高校生物学習教材 タンパク質の立体構造を分かりやすく | はし3の独り言

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 高校生物では、タンパク質を主成分とする酵素は、高熱を加えると変性して働きを失う(失活する)。」、と教わります。

 

 タンパク質の変性とは、生卵がゆで卵になるときとか、肉を焼くと味も見た目も全然違うものになるときなどに起きています。そして、成分は変わらないはずなのに、もう元に戻すことができないのです。

 

 つまり、変性すると化学的な性質が変わってしまうということなのですが、こうした現象を簡単に説明できないかしら、と、思って、たとえ話を作りました。

 

 

  まずタンパク質は生体を構成するアミノ酸からできていることを振り返りましょう。アミノ酸の配列はDNAに記録された遺伝情報をもとにタンパク質の種類ごとに厳密に定まっていて、一次構造と呼ばれます。

 

 

 多数のアミノ酸が一本のヒモみたいに長くつながったからと言って、「だからなんだ」、ということなのですが、これが特定の形を持った(機能を持った)物へと変わっていきます。

 

 

 ある配列で並んだアミノ酸たち(ポリペプチド鎖)は、個々のアミノ酸の性質にしたがい、水素結合やジスルフィド結合をつくり、立体的な構造を形作ります。これを二次構造と呼んでおり、代表的なものにαヘリックスβシートがあります。

 


 タンパク質が機能を持つ理由を理解するために、ここでαヘリックスを棒や角材βシートのことを板やパイプに例えると、分かったような気になれます。

 

 二次構造とは、機能を持ったものを作り出すための素材にあたるのだと。

 

 

 αヘリックスやβシートを組み立ててできたものは三次構造と呼ばれます。これを机とかイスとか、身の回りにある製品に例えましょう。私たち人類は、あまたの道具を生み出してきましたが、言い換えれば身の周りにあるもので、決まった形のものを作ってきたとも言えます。

 

 ものは形が整って初めて使い物になるわけです。

 

 この点はタンパク質も同様だと解釈すると楽なのではないかと思いますし、実際のタンパク質も三次構造をとって初めて機能するものが多いそうです。

 

 

 高校生物の教科書ではさらに、四次構造まで紹介されています。タンパク質はユニットと呼ばれる構造が組み合わされて複雑な機能を持ったものが多いのです。四次構造は、「製品のセットみたいなもんだ」、と解釈するとよいでしょう。我々も部品を組み合わせて、自動車とか、複雑な道具を作っているじゃないか、と。

 

 生命現象は複雑だから、実際には四次構造をとって働いているタンパク質が多いのでしょうね。そう考えないと、タンパク質の設計図にあたる遺伝子の数がヒトでは2万ちょっとしかないのに、実際には10万種類以上のタンパク質が作られていることを説明できません。

 

 まとめますと、タンパク質を道具に例え、アミノ酸を原料、二次構造を素材、三次構造を単品の製品、四次構造をセット製品として理解し、タンパク質は生命現象を支えるために遺伝情報を設計図にして作られ、働いているのだと解釈するのがいいと思います。

 

 ちなみにタンパク質の立体構造は高次構造とも呼ばれています。

 

 

 最後にタンパク質の変性と失活についてなんですが、これは、せっかくの立体構造(高次構造)が崩れて働きを失ってしまうことを意味しているので、「身の回りにあるものだっておかしな形に変わり果てたら壊れたというじゃないか」、と、たとえ切りましょう。

 

 図のように、全ての材料は残っていても、元の形に戻して利用するのは難しくなります。一度変性したタンパク質は、それまでとは違うものになってしまいます。つまり、ゆで卵は冷やしても生卵に戻すことはできない、と。

 

 ヒトのタンパク質が最もよく働く温度(最適温度)は37℃と言われています。およそヒトの体温にあたりますね。これが42℃まで上がると、熱変性するタンパク質が出始め、もう元には戻らないので、亡くなったり後遺症(失明とか)が残ったりすると聞いたことがあります。42℃の高熱に耐えられるのは3日が限度とも。

 

 タンパク質は生体を構成する有機物で一番多く、「プロテイン」という言葉は、「第一のもの」という意味をもつようです。「機能を有する物」、すなわち「有機物」の代表格であるタンパク質を理解することは、生命現象を理解することにつながります。