前回に引き続きです。さて、どうにも私にはしっくりこない説をずっと読んでいて困っていたところなのですが、やっと別の説というか、ほとんどと言って良いのかほぼ完璧に私の考えと一致した先生が見つかりました。

 

 今までの先生方は、私と違う論であっても受け入れられるものかどうかというと、それは都道府県には当てはまっても、多くの市区町村には難しいのではないでしょうか?十把一絡げは少々きついな。と。

 

 と言うのも、私の研修会での最初のパワポのページはこれです。

 

 

 で、やっと見つけた先生は片山善博先生です。その御著書「片山善博の自治体自立塾」です。雑誌の連載をまとめたもののようですが、一部引用させていただき、何回かに分けて説明をさせていただきたいと思います。

 

 

 

 

 まずは序章部分というか「はじめに」で先生のお考えが示されていますのでこれはコメントなしで。

 

はじめに

 このところ、地方自治をめぐってマスコミの話題になることが多い。例えば、安倍政権が力を入れる「地方創生」である。経済が疲弊し、人口が減少している地方を再生させ、雇用を増やす。このこと自体は今のわが国にとって重要な政策だと筆者も思う。

 

 ただ、現状を見ると、国がいわば号令をかけ、全国の自治体はそれを受けて計画やら総合戦略を作らせられる。ちゃんと作ったところには金を出すが、そうでないところには金を出さない。尻を叩かれた自治体は、まるで「パン食い競争」に駆り立てられているようである。自治体はもっと自主性と自ら考える力を大切にすべきだと思う。

 

 議場でのヤジや号泣議員など、地方議会のあり方や議員の振る舞いが取り沙汰されることも多い。のみならず、地方議会の存在意義を疑う声すらある。もとより、地方議会は立法機能やチェック機能を有し、地域の民主政治にとって不可欠な存在である。ただ、現状は首長が提出した議案をほぼ無傷で通しているのが実態であり、その自主性、主体性のなさが指摘される。

 

 教育行政に責任を持つ教育委員会もまた存在意義を問われてきた。国は関係法令を改正して、教育委員会の責任体制を確立させようとしているが、それはうまくいくか。おそらくそれだけでは教育委員会が教育行政に責任を持ち、主体性を回復することは難しいだろう。

 

 首長、議会それに教育委員会は共通する問題を抱えていると筆者はみている。その一つは、それぞれが自立していないことである。まず、首長を筆頭とする自治体は総じて国から自立していない。地域の課題を政策に取り上げ、自らそれを実践しなければならないのに、むしろ国から課題を設定され、その解決方法についてまで指南を受けることが多すぎる。

 

 地方議会は首長から自立していないのみならず、国からも自立できていない。国から出てくる政策を地域の視点でみると、ピント外れやお門違いはいくらでもある。首長が提出する予算案や条例案には、それがそのまま素直に盛り込まれている場合が多い。それを的確に見抜き、必要な修正を施すのが議会の重要な役割なのに、そんな作業をしている例はまず耳にしない。

 

 教育委員会は、自らが経営する学校現場の課題の解決に向けてもっと主体的に取り組むべきだ。いじめや不登校への対応、教師の多忙化解消などが遅々として進まない背景には、国の指示待ちの姿勢と主体性のなさがある。教育委員会の自立も急務である。

 

 もう一つ三者に共通する欠点がある。それは住民や保護者、現場の声をよく聴こうとしないことである。自治体の首長や幹部は公聴に力を入れているというが、実は既に決めていることを「丁寧に説明する」だけで一向に考えを改めるつもりはない、というケースはよく見られる。 

 

 地方議会は、「開かれた議会」を標榜しているのに、主権者である住民を寄せ付けない。住民は議場の片隅の傍聴席に押し込められ、発言はおろか拍手もさせてもらえない。「議会報告会」を開く議会も増えたが、決めた結果を報告するのではなく、決める前になぜ住民の意見を聴こうとしないのか。

 

 教育委員会議とは、教育委員たちが事務局の説明と報告を聞くためだけにあるようだ。大切なのは教育現場なのだから、事務局よりむしろ保護者や教師たちの意見を聴けばいいのにと思う。自治体も議会も教育委員会も、肝心の住民の声に耳を傾けないままものごとを決めるのでは、真の力を発揮するのは難しい。自立には、支えてくれる住民の力が必要だからだ。

 

 以上のような現状を踏まえた上で、自治体が自立するにはどうすればいいか。この問いに具体的かつ実践的に答えるべく、これまで『日経グローカル』誌に書き綴ったものをまとめたのが本書である。

 

 中には既に事情が変わって、現時点では必ずしも当を得ていない記述もあるが、手直しは敢えて必要最小限にとどめている。それを書いた当時の実相が読者に的確に伝わるようにしたいからである。自治体のほか地方議会や教育の現場などで地方自治を実践するかたがたはもとより、地方自治の主役である市民のみなさんにも