興味深い記事を見つけました。

 この連載記事を読んでいくつかのポイントで興味を持ちました。連載が続くようですので、引き続きで書かせていただきます。

 

 都政新報より

 自治体政策のススメ
 都政新報令和4年4月8日号
 ロ腔衛生保健と健康①
 元新宿区健康部参事矢澤正人


 最期までから食べるために


 今回から、歯と口の健康づくりや生涯にわたって自分の口で食べるための施策づくりを例に、自治体政策の進め方について述べてみたいと思います。

 筆者は1982年に入区し、その後、都区間の人事異動を経て2019年に新宿区を定年退職するまで、歯科医師として37年間にわたって都や特別区の保健所における公衆衛生行政に携わってきました。今日のコロナ禍の中、保健所をはじめ自治体職員の皆様の昼夜を分かたぬご努力を耳にするたびに、頭が下がる気持ちでいっぱいです。

 さて、最初の勤務先の杉並区南保健所に入って少したった1983年ごろ、保健師から「在宅の要介護高齢者のところに一緒に訪問してもらえませんか」と頼まれました。早速、同行して拝見した方は80代の男性で、脳梗塞の後遺症で寝たきりの方でした。おロの中を拝見させていただくと、ほとんどの歯が根っこの部からむし歯で折れていて入れ歯もなく、食べ物をかむこともできない悲惨な状態でした。当時、往診をしてくれる歯科医師も少なく、やっとつてをたどって、訪問歯科診療をお願いしました。

 しかし、こういったケースが何件も続いたので、区は歯科医師会と検討会を持ち、20数回の会議の結果、「杉並区家底訪問歯科診療事業」が1986年に始まりました。住民からの反響はもとより、全国でも、まだほとんど例がなかったことから、厚労省のモデル事業となり、その後多くの自治体に広がっていきました。

 この取り組みから学んだことは、
 ①常に現場に行ってみること
 ②住民の生活を見ること
 ③他職種との情報共有
 ④歯科医師会など関係団体との十分な協議の大切さ
 ーでした。そして「地域に仕組みを創り出す」ことが、問題解決になるということだったのです。人は最期まで、自分の口でおいしく、安全に食事を摂りたいと願っています。そのような住民の切実な願いを解決できるのも、自治体職員の知恵と行動にかかっていると感じた事例でした。



 やざわ•まさと
 東京医科歯科大学大学院歯学研究科(予防歯科学)修了。歯学博士。新宿区健康部参事などを経て、医療法人永寿会陵北病院歯科勤務。日本在宅ケアアライアンス事務局次長。近著に『私の口腔保健史~保健所歯科医の歩んだ道~』。


 長谷川
 まず、この記事に興味を持ったのは、地方公共団体で「8020」運動の先駆者的に始められたこと。

 次に、歯科医師でありながら、地方公共団体の職員という道を選ばれたこと。

 更には、保健所職員としてのルーティンワークをこなすだけの受動的職務の態度ではなく、積極的能動的に政策決定に関わり、施策・事業推進に関わったことです。

 まだ、連載全部を読んだわけではありませんから決めつけは良くないのですが、少なくともこの最初の記事から、口腔ケアの重要さを全国の自治体に認識させ、事業展開をさせた間違いないと思います。

 船橋市も歯科医師会の先生方の協力によって、全国的にも胸を張れるレベルだと思っておりますが、それも先進事例があってのことだったと思います。

 しかも、歯科医師の先生が臨床の現場や研究の道ではなく、「行政」というある意味イレギュラーな職域に入り、専門的知見を使っているというところに興味を持ちました。