人間の脳がポジティブな経験やネガティブな経験から学習する際には、ドーパミンという神経伝達物質が重要な役割を果たしています。ドーパミンは、運動、認知、学習などに関与し、脳と身体の神経細胞間のコミュニケーションを促進する化学的メッセンジャーです。これまでポジティブな感情との関連が注目されてきましたが、最近のウェイクフォレスト大学医学部の研究では、ネガティブな経験におけるドーパミンの役割にも着目しています。
この研究によれば、ドーパミンの放出は報酬と罰の予測ミスを符号化し、脳がこれらの経験に基づいて行動を調整し適応させるのに役立つとされています。研究チームは、高速スキャンサイクリックボルタンメトリーと機械学習を組み合わせて、ドーパミンレベルをリアルタイムで検出・測定しました。
実験では、被験者が簡単なコンピューターゲームを行いながら、線条体という脳の部位でドーパミンの測定が行われました。ゲーム中、参加者の選択は金銭的な利益や損失で報われたり罰せられたりし、報酬を最大に、罰を最小にする選択を学ぶことが目的でした。
この研究は、ドーパミンがポジティブな経験とネガティブな経験をどのように符号化し、報酬と罰を学習する際の最適なシグナルを送ることを明らかにしました。また、報酬と罰を別々に符号化するドーパミン系の独立した経路が存在する可能性も示唆しています。これらの発見は、精神疾患や神経疾患におけるドーパミン系の影響についての理解を深め、新たな治療法の開発に貢献する可能性があります。
