長期出張中にページを進められたのが 『わたしを離さないで』。
昨年のノーベル文学賞を受賞したカズオ・イシグロ氏の本で、
やっとこ読み終えた。
『日の名残り』 同様、主人公が語りべとなって話はすすんでいく。
物語はクローン人間のはなし。科学技術がすすんで、人類はその
複製をスペアパーツ用に作ることができた。
臓器提供用だが人格を持っているクローンたち。しかしあくまでも
部品扱い。臓器提供の役目を終えると「提供者」は死んでしまうが、
その是非を問う、という話ではない。
ところでクローンは同じDNAをもった人間にはスペアとして有効だが、
拒否反応があるから他人には使えない。小説ではその〝提供″
が複数回、ときに4回も行われるが、自分の〝元々″がそんなに
臓器提供を受けなければならないものなのか・・・ちょいと違和感がある。
さて臓器提供というテーマでは、ロビン・クックの 『コーマ -昏睡-』を
思い出す。こちらの方は臓器提供というよりか、むしろ犯罪だが。
ずいぶん昔に読んだ本なので、詳細はすっかり失念してしまったが、
面白かった、という記憶がある。ビジネスライクに臓器移植の発注が
あったり、〝仕入れ″があったり。またせっかく仕入れた商品を
傷つけないように、床ずれをさせないように、骨を通したワイヤで吊って、
万全の温度湿度の調整の効いた環境の中で保管されるのである。
どちらも早川書房でSFだ。 どっち? と聞かれたらためらいなく
「コーマです」 と答えちゃいます。