話はしばらく前にさかのぼるが、これは完成間近のコルナゴマスターで、いよいよチェーンの装着とディレイラー調整にさしかかっているところである。
素人がロードバイクをフレームから組もうとする場合、一番の壁になる場面だ。言い換えれば、ここさえ乗り切ってしまえば、もう、何があっても怖くはないと言える。ワイヤー類の調整や交換など、これまで自転車屋さん任せだったメンテナンスにも自信がつく。
まずはチェーンの取り付けについて説明しよう。
カンパニョーロのチェーンには、専用の工具が必要である。高いけれど、値段にふさわしく、とてもしっかりした造りなっている。カンパユーザーになるなら、必要経費だと考えるしかない。
新しいチェーンはコマ数が多いので、適切な長さにするために数コマを切り落とさなければならない。マニュアルを見ると、英文で、「最も小さなスプロケットとチェーンリングに載せて、チェーンの長さを決め、その高さの範囲が8から15mmを超えないようにチェックせよ。」、とあり、丁寧な図説が掲載されている。しかし、mmという解釈がおかしいのか、最後まで意味が分からなかった。図説された範囲は、どうみても8から15mmに収まるものではない。仕方なく、図を参考にして5コマ切り落とすことにした。
地味な部品だがキラキラと輝き、高級感が感じられる。恐るべし、イタリア。さすが芸術の国と言われるだけはある。スーパーレコードになったらどうなってしまうのだろう。
チェーンの両端を合わせ、チェーンをつなげる。ピンはリードに導かれてチェーンのつなぎ目の穴に収まってゆく。カンパは初めてなのに、うまくいった手応えがあった。もしかしたら、シマノより簡単?
リードを折る時は、レバーの凸部分でリードをいじめてから、工具の裏?の部分に空いている穴にはめると、あっさり取れた。なるほど、こうやるのか(…ほんとか?)。
チェーンが済んだら、いよいよディレイラーの調整に取りかかる。最初で勝手が分からないから、マニュアルとにらめっこだ。受験英語が、意外なところで役に立つ。やっぱり教養って大切だ。
ディレイラーにワイヤーを付けるときには、シフトを落としておき、なるべく引っ張って付けるようにしておく。そうしないと、上の段まで上がってくれないからだ。写真には写っていないが、ワイヤーの先端は、ペンチで引っ張っている。
シマノでは、いつもなかなかギアが上がってくれず、苦労していた。さあ、カンパは一番ロー側まで上がるのか?と、心配していたら、なんと一発で上がってくれた。調整ネジを使うこともなかった。
おお~っ、うまくいったぞ。俺ってカンパの方が相性が良いのか?、と、喜んでいたのも束の間のことで、初期伸びを取ることも忘れていた。やっぱり調整しないと。
しかし、何故か、初期伸びを取る作業をしても、ディレイラーは調整不要なくらい上手に変速してくれた。もしかすると、ワイヤーは売りに出される段階で、すでに初期伸びしないようにしてあるのかも。カンパって素晴らしい。
最後はフロントディレイラーの取り付けと調整だ。
フロントディレイラーは直付けになる。アルテグラを付けたときには、なかなかまっすぐにつかず苦労したが、カンパだと苦労せずに取り付けることが出来た。コルナゴは、もともとカンパを付けるように出来ているんだなあ。そりゃそうだよなあ。イタリア車だものなあ。
フロントの調整では少し戸惑った。なかなかアウターまで上がらないのだ。リアは簡単だったのに…、と、思いながら、たまたまシフターをグイと押さえてみると、ディレイラーがクイッと持ち上がって、チェーンをアウターリングに運んでくれた。そして変速後はちょっとだけ元に戻った。どうやら過剰にディレイラーが外側にずれることを防止してあるようだ。この配慮は旧アルテにはなかった気がする。素晴らしい。
こうして無事にチェーンとディレイラーの調整を終え、新生コルナゴマスターが誕生した。
組み付けを終えての率直な感想なのだが、意外にもカンパは組みやすかった。シマノパーツでの経験がものを言ったと考えればそれまでなのだが、カンパ達は意外に素直だった。
これからカンパに挑戦しようとしている、全国の同志の皆さん。怖れることはありませんでしたよ。やはり自転車の本場である欧州のパーツが信頼できないはずが無かったのです。試乗して思いましたけど、シマノとの細かな違いがとても新鮮で、新しい楽しみを教えてくれます。
より充実した自転車生活を過ごしてみたいなら、カンパはお薦めです。