ場所にじっと座っていることが出来るのか…甚だ自信がない。
さらに、立ち仕事に慣れている私は、座った途端に激しい睡魔に襲われること必至なのだ。
すでに昨年資格を取得している、はす向かいのショップ『ムッシュニコル』の店長にそれを話すと、
「大丈夫ですよ、2日目は実技ですから。
非常用梯子で降下したりするんですよ」
と言うではないか。
「えっ、マジ?
じゃあ、オレ資格取れねーじゃん!
今から腕立てやっても間に合わねーし」
それ以前に、そもそも私は講習や研修というものが大の苦手である。
講習の場合はまだいい。
一方的に話を聞いているだけだから、真剣に話さえ聞いていれば暫しの辛抱で済む。
しかし、研修はそうはいかない。
特に自分の意志で選んだ研修でなければ、
尚更である。
グループに分けられディスカッションしたり発表したり、普段絶対しないゲームのようなものをさせられたり…
スキルアップが目的だから仕方ないが、天の邪鬼な私にはどうもあの雰囲気が馴染めないのだ。あのやらされてる感と妙な熱気が…。
知らない人たちと閉ざされた空間の中で…
そんな特殊な環境の中でも必ずいるのが、
積極的で明るくハキハキと自分の意見を言う、上昇志向の高い人だ。
表面上のリーダータイプである。
そういう人を見る度に、私とは違う種類の人間のように思えてしまうのだ。
あれは確か、私がまだBIGIグループの社員だった20代中頃のこと…
当時のアパレル業界はまだまだ隆盛を極め、
我がBIGIグループの抱えるブランドとショップの数はピークにあった。
販売員はハウスマヌカン(Bigiの専務が名付け親)と呼ばれ、ちょっとしたスター扱いを受ける者さえいた。
そして、数の上でも圧倒していた女性販売員。その頃この業界では、男性販売員はマイノリティだったのである。
そんな中で行われた店長研修…
トントン拍子で店長になっていた私は、数十名の海千山千のレディースブランドの店長らに混じって参加させられたのである。
講師の人事教育担当も、メンズには手厳しいと噂される凄腕で慣らした元ベテラン女性販売員。
男性はたったの二人。
同期で仲の良かったHが一緒だったのが、唯一の救いだったが…
普通の会社の研修と違い、
その光景はちょっと異様だ。
想像してみてほしい。
地味な研修室の中には、私こそ一番!と思い込んでいる全国から選抜されたお洒落猛者達が集結しているのだ。
それはさながら、紅白歌合戦の舞台裏のようである。
中でも異彩を放っていたのは、
“歩くお花畑”PINK HOUSEの面々であった。
女性陣は自宅のリビングにでもいるかのように寛いで、そこかしこで華麗な会話をしているのに対し、肩身の狭い我々男二人は隅っこでボソボソ話。
同じ店長資格を持ってはいるが、そこには厳然としたヒエラルキーが存在するのだ。
もちろん我々二人は、その底辺にいる。
研修中も我々二人は指される回数が明らかに多く、何か発言する度に、
「だからメンズブランドの人達はねぇ…」
などと言われる始末。
結局、イジられ役なのだ。
“針の筵”という言葉を初めて実感したのである。
やっと訪れた昼休み。
私はHと連れ立って、華麗な女性陣達が絶対来なさそうな古い寿司屋に入り、どちらともなくビールを注文して一息ついた。
研修1日目終了後、もはや戦友となったHと中目黒のガード下で焼き鳥を食いながら飲んでいると彼は突然、
「オレ、もう無理。明日休む」
と言い出した。
私は一切止めることはせず、
「じゃあ、オレは明後日休む」
と言った。
3日間の研修だが、お互いあと1日我慢すればいいのだ。死ぬよりマシである。
翌日…
私は全ての感情を押し殺し、捨て身の覚悟で一人敵陣に乗り込んだ。
Hの欠席は、勘の鋭い鬼教官に明らかに不審に思われていたが、逆に私への風当たりは少なかった。
予想もしてなかったが、Hのおかげで何だか私の株が一気に上がったようなのだ。
あれ? 昨日よりラクだな…
結局、研修2日目は無事終了したのである。
これで私の研修は終わった。
研修最終日。
もちろん私は仮病で欠席し、前から行ってみたかった『サンリオ・ピューロランド』に遊びに行ったのである。
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急に思い出した。
当時のファッション販売員の鎮魂歌…
「やや」
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