以前ご紹介したことがある
常磐津『山姥(やまんば)』(邦楽)に
「菖蒲(あやめ)葺く間に盆の月」の歌詞があります。
『風韻余滴 京・炭屋の四季』堀部公允著より
端午の節供を祝ったと思えば、もうお盆の月を眺めている
なんと月日の経つのは早いものか………と
しみじみ思う山姥の気持ちに
私も近頃、いたく、いたく共感しています。
さらに山姥のつぶやきは続き、
………待宵(まつよい)過ぎて 菊の宴 早や祝月 里神楽………
ほんに忙(せわ)しき浮世も我も………
となり、ため息も聞こえてきそうです。
「菖蒲葺く」は
端午の節供の「軒菖蒲(のきしょうぶ)」のことで、
疫病や災いが家に入ってこないように
菖蒲の葉と蓬を束ねて軒先に飾ったものです。
中国から伝わった、古よりの風習で、『枕草紙』にも書かれてれています。
「菖蒲湯」に入って身を清めるのも同じ願いからと思います。
健やかに過ごしたものですね。
『五節供の楽しみ』冷泉為人著より