杉さんの自然観察記録7 アオダイショウかシマヘビかで迷う | はし3の独り言

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 今度、杉さん(仮名)がくれたのは、学校近くの側溝に潜むヘビの写真でした。

 

 

 

 毒蛇だったらたいへん、と、ヘビの同定を頼まれました。

 

 私はすぐに、「アオダイショウ(Elaphe climacophoraですね~」、と、返答したものの、ヘビなんて久しぶりだし、そんなに詳しいわけではないので、「もしかして、シマヘビ?」、などと、答えてから迷うありさまでした。

 

 静岡県だと、身近に潜む主なヘビは主に4種類です。平地でよく見るのはアオダイショウとシマヘビ(Elaphe quadrivirgataで、ちょっと山の方に行くとヤマカガシ(Rhabdophis tigrinusニホンマムシ(Gloydius blomhoffiiにも出会うといった印象です。

 

 学名が示す通り、アオダイショウとシマヘビは同じナメラ属(Elaphe)に分類されるほど近縁な種でよく似ています。ヤマカガシはアオダイショウとシマヘビと同じナミヘビ科にはいますけど、属が違っていて見かけから受ける印象が違うので区別できます。ニホンマムシはクサリヘビ科(ハブやガラガラヘビの仲間)に属し、科のレベルで違っていて普通は見間違えるようなことはありません。

 

 毒を持っているのはヤマカガシとニホンマムシで、噛まれると死ぬ人も出るので危険です。でも、アオダイショウとシマヘビに毒はありません、

 

 杉さんの見つけたヘビはアオダイショウかシマヘビになので、とりあえずは放っておいても問題はありません。

 

 絶対に大丈夫か?、と、問われれば、そりゃ危害を加えようとしたら噛んでくるので、野生のネズミやカエルを食べているヘビの口の中はきっと汚いから絶対はないけれども、こちらから干渉しなければ大丈夫です。

 

 

 

 で、この個体がアオダイショウだと言い切りたいのですが、この写真の個体にも背中に縞模様があるのが悩ましい。縞(しま)模様があればシマヘビ、と、単純に言えないところが難しいですね。

 

 もう、パッと見から、アオダイショウでいいんじゃない?、と、放り出しそうになりましたが、人に聞かれて迷うなレベルでは情けないので、これを機会に身近なヘビくらいは種レベルで見分けられるように勉強しようと思いました。

 

 調べると、シマヘビには半身に2本ずつ、合わせて4本の縞があります。この個体の縞は半身に1本ずつ、計2本です。ということは、シマヘビではない、で、いいのかな?、と、思ったんですが、シマヘビの縞模様がはっきりと4本現れるのは成体だけで、幼体のうちははっきりしないという。それに、ヘビは体色の変異が幅広いので、アオダイショウなら青や緑っぽく、シマヘビなら黄色っぽいというのも決め手として弱いとか。

 

 模様と色で決めつけるのは、どうもだめらしい。

 

 ヘビに詳しい人のいうには、顔が違うよ、ということなので、写真を拡大してみます。

 

 

 

 アオダイショウならお目目はまん丸でかわいくて、シマヘビならやや楕円形をしていて、虹彩という瞳の周りにある部分が赤っぽく、やや怖い顔をしているということでした。鳥っぽいというか。

 

 そういえば、むかし、教室に迷い込んだ子供のアオダイショウを生徒が捕まえてきて、なぜか私のところに持ってきたことがあったっけ。

 

 

 これがそのとき撮影した写真です。模様がアオダイショウっぽくないですが、幼体のアオダイショウは、毒を持つニホンマムシに擬態して身を守るので、成体と模様が異なります。

 

 

 ご覧の通り、アオダイショウのお目目はまん丸。瞳もまん丸です。シマヘビだと目の上のうろこがやや出っ張っていて、目はまん丸ってわけじゃなくなります。

 

 少し話がそれますが、瞳が丸いのは昼行性の動物でよくみられる特徴です。人間も瞳が丸ですね。それは昼行性だからです。夜行性のニホンマムシの瞳は猫の目のように縦長になっています。

 

 

 

 ちなみにこれはヒロオヒルヤモリ。昼ヤモリというだけあって昼行性です。瞳が丸いとヤモリっぽくないですね。

 

 で、本題に戻るんですが、杉さんの写真は顔がはっきり写っていなくて見極めが難しかったので、まだ決め手が得られない。

 

 で、さらに調べを進めていくと、頭の形が違う、というありがたい情報に行き当たりました。

 

 蛇の道は蛇ですなあ。

 

 

 

 それによると、アオダイショウの頭部は角ばっていているのだそうです。

 

 杉さんのヘビを見て、これを角ばっているといっていいのか分からないけれど、ネット上で様々な写真を見る限り、アオダイショウはシマヘビよりは面長でした。

 

 この個体を上から見たところ、あごの部分が体の幅から横にはみ出しています。その分、面長に見受けられます。

 

 体長から考えてこの個体は大人だし、模様や体色、目と頭部の輪郭などの特徴から総合的に判断し、アオダイショウだと言っていいと思います。

 

 ヘビの同定に、こんなに手間取るとは思いませんでした。でも、杉さんのおかげで勉強できました。詳しくなったので、次からは、すぐに迷わず答えることができそうです。