黙り込むユーリに、磯良はむ やみに頭をガシガシとかき乱しながら
何度と無く声を掛けようとするが結局言葉にはならず虚しい溜息が出るばかりだった。
何分ほどそうしていただろうか。
山の陽は落ちやすい。
空はまだ青いのだが山の東側と言うこともあり、木々の生い茂る辺りは暗く
滝から吹き上げる風が涼しいを通り越し冷たくなってきた。
思わず寒そうに自分の腕を抱くユーリに、すかさず磯良が声を掛けた。
「…なぁ、ユーリ。寒みぃんだろ?日も暮れてきたし―…暗くなると危ねぇから戻るぞー。」
「ん…」
微かに頷きはするものの、ユーリはやはり滝を見詰めたまま動こうとしない。
その横顔は悠人に対する自責の念に責めさいなまれているらしく青白く石膏のようだ。
磯良は思わず口約を破って知っている事を教えてやろうかと口を開いたが、
寸でのところで思い留まると、一瞬躊躇しながら腫れ物にでも触るように
ちょんちょんとユーリの頭を突付き、
「風邪引いちまうぞ。ほれ、花供えて帰るぞー。」
「…うん。」
ユーリはようやくコックリと頷くと、持ってきた花を屈んで風で飛ばされないよう
少し土を掘り窪みを作って木の柵に立てかけた。