人材の採用は、企業にとって重要な先行投資です。

「企業は人なり」という先人の教えがあります。

 

〇 就活セクハラ対策が義務化、OB・OG訪問や面談はどう変わる?

2026/10/06 読売

 

就職活動中の学生や求職者に対するセクシュアル・ハラスメントの防止措置が、10月から企業に義務付けられました。採用活動を行う人事担当の社員はもちろん、学生からOB・OG訪問などを受ける社員も対象になります。何がどう変わるのでしょうか。企業向けにハラスメント予防研修を行っている専門家に聞きました。

採用の可否を判断する立場にある企業側が、学生やインターンシップ参加者などに対して行う不適切な言動は、「就活ハラスメント」と呼ばれています。性的な冗談や不必要な身体的接触、デートや個別の食事への 執拗しつよう な誘いなどのセクハラ行為のほか、人格を否定するような暴言などのパワハラ行為、内々定と引き換えに他社の選考辞退や就職活動の終了を迫る、いわゆるオワハラなども含まれます。

このうちセクハラ行為については、10月1日に施行された改正男女雇用機会均等法により、「求職者等に対するセクシュアルハラスメント防止措置」が定められ、すべての企業に必要な対策を講じることが義務付けられました。

 

「就活中にセクハラ」は3割、企業とギャップ

日本ハラスメントリスク管理協会の特任講師・平澤知穂さんは「就活生に対するセクハラやパワハラは、被害がないのではなく、単に『見えていない』だけだったのかもしれません」と話します。

厚生労働省の「職場のハラスメントに関する実態調査」(2023年度)では、2020~2022年度に卒業し就職活動をした男女のうち、「就活中にセクハラを経験した」と答えた人が31.9%に上りました。その一方で、過去3年間に就活セクハラについて「相談があった」と回答した企業はわずか0.7%でした。こうしたギャップがあるのは、被害に遭っても、「採用選考に影響する」「相談先がわからない」と泣き寝入りするケースが少なくないからだと平澤さんは考えています。

就活ハラスメントは、インターンシップの最中や、OB・OG訪問、個別面談など、企業の社員と1対1になりやすい閉鎖的な場面で多く発生する傾向があります。このため、採用に直接かかわらない社員であっても、OB・OG訪問を受けたり、実習生として職場に受け入れたりする際は、言動に注意が必要になります。

厚生労働省は、面談や面接のルールづくりや相談窓口の設置に加え、相談したことを理由に学生や求職者が不利益を受けないよう求めています。しかし、対応を進めながらも、制度づくりや運用方法に頭を悩ませる企業は少なくないようです。

 

「OB訪問だから」が通用しない時代に

平澤さんは、企業向けのハラスメント予防研修の中で、「自社にあるパワハラ防止指針をそのまま流用できるか」「相談窓口はどのように設置すべきか」「OB・OG訪問を受ける社員にも研修が必要か」などの質問を受けることが増えてきました。指針の策定や相談窓口の設置、社内研修について、次のように答えることが多いそうです。

「パワハラ防止指針をそのまま流用するのは難しいです。被害を相談してくるのは雇用関係のない学生です。学生のケアやフォローアップに力点を置いて、就活ハラスメント防止の指針を作りましょう」

「相談窓口は外部機関への委託か採用選考に関係しない部署にすることが大切です。選考への影響を恐れて相談をためらう学生もいるためです。また、問題が発生したときのために、社内の連絡・対応体制をあらかじめ整えておきましょう」

「例えば、OB・OG訪問を受け入れる際には上司に報告する、学生とプライベートな連絡先やSNSの交換をしない、複数回の飲食や2次会を禁止するなど、OB・OG訪問に関する具体的なルールを社内で文書化し、共有する必要があります。リクルーターはもちろん、管理職もほかの社員から相談を受けたり指導したりする立場にあるため、研修が欠かせません」

 

NGワードを覚えるより大切なこと

とりわけ、採用に直接かかわらない一般社員でも、OB・OG訪問や職場見学などを受け入れる際には注意が必要です。社員に話をするのと同じ内容でも、言い方によっては就活生に不要なプレッシャーを与えてしまうことがあるからです。

例えば、「土日は何をしていますか」といきなり聞いたら、「この人はなぜ、私のプライベートを聞いてくるのか」と不審に思われてしまいます。これに対し、「この仕事では月に○回程度の休日出勤がありますが、対応可能ですか」などと仕事に必要な情報として聞けば、相手の受け取り方は全く違います。

「良かれと思って話したアドバイス」や「自分の若手時代の苦労話」なども、採否がかかっている就活生は重く受け止めてしまうことも。こうした意識のすれ違いを防ぐには、「言ってはいけない言葉(NGワード)」を暗記するだけでは不十分で、次の四つを自らに問いかけることが、無意識の不用意な言動を防ぐのに有効だそうです。

 

(1)その質問は、仕事や会社を理解してもらうために必要か

(2)相手の性別によって態度や質問内容を変えていないか

(3)上司や人事が隣にいても同じことが言えるか・できるか

(4)そのやり取りが記録(録音・ログ)に残っても困らないか

 

「昔は問題視されなかった言動であっても、現在は社会的なルールとして『就活ハラスメ

ト』という名称がつけられ、防止措置が定められています。学生にとって、就活中に出会う社員は、企業の顔そのもの。社員一人一人が、現代の基準に意識をアップデートすることが求められています」と平澤さんは話しています。