市川海老蔵さん | もてなし // hospitality // おもてなし

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                   プログラム表紙

 

 

7月のことになりますが、歌舞伎座で市川海老蔵さんの「駄右衛門花御所異聞(だえもんはなのごしょいぶん)」を拝見しました。
駄衛門は実在の盗賊で、「白波五人男」に登場する「日本駄右衛門(にっぽんだえもん)」ですね。
「白波―」では義賊でしたが、実は極悪人。
極悪人が主役になって、惡の華を咲かせるなんて、歌舞伎は面白い。

 

 

 

 

             巻頭画 (鳥居清光氏) プログラムより

 

 

 

海老蔵さんは6月に麻央さんが亡くなられて、直後の座頭としての舞台。
その上、出演予定の中村獅童さんが、病気療養というアクシデントがあって、獅童さんの分のお役も引き受け、昼の「加賀鳶(二役」」、「連獅子」、夜の「駄右衛門―(三役)」と、尋常ではありません。
しかも勸玄君の初舞台でもあるのです。だいじょうぶなのかしら、いくら元気な海老蔵さんでも限界があるのでは、と思うほどです。

 

 

 

               インタビュー  プログラムより

 

 

 

私は19日に拝見したのですが、いつもの歌舞伎座とは雰囲気が明らかに違っていました。舞台で演じている役者さんだけではなく、客席にも「この公演を成功させたい」、「勸玄君、がんばれ」「海老蔵さん、千秋楽まで無事に」と言う思いがあふれ、舞台との暖かい一体感がありました。

そして、二幕目の秋葉大権現の場に、小さな白狐(びゃっこ)の勸玄君が花道を駆けて登場すると、観客は勸玄君が我が孫や子や甥っ子のように思い、目頭が熱くなり、声援を送りました。

 

 

 

 

 

                 演劇界9月号(表紙)より

 

 


花道の七三で止まって、「勸玄、白狐、御前に」と言うセリフも大きな声でしっかりと言い、立派でした。
そのあと、秋葉大権現に扮した海老蔵さんの、懐に抱かれている様な「宙乗り」で、勸玄君は観客に手を振っていましたが、突然投げキッスをし、客席は沸き返りました。
「ママの麻央さんにキスをしていた」とは後で、海老蔵さんのブログで知りました。

 

 

 

 

 

                「宙乗り」(演劇界より)

 

 

 

今回の「駄衛門―」は、七代目団十郎が江戸期に演じた物の復活上演だそうです。江戸歌舞伎の趣向と今のアイディアやテクノロジーがいっぱい詰まっていて、楽しさと感動をいただきました。
海老蔵さん、勸玄君、中車さん、右團次さん、巳之助さん、児太郎さん、そしてそれぞれのお役をお勤めになった皆々様、ありがとうございます。

 

 

海老蔵さんが主演の公演は、平成26年の1月、新橋演舞場での「寿三升景清(ことほいでみますかげきよ)」以来でした。景清(かげきよ)は源平の合戦で、源氏方からは「悪七兵衛景清」と言われた、勇猛な平家の武将です。
初春狂言らしく大きな鏡餅や、舞台いっぱいの大きな海老の作り物が出て、華やいだ楽しい舞台でした。

 

 

 

プログラム(表紙)

 

 

             プログラムより

 

 

 

 

この公演を拝見しに行ったとき、演舞場近くの交差点で、麻央さんをお見かけしたことがあります。きちんと着物を着て、大きめの紙袋を持った麻央さんは、演舞場の楽屋口の方へ入っていらっしゃいました。美しい人でした。
身近な人が亡くなるのは、亡くなるということがわかる年頃になっても理解しがたい謎です。なぜあなたが、いなくなってしまったのかと思うばかりです。自分が今生を終えた時に、初めてわかることなのかもしれません

 


役者さんは、わが身を顧みずお芝居にかけるところがあって、怪我をしたり健康を損ねたりしがちですね。海老蔵さんが長くながーく活躍し続けることを願っています。そして勸玄君が「歌舞伎十八番」や、いろいろなお役にトライすることを楽しみにしたいと思います。

 

「ヨッ。 江戸市川の大目玉」  (大正生まれの母から聞いた言葉です)

 

また、七代目団十郎(五代目海老蔵)が踊った「神田祭」の鳶の頭の様な、粋ですっきりとした姿も見たいですね。

 

「来ても見よかし 江戸の花……」 「げにも上なき獅子王の 万歳千穐限りなく牡丹は家の物にして お江戸の恵みぞ」  (清元「神田祭」より)

 

 

長いブログになってしまいました。

 

 

 

 

                  平成12年 新之助時代の武田勝頼 (演劇界より)

 

 

 

同年 「源氏物語」より光源氏 (演劇界より)