シリーズ前回に引き続きです。

 

 都政新報より(左をクリックしてください。)

 

 「自己啓発等休業」で勉強してみた話

 

 死ぬまでにやりたいことリストの中に「もう一度学生になる」といつものがありました。私は40代の現役地方公務員で、家庭では3児の父をやっています。今年度、夢をかなえて、1年間の長期休暇をいただいて大学院で学んでいます。私からは、自己啓発等休業とはどのような制度か、また社会人学生として学ぶ中で感じていることをお伝えしたいと思います。

 

 長谷川

 ちょっと前に、色々と妄想をして学生時代に戻りたいと書かせていただきましたがちょっと意味が違います。

 

 が、しかし、私も社会人入学をして学生を2年間やりました。いまは制度が色々あって、社会人入学の仕方も多様なようです。

 

 私は単純に「地方議会」について少し違った角度で見ながら学術的にアプローチをしてみたいと思ったからです。ですから、この方の今回のこのコラムには大いに賛同するものです。

 

 自己啓発等休業ってどんな制度?

 

 地方公務員法に規定がありますが、ごく簡単にいつと退職しなくても勉強等のために長期休暇が取得できる制度です。各自治体が条例で詳細を定めることになっていますので、詳しくはご自身の団体の条例等をご確認ください。自律的なキャリア形成を支援する、すてきな制度だと思います。

 

 この制度は2007年の地方公務員法改正で作られているので、思いの外、古くからありますが、実際に利用した人の話はあまり耳にしません。その理由の一つに、金銭面のハードルが高いことがあると思います。休業期間中は無給なのです。私の場合、海外留学にも憧れていましたが、さすがに予算が厳しいので、自宅から通える1年制の学校を念頭に置いて学費等を貯金しました。過去に1年間育児休業(無給)をいただいた経験があったので、この際の家計のやり繰りが参考になりました。いずれにしても、それなりの貯金や家族の協力が必要です。今年度の我が家の家計は、妻の収入でなんとかやり繰りしています(感謝!)。前向きに考えれば、お金のやり繰りができれば何とかなるともいえます。

 

 長谷川 

 確かに「時間」と「お金」が関わってくるのですが、どう捉えるかというということですね。例えば昇進昇格に「休業」が影響するのだとしたら...。

 

 ちょっとこの部分はわかりません。男性も育児休暇の制度が充実してきました。仮に育児休暇を女性と同じように取った場合、昇進昇格等にどう影響するのでしょうか?

 

 たぶん地方公共団体によってバラバラだと思うのですが、そこを補う方法はいくらでもありますね。昨今のこのCOVID-19による様々な状況下で、「在宅勤務」がクローズアップされて、その形態を十分に考えなければならない状態になって、ハード面、ソフト面ともにCOVID-19流行前に比べて劇的な変化をしました。

 

 それらは更に「考え方」もです。

 

 こうなると在宅勤務と休暇の線引きを少し鷹揚にしたならば?と考えるとかなりおもしろい展開ができるような気がします。

 

 例えば、従来は育児休暇は長期にわたって1日のうち終日「おやすみ」でした。しかし、「子供が手を離れている時間、例えば「寝ている時間」「おとなしくしている時間」は、在宅勤務に見合った業務をこなせるのではないか?と思うのです。これは介護休暇も同じです。

 

 まさに今、「育児休業、介護休業等育児又は家族介護を行う労働者の福祉に関する法律」改正案が国会で審議されているようです。

 

 今後様々な改正が行われていくと思います。

 

 なので、在宅勤務の管理がうまくできるようになったりあるいは自己申告制や結果報告などによって勤務したと「みなす」制度などが整えば良いのではないかと思います。

 

 同時に「その評価」のための、昇進昇格に関しては「試験」を行うようにすれば良いと思います。

 

 そこに、ここにあるような「自己啓発等休業」が単なる休業扱いのマイナスになるのではなく、むしろ昇進昇格にも「加点」されるような体制があると良いのではないかと思います。

 

 もちろん個別には、手当てに反映されたり学歴が変わったりというのもあるのかもしれませんが、総合的に制度化されることが肝要だと思います。

 

