案内看板の道は一応整備はされているものの、
アスファルト舗装などされているはずもなく土が踏み固められているのみ、
階段は木が組まれているのみと、山歩きに慣れていないと苦労しそうな道だった。
タイトなミニスカートにオーバーニーソックスという出で立ちではあったが
靴はしっりとスニーカーを履いてきたユーリは、流石に人狼だけあり
すたすたと小気味良い軽やかな足取りで登って行く。
「お…い、ちょっと、休憩しよう」
既に息の上がっている磯良が数段上の階段を上るユーリのミニスカートからはみ出た
目の前で揺れる白銀の狼の尾を掴む。
途端にそのまま後ろに蹴り飛ばされ階段を転がり落ちた。
「何するのよ変態エッチスケベバカ!!」
「お、お前なぁ!普通キャーとか言ってから手が出るもんだろ?!
問答無用で足で蹴るって…どんな育ちかたしてんだよ!」
「磯良さんこそどういう人生送ったらそんなにエロ星人になるの!?
頭の中常にそんなことばっかりなんでしょ!?」
「当然だ。野郎なんてなぁ、大概そんなもんなんだよ。」
妙に堂々と開き直る磯良に思わず『男の人ってそー言うものなの?かも』と
納得しかけたユーリだったが真剣な面持ちで、
「――分かった。家に帰ったら兄さんに『磯良さんが言ってたけど男の人って皆そうなの?』
って聞いてみる」
思わず階段を踏み外しバランスを崩した磯良が再びユーリのシッポを掴もうとしたが、
ひょいと避けられてつんのめり階段に両手を着いた。
「お前そりゃ…反則だろ!なんで兄ちゃんに聞くんだよ?メリーとかに聞け」
「メリーなんて絶対『当たり前じゃな~いv』とか言うに決まってるでしょ!」
「だから良いんだろが」
ヘラヘラと無駄口を叩きながら煙草を取り出しさりげなく休憩しようとする磯良に
ユーリは溜息を吐きつつ歩み寄ると煙草を取り上げた。
「なぁにすんだよぉ!返せ!」
「こんな灰皿も無い所でダメ!ほら、お茶あげるから」
「携帯灰皿持ってるって!一本だけ吸わせてくれ!お願い!ニコチンが切れたんだよ!」
必死に煙草を取り返そうとする磯良と言うヘビースモーカーを物珍しげにしげしげと
見詰めていたユーリは、次の瞬間ニッコリ笑うと身を翻して素早く階段を数段駆け上がり
磯良に向かって煙草をかざした。
「滝に着いたら返してあげるv もしかしたら灰皿もあるかもよ?ほーらほーら早く~~♪」
「てんめぇ~~~…ニコチン中毒の怖さを思い知らせてやる!!」
猛然と階段を駆け上がってくる磯良に、ユーリは煙草の箱をちらつかせ挑発し笑いながら
軽やかに階段を、斜面を上っていった。
最初こそもう少しで追い付きそうな勢いでユーリを…いや、煙草を追っていた磯良だったが、
すぐに息切れが始まりスピードが目に見えて遅くなる。
それでも何とか追い付こうと気持ちだけで走っている磯良に、先を行くユーリが立ち止まり声を掛けた。
「磯良さん…それ、きっと煙草のせいでそんなにすぐ息切れするんだよ」
「こんなもん、ぜーはー…吸えば―、はぁ、治まるん だよ!」
完全なニコチン中毒患者の言い分に思わず憐みの眼を向けるユーリの手から
最後の2・3段を飛ぶようにして駆け上がった磯良が煙草を取り替えした。
「…やった!!」
「はい、お疲れ様~~~」
思わずガッツポーズをする磯良にユーリが苦笑いを浮かべつつ拍手を送る。
煙草を取り出しつつ磯良が顔を上げると、そこで道は終っており、
申し訳程度の木の柵と、椅子のつもりなのかたまたまそこにあったのか、
木の切り株が二つある2畳ほどの空間があった。