おなじ水槽でカメを二匹飼うと、大小関係が生まれる。
生物室で飼っている、「かめお」と「こかめお」もその例に漏れない。
「かめお」と「こかめお」はイシガメとクサガメの雑種で、生まれて間もない時に引き取り、育てている。
仲良くするんだよ、と、一緒の水槽で育てていたんだけれども食欲に差があって、エサを与えると、一匹だけがばくばく食べて独り占めしそうな勢いだった。
やがて、それが成長の差になって現れてきた。
だから、私は大きな方を「かめお」、小さな方を「こかめお」、と、名前をつけた。
同じだけ愛情を注いだつもりだった。一緒の水槽に入れたのも、「一匹だけじゃ寂しかろう」、と、いう気持ちからだった。
しかし、そんな配慮は人間の勝手な思い込みにすぎない。イシガメの血をひく「かめお」も「こかめお」も、多頭飼育には向いていなかったのだ。
野生化において、成長速度は、おそらく生存率に直結する。自然界の掟では、早く大きくなったものが勝ちなのである。
「かめお」は、やがて、「こかめお」をいじめるようになっていく。「こかめお」の尻尾はかじられた痕があって短いのに、「かめお」の尻尾は長いままで無傷だ。
性格も差が出た。
「かめお」は、人懐こく、水槽に近づくとエサをねだるような仕草をするし、持っても嫌がらない。
一方、「こかめお」は警戒心が強く、持つとすごーく嫌がる。エサも私が水槽の近くにいるときは食べない。
ここだけ見れば、「かめお」の方が性格のいい子なのだが、実際は違っていて、たぶん、「こかめお」は、「かめお」から受けた数々のいじめのせいで猜疑心が強くなってしまったのだ。
いまでは別々の水槽にすんでいる「かめお」と「こかめお」。別居の期間が長くなるにつれ、最近は、「こかめお」も、私の見ているところでエサを食べるようになってきた。
「こかめお」、今までごめんね。