片山善博の自治体自立塾よりです。以降は、「さて困った!」のタイトルは外します。

 

 

 

 

 宮崎県日向市で野生のサルが出没し、市民に咬みつき大けがをさせたことがあった。その後サルは無事捕獲されたということで一安心だが、市民の不安はさぞかしだっただろう。

 

 それはともあれ、これに関連するニュースに接して思わず苦笑せずにはいられないこともあった。市役所がサル捕獲作戦を実施している事態に配慮し、市議会が一般質問を中止したというのである。

 

 一般質問といえば大方の議会のメインイベントで、議員はことのほかこれに力を入れる。一方、執行部側の首長らは長時間議場に拘束されるし、聞かれたくないことも聞かれるので、一般質問などもっと短く、いやいっそのことなくなればいいと本音では願っている。もとよりそんな願いが叶えられることはないが、なかには個別の質問を取りやめてもらうよう議員に懇願する首長や執行部職員がいないわけではない。質問の一部でさえ取りやめてもらうため人間は多大の苦労をしているというのに、サルはいとも簡単に一般質問のすべてを中止させてしまった。思わず苦笑したのは、こんな不謹慎なことを思い浮かべたからである。

 

 と以下に続くのですが、今回、私の全国の議員仲間たちとの意見交換の場で、COVID-19をめぐって、議会の対応が日本全国まちまちだからこのコラムを取り上げさせていただきました。

 

 この日向市議会は、サル捕獲作戦のために議会の日程を短縮させたと言うことなのです。

 

 今回、CIVID-19で日本全国の地方議会はこのサル捕獲作戦同様に、日程を短縮したところとそうではないところとがあるようです。

 

 そして国権の最高機関である国会は予定通り行われ、昨日閉会しました。最後に笑えるオチがつきましたが、何を言っとんじゃという感じでした。

 

 散々審議を止めておきながら国会閉めるなってどの口が言うんかい。と言う感じで嫌になってしまいます。

 

 さてそれはさておき、いかがでしょうか?サルの捕獲のために職員が忙しいから議会の一般質問は取りやめましょう。と。

 

 続きです。

 

 議会開会中は業務が停滞

 

 一般質問を中止することを決めた理由について、「職員への配慮から」だと市議会のホームページには書かれてあった。サル対策に取り組む職員の邪魔をしてはいけないということか。でも、議会で答弁するのは市長のほか副市長や教育長などの特別職、それに部長クラスの幹部職員であり、一般の職員は関係ないはずだ。どうして「職員への配慮」が必要なのか。

 「職員への配慮」を必要とするのは、議員の質問に対する答弁書を作成するために、職員がそれにかかりきりになる慣わしがあるからである。まず、職員はあらかじめ議員に連絡を取り、質問内容を聴きとってくる。その上で質問に対する答弁書を作成する。市長などの答弁者が淀みなく答弁するための読み上げ原稿を書くのである。

 

 何度か私もこのブログでも書かせていただいておりますが、答弁者には二通りのタイプがあります。(笑)。答弁内容を十分に理解して、答弁に臨む者。出来上がってきた答弁原稿を信頼し切って、それを読み上げることに徹する者。です。

 

 しかし、最もひどいのは私の経験もあるのですが、「読み上げることに徹する者」はせめて読み上げる練習くらいしてこいよ。と言う感じでつっかえながら答弁原稿を読み上げる答弁者がおりました。「ちゃんと練習してこいよ~」と議席から不規則発言で練習を促したら、「はい」と返事をされてしまいましたが…。これは、質問者側にも言えること。今回ブログには書きませんが、質問原稿を職員に下請けさせる議員が結構います。

 

 それを、つっかえながら質問原稿を読み上げるのです。ひで~やつになると、原稿の文字の大きさ指定までして作成依頼をするらしいです。原稿なんて受け取ったら、自分で咀嚼して、書き直すとか自分流にするとかすればまだカワイイものですが、そうでなく、出来上がりをそのまま読む馬鹿がいるのです。困ったものです。今イニシャルでもかいてやろうと思ったのですが、バレそうなのでやめました。まあ複数人いますしね。

 

 答弁書を作成するに当たっては、同種の質問に対する過去の答弁との間に矛盾はないか、その答弁によって役所に新たな責任が生じることはないか、後々尾を引くこともないかなど、あらゆる観点から推敲が重ねられる。自治体によっては、質問者に対して前向きな答弁をすることで、他会派の有力議員の機嫌を損ねるのではないかなどと、妙な心くばりをするところもある。

 

 これはですねえ~、普通の地方議会の職員でしたら必ず行う作業ですが、平気で端折るのが船橋市の職員です。しかし、なぜそれができるかと言うと、議会側が全く気づかないからなのです。要は議会が機能していない。と言う一言に尽きるのです。

 

 私は、ブログに書こうと思ってやめてしまって、それからもう船橋市議会のことを書くのが馬鹿らしくなったのですが、それは過去に私が提出した陳情書の扱いを全て不採択にしたからです。執行機関の言ったことを鵜呑みにして、自らの職務を放棄する結論に導くような議会には何を言っても通用しませんから、もう真剣に取り合うのはバカらしくなりやめたのですが、今回は、研修講師をするにあたり気がついたことを事例として書かせていただいております。

 

 職員が以上のような頗る手間のかかる作業を終えると、次は答弁者に答弁書の内容を理解してもらうための答弁検討会に臨む。そこでは、質問に関わる事実関係や経緯などを説明するが、それには詳細な資料が必要で、その作成に要する労力と時間もばかにならない。

 

 答弁案にはいかにも木で鼻をくくったような表現があったり、持って回ったような言い方があったりして、答弁者が「もっとわかりやすく答えられないのか」などと詰問することもある。そんな答弁をされたらこんな矛盾を指摘されかねない、あんなまずいことが起きる可能性があるなどとひたすら部下職員が答弁者の説得に努める。かくして、読み上げ原稿が確定するのは深更に及ぶことなど決して珍しくない。この作業は全庁挙げてのことで、サル捕獲作戦に携わる部課も例外ではないから、議会での質問戦は明らかに捕獲作戦を妨げる。

 

 このたびはサル被害で市民がパニックに陥り、それが全国的にも大きく報道されたこともあり、さすがに議会も「質問どころではない」と自覚し、質問を中止することになったのだろう。しかし、サルで大騒ぎにならずとも、どこの自治体でも議会開会中に職員が質問対応にかかりきりになるせいで、本来早急に取り組まなくてはならない課題が滞っている事態はいくらでもある。保育所待機児童しかり、学校のいじめや不登校しかり。これらはサルのように人に咬みついたりしないから大きくクローズアップされないだけで、地域や住民にとってはいずれもサルに勝るとも劣らないほど重要かつ深刻な課題であるはずだ。