野坂 昭如氏のおかげで、名前くらいは

知っていても、読んだことはないのが

ギリシャ哲学、プラトンである。

この齢ともなると、読書でうちもらした

ものは、若い頃敬遠していた難しいヤツ

ばかりとなっている。ここは挑戦だ。

 

 

もしかして、自分の読んだ書籍で

一番古い作家がプラトンになるん

じゃないかな。

『饗宴』の設定は紀元前4世紀、

BC400年。

そのころ日本は何をしていたのか?

残念ながら書き言葉を持っていない

ので、記録はない。

中国の歴史でいうと「周」という

王朝?の末期の戦国時代の頃で、

「秦」の始皇帝の前だ。

 

 

そんな大昔にギリシャでは大いに

愛の神(エロース)について語ろう

じゃないか、と、友人の詩人が

「悲劇のコンクール」初優勝を

祝うためにひらかれた祝宴で、

酒を飲みながら参加各員大いに語る、

という体がこの『饗宴』である。

 

芸術への理解と懐の深さ、遊び心

の余裕。この時代の民度では

ギリシャ圧勝である。

 

 

本文(訳)自体は162ページ、注釈が

28ページと、大した分量ではない

のだが、いかんせん(表現が)読みにくい。

電車の中で読もうとすると気が散って

しまい、この本の読場で最適なのは

浴槽である、と知る。

 

 

パウサニアース(語り部)の話では、

熱く少年、青年への愛が語られている。

BC4世紀ですでにBLであり、

当時の倫理観ではそれもアリ、

と許容されている。

 

 

アリストパネースによると、以前には

人間は「男」と「女」のほかに、

「おとこおんな」というのがいて、

全部で3種類であったそうだ。

3種類の人間には手足がそれぞれ

各4本。顔も表裏に2面あった。

 

しかし傲慢で神をも恐れなくなった

人間(3種)に対し、最高神・ゼウスが

下した判断は、「生意気だから

真っ二つに切断しちゃおう。半分に

なれば人口は倍になるので神々への

お届け物も倍になるわけだし、足も

2本になればまっすぐ歩けよう」

その切断面の名残が『おへそ』である。

 

 

プラトンの師、ソークラテースが

語り部となって、マンティネイアの

女性で賢人のディオティーマの話を

紹介する。愛の神・エロースの誕生

に関して、である。

 

ゼウスの娘・アプロディーテー(愛と美を

司る神)が生まれ、その祝いに神々が

集まり、宴を開いたその晩に、貧乏(貧窮)

の女神・ペニアーが、したたかに酔った

策知の神・ポロスに夜這いをかけ、

そして生まれた息子が、愛の神エロース

である。

よってエロースはアプロディーテー

由来の「美を好む」性向に加え、

二つの親の性分「いつも貧しい」と

「善美なるものを得んと策略をめぐらす」

というのがあるそうだ。

 

 

読んでみると「へーそーなんだー」と、

知らないことがいくつもあったが、

ギリシャ哲学は欧米文化の源流中の

源流であり、そのギリシャ哲学の中心

がプラトンなのだから、ここは

丸のみするしかない。

しかしこういった話はティーンエージャー

の時に読むべきものである、と知る。