読書⑳ 『隠された十字架 法隆寺論』 (梅原 猛著) | そういえば・・・

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インターネットで梅原猛氏が亡くなったことを知りました。

TVのニュースでは市原悦子さんの死去はたくさんやっているのに

全く触れられないことが不思議です。わたしの世代では有名人であった。

 

 

梅原猛。哲学者である。しかしどちらかというと、本業の哲学よりも

独自の推論で新しい解釈を古代の日本文化に与えた『梅原日本学』

の方が有名だ。従来の常識や通説、それを支える権威を疑う。

 

 

彼の出世作『隠された十字架 法隆寺論』(新潮文庫)によると

「法隆寺はなぞの多い寺」である。普通の人はそうは思わないのだが

梅原は謎多き寺、七つの不思議があるのだ、と断ずる。

 

 

正岡子規が「柿食えば 鐘が鳴るなり 法隆寺」 (解釈:法隆寺に参詣した帰り、

近くの茶屋で休憩をとって柿を食べていたら、遠くから法隆寺の鐘の音が聞こえてきた。

ああ、秋だなあと感じた) と詠まれた、あの長閑な雰囲気のある法隆寺には

実は隠されている七つの謎と〝十字架″があると言うことに若い頃のわたしは

しびれた。そしてこれは読まねばならない、と、とりあえず買ってみたのであった。

 

ちなみに七つの謎の一つに『中門の真ん中に柱があることはまったく

もっておかしい』がある。そういわれなければ通り過ぎてしまうような疑問

だが、やはり見る人が見れば疑問に感じるところなのであろう。さすがだ。

 

昔だったので560円(本文510ページ)

 

他にも『日本書紀』『続日本紀』に法隆寺に関する記載が一切ないことに

「しかし、私は見たのである。書かれていない部分に真実がかくされている

ことを。・・・」(p31) 物凄く疑り深いのである。まずは疑ってみるという、

デカルトの『方法序説』仕込みである。

 

 

ネタバレではないが、昔の本なので、言ってもよいだろう。

いわく、

『法隆寺は聖徳太子の(怨念を鎮めるために)鎮魂の為につくられた寺』である。

いわく、

『救世観音は聖徳太子の像である』

 

これらはあくまでも説であり、全面的に認められたわけではない。が、著者の勢いも

あって、一定のポジションを獲得して現在に至っている。

最後に著者の意気込みを感じさせる巻頭の「はじめに」を紹介したい。新説を世に問う、

既存の学説をぶち壊そうとする著者の気負いと意気込みを若い人には感じとって

いただけると思う。 合掌