「痛い痛いってば!もー止めてよ髪が絡ま るじゃない!
虫は嫌いだけど蜘蛛一匹でそんな大げさな―…痛っ?今、なんかチクッとした」
背中や頭をバシバシと叩かれ逃げ惑っていたユーリが妙な顔をして
普段は髪に隠している狼の耳をぴょこんと立てハタハタと動かした。
磯良が慌ててユーリの頭をがしっと掴んで狼の耳を引き寄せ覗き込むと、
白銀の毛に埋もれるようにして、色鮮やかな蜘蛛が皮膚に牙を立てていた。
「あっ…!!この――何してんだ手前ぇ――!!!」
異常なほど興奮した磯良が蜘蛛目掛けて思い切り振り下ろした手は空しく空を切り、
代わりにユーリに嫌と言うほど引っ叩かれた。
「磯良さんこそ何してるのよ!?蜘蛛ごときでそんなに興奮して!何?蜘蛛アレルギー?
とにかくちょっと落ち着いてよ」
ユーリは自分で蜘蛛をパッパッと無造作に払いながら磯良をにらみつけた。