山姥(やまんば) | もてなし // hospitality // おもてなし

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「やまんば」と言っても、ひと昔前、渋谷に出没していた女の子たちではありません。
「山姥」は「足柄山の金太郎」のお母さんのことです。
金太郎は近年テレビのコマーシャルでよく見かけますね。

 

 

 

                    浮世絵に描かれた山姥と金太郎

 

 

力自慢の少年は「源頼光(よりみつ:らいこう)」(平安中期)に仕官し、頼光の四天王の一人「坂田公時(さかたのきんとき)」となります。血気盛んな若者の象徴として、絵画や歌舞伎では赤い顔をしていて、「金時芋」の語源にもなっています。

 

 

 

 

             舞踊「山姥」(「日本舞踊全集」日本舞踊社刊より)

 

 

歌舞伎では、お母さんは八重桐(やえぎり)と言う名の遊女で、「坂田蔵人」と言う武士との間に生まれた子供が金太郎(怪童丸)となっています。


八重桐は金太郎(怪童丸)を武士にしようと、頼光の家来の山樵(やまがつ:木こり)に託し、自身は山姥となって「山また山を山巡りして、行方も知れず失せにけり」と姿を消します。

 

 

 

         明治期に描かれた歌舞伎の「山姥」(「日本舞踊全集」日本舞踊社刊より)

         山姥は九代目市川団十郎

 

姥と言っても現在の中年と言った年頃でしょうか。

 


古典の邦楽には長唄、常磐津、清元、地歌、荻江など、美しく味わい深い山姥の曲があり、
季節の移ろいや風物を愉しむ、大人の女性の心境が描かれています。

 

 

 

 

 

山に棲む山姥ですが、長唄「四季の山姥」には海の景色も歌われていて

 

 

「振りさけ見れば 袖ヶ浦 沖に白帆や千鳥立つ 蜆採るなる様さえも あれ遠浅に澪標(みおじるし)……
立てたる粗朶(しび)に付く海苔を 採りどりめぐる海士小舟 浮絵に見ゆる
安房上総」

 

 

 

 

 

 

今も袖ヶ浦には、海苔を採る風景があります。

 

 

また常磐津「山姥」では、

 

「梅の暦もいち早く 門に松立ちゃナンナ つい雛も出るかと思えば時鳥(ほととぎす) 菖蒲(あやめ)葺く間に盆の月 待つ宵過ぎて菊の宴 はや祝い月里神楽 ほんに ほんにせわしき浮世も我も……」

と季節の巡りを語り、

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

終には「暇申して帰る山の 峰も梢も白妙は 源氏の栄え尽きしなき……」
と、源氏に仕官した金太郎の行く末も思いつつ、


人生の様々な思いが昇華していく境地へ……。

 

私の好きな曲の一つです。

 

 

 

 

 

 

我が容貌も着々と山姥になりつつありますが、手強きは我が心。
雑念、煩悩、五障多く、山姥の境地にはまだ遠いようです。