 もう一度学生になりたいと思った理由

 

 ところで、なぜ「もう一度学生」になりたいと思ったかですが、数年前にはやった『ライフ・シフト-100年時代の人生戦略』を読んで刺激を受けたことが直接の理由のーつかもしれません。人生100年時代、今の組織を卒業した後も人生は続いていて、かつ世の中は常に変化していきます。今の仕事をより楽しくするために学ぶことはもちろんですが、この先の自分自身の人生のために、「無形資産」(知識、スキル、健康、良好な家族・友人関係など)をメンテナンスするまとまった時間がほしいと感じていました。こんな思いをかなえてくれる制度を整備し、快く送り出してくれた組織にとても感謝しています。

 

 もう一度学生になって思うこと

 

 ここからはどのような勉強をしているかご紹介します。私は公共政策を専攻していますが、数えてみると20科目ほど履修していました。個々の政策分野に関する科目やデータサイエンスなどは実用的で面白く、心強い武器を手に入れた気持ちになりました。これらに加えて、改めて興味深く感じたのは経済学、政治学、心理学などのより理論的な科目でした。過去から現在に至る磨かれた理論を学ぶことで、「社会」や「人」をより鮮明にかつ多面的に見ることができると知りました。

 

 長谷川 

 私はここに記述されていることは全く同じでした。

 

 これは社会人入学でしかわからない喜びだと思います。高校を出て大学に入学した時には「社会とは」から始まって「社会の仕組み・実態」を全く理解していない中で、知識を教えられても「イメージできない」ものだったと思います。

 

 経験の伴わない「知識」の限界とでもいうのでしょうかね。が、あったと思います。もちろん経験を積み重ねながら、学生時代に学んだ知識が追いついてくるのだとは思いますが、それは知識先行によって、時間軸が伴いませんから学生時代知識はそこで時間が止まっていますが、経験を積んでからの新たな学問(術)的知識はオンタイム?リアルタイム?の厚みのある実践的なものになると思います。

 

 優秀な大学で優秀な成績で卒業したての社会人1年生や2年生が部長や課長に経験でかなわないのは明白ですが、なかには、経験を無視して学術的に論破しようとする強者がいますが大きな間違いだと思います。それは、議会でも稀にみられる傾向です。

 

 そういう意味では「自画自賛」(笑)となってしまいますが、私は議長職を終えてからの大学院入学でしたから、講義の全てがおもしろいものでした。

 

 先生方も経験を聞いてくださったりする中での議論は毎回毎回内容の濃いものでした。一人だけ、怖い先生はある国の省庁でキャリア官僚としてめちゃくちゃ仕事をした方で、その後専門の大学での教授を務めたのちに私が通った大学院の集中講義を担当していましたが、情け容赦ない授業でして、地方議員なんて「クズ(笑)」扱いに近いものでした。

 

 むしろ現場にいながらこんなことも知らんのか!!という感じ(笑)。

 

 実務を経験した上で組織を離れ、社会や人間について丁寧に学ぶ過程で自分自身の人生の軸も、よりはっきりしてきたと感じます。1日の講義が終わった後、友人たちとタ食を囲むときにはいつも「幸せだ」とつぶやいてしまいます。私にとって学ぶことは、自分の幸福度を高めることにつながっているようです。

 

 長谷川 

 全く同じ感じ。とにかく毎回毎回夕食を囲むとはなっておりませんでしたけど、何かのたびにいろいろと話をする機会は本当に楽しかったですね。

 

 地方公務員の使命は、「住民の福祉の増進」です。一人ひとりの市民が多様な幸せを実現できるように、地域をより良くしていかなければなりません。そのためには私たち自身が幸せな状態でなければ、人々の幸福を支えることは難しいと思うのです。

 

 この文章をご覧になっている皆さんの幸福感の源泉は何でしょうか。皆さんが一度きりの人生を自分らしく幸せに生きて、より良い地域作りに取り組んでいただけるといいなと思います。

(千葉県市川市中嶋学)

 

 長谷川 

 です。