さて、この本の一部を引用させていただきます。私が最も気になった最初の部分です。
かねてから申し上げたかったことです。今回のこの本を読んで決定的でありかつ最も言いたいことをまとめて書いてくださっていることです。
引用ばかりしたら出版社から叱られますのでここまでにしますが、とにかく皆様にぜひ購入してお読みいただきたいと思います。
八、「米一極支配」から「中露+グローバルサウス」による「多極化新秩序」構築へ
中露首脳会談および中露共同声明には、「多極化」という言葉が頻出する。これは「アメリカの一極支配的先進国価値観による秩序」ではなく、「中国がロシアやインドと共にグローバルサウスを包含した、多極的な世界新秩序」を構築するためのシグナルであるということができる。それを少し考察してみよう。
中露首脳会談では、両首脳の口から何度も「多極化」という言葉が飛び出した。会談後の中露共同声明でも、以下のような形で4ヵ所も「多極化」という言葉が出てくる。たとえば、
●世界情勢は劇的に変化しており、「和平、発展、協力、ウィンウィン」という歴史的潮流を阻害することはできず、多極化という国際的局面は加速的に形成されており、新興市場や発展途上国の地位は普遍的に増強されている。それは全地球的な影響力を持っており、自国の正当な権益を守りたいという地域や国家は絶え間なく増加している。
●「普遍性、開放性、包括性、非差別」を支持し、各国・地域の利益を考慮し、世界の多極化と各国の持続的発展を実現すべきだ。
●世界の多極化、経済のグローバル化、国際関係の民主化を促進し、グローバル・ガバナンスが、より公正で合理的な方向に向かって発展することを推進する。
●中国は、ロシアが公正的な多極化国際関係を築くために努力していることを高く評価する。といった具合だ。
これらは何を意味しているかというと、「アメリカの価値観だけが世界で唯一正しく、その価値観に合致しない国々は滅びるべきである」として、「アメリカが同盟国や友好国と小集団(セクト)や軍事的ブロックを作り、対中包囲網あるいは対露包囲網を形成して中露を崩壊させようとしていること」への中露両国の強烈な怒りを表している。
ウクライナに軍事侵攻しているロシアに、このような共同声明を出す資格はないと思う人は多いだろう。
しかしバイデン大統領が副大統領だった時に、他国政府であるウクライナに内政干渉してマイダン革命というクーデターを起こさせ、ウクライナの親露政権であったヤヌコーヴィチ政権を転覆させたのは確かだ。これは当時のオバマ大統領も認めているし、バイデン自身の自叙伝“PromiseMe,Dad"(約束して、父さん)にも詳細に書いてある。
バイデンは同書の中で、マイダン革命を起こさせたあと、親露派のヤヌコーヴィチ大統領がロシアに亡命するまでの3ヵ月の間に9回もヤヌコーヴィチに電話して、「お前は終わった。ウクライナにはお前を支持する者はいない。早くモスクワに帰れ!」と執拗に脅迫している経緯が自慢げに記載してある。