そういえば、最近私はめっきり映画を観ることがなくなった。
映画館へはもちろん、テレビでもレンタルでも機会は激減。
落着きがなく堪え性のない私は、長時間束縛される映画というものが年々苦痛になってきたのだ。
たぶん…。
彼は私より一回り以上若い世代だが、
古いものから新しいものまで、
アート・カルチャー全般だけでなく
都市伝説や世事にも通じている。
お互いロック好きということもあり
妙にウマが合うのだ。
そんな彼がオススメするものには、経験上大抵ハズレがない。感覚的に信頼に値するのだ。きっと彼からみれば、私もそうなのかもしれない。
たぶん…。
さて、その酒席で映画の話になった。
「オレ、最近ほとんど映画観てないんだよね」と私が言うと、
「GM、もしまだ観てなければ、是非“100円の恋”観てみて下さい!」
「えっ、100年の恋?
ダメダメ、それラブロマンスでしょ?」
「いや、100年じゃなくて100円です!
女性が主役のボクシングものです」
「ミリオンダラーベイビーみたいなヤツ?」
「いや、全然違います」
「邦画なんですけど、ボクがここ10年ぐらい観た映画で一番です!」
彼は普段から相当数の映画を観ている。
しかも漫画家のせいか、ストーリーだけでなくカメラ割りや構図まで気になるという。
そんな彼が太鼓判を押すならと思い、
私は持っていた手帳にメモしといた。
ところで、私はよく酒席で相手がどんな話をしたか忘れることが多い。
決して酔っぱらって忘れるのではない。
相手の話を聞くよりも、
自分が話の主導権を握るのに必死だからだ。
そう、自分が主役になりたいだけである。
あ、言っとくけど接客の時はしませんよ!
たぶん…。
自分の話を相手に聞いてもらうには、まず相手の話をじっくり聞かなくてはならない…
ということぐらい、私も分かっている。
だから相手の話をメモするという行為は、
すなわち自分の話をする為の巧妙なポーズに過ぎないのである。
ハハハ…私がメモとり始めたら要注意だ。
さて、その翌日。
大抵は何をメモしたか、或いはメモした行為そのものを忘れてしまうのだが、なぜかその時だけは思い出して手帳を開いてみた。
すると、今まで気づかなかったが、
“100円の恋”と書いた謎のメモが、
なんと!
3ページもあったのだ❗
これはすなわち、私は今までに3回もススメられていたことになる…同一人物に。
てっきり初めて聞いた話だと思い込んでいた私も私だが、同じ相手に3回も同じ話をしたヤツもヤツである。
結局、同じ穴のムジナだったのだ。
次回も同じ会話をするのかと思うとゾッ!とするので、仕方なく“100円の恋”を観た。
ただし、予想を遥かに上回るいい映画であることと、安藤サクラはスゴい女優であることだけは確かである。
あ、あと音楽も。
バックで流れるブルースが映像と妙に合う。
そういえば、安藤サクラの父・奥田瑛二がブイブイ言わせてた(古い言い回し…)80年代。BIGIグループの超人気ブランド『ピンクハウス』のメンズ版『カールヘルム』を愛用していたのを思い出した…
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「クリープハイプ」
“百八円の恋”
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メンズビギ マルイシティ横浜店 GMより