数学の本の次は大平元総理の

功績に関しての本である。

固い読書が続く。

ところで今なぜ大平元総理か?

 

それは貰ったからである(笑)。

全400ページ。

 

 

大平総理と言えば、わたしが中学生

の頃、漫画家のいしいひさいち氏の

4コマ漫画で『アーウー総理』

として描かれていたのが記憶にある。

 

この本を読んでみて、当時実際

『アーウー総理』と新聞記者に

揶揄されていた。

しかし大平語録から『アーウー』を

取り除くと、非常に理知的な内容を

語っていた、という。

 

 

 

 

高度経済成長が終わりを告げた

昭和50年代初頭、三木内閣で

大平は蔵相を務めたのだが、

その政権で日本国史上、初めて

となる赤字国債を発行した。

 

後年自身が総理大臣に就任した際、

財政再建のため「消費税」を導入し、

その立て直しを図ろうとしたが、

選挙を意識する党内の猛反発を

食らい、結局増税案は撤回せざる

を得なかった。

「古今東西、増税を掲げて選挙に

勝ったためしなし」である。

 

現在、1300兆円近い赤字国債

という大河の、最初の一滴を

流した責任を痛感し、国の首班

であり、保守本流の宏池会の

トップであることへの責任感は

鬼気迫るものがある。

 

しかしやがて自らの寿命を縮める

政治闘争へとつながってゆく様は

過酷な運命としか言いようがない。

身内の造反により内閣不信任案が

可決され、史上初めて行われた

衆参同日選挙の選挙活動中に斃れた。

 

 

現代の政治家のボンヤリとした、

ただ国民ウケだけに腐心するさまと、

まさに「命懸け」との差はいうまでも

なく、桁違いの迫力の差である。

 

エドウィン・ライシャワー駐日大使

はそこら辺の違いをpolitician(政治屋)

とstatesman(政治家)という言葉の

違いで表現している。

そして大平の早すぎる死がなければ

日本はどんな(良い)方向に導かれた

のだろう、と嘆いた。

 

 

大平内閣のもとで9つの政策提言

が検討された。「田園都市構想」、

「総合安全保障」、「文化の時代」

など。

その中でも「環太平洋連帯」は

現代APECに結実している。

 

結果、554日間という短命であった

大平内閣ではあったが、大平は

自身の政権中にそれら提言が

まとまらなくても構わない、

長期的な展望を以て将来の日本を

導く指標となるものを、当時の

新進気鋭の若手専門家たちに検討

させた。

彼らは自身の(狭い)専門から、広く

国家の将来を描くという大海に

乗り出したことで大いに刺激を受け、

その後の人生に大きな影響を受けた。

 

 

教養人でありクリスチャンであった

『アーウー』総理は実はすごい政治家

だったのである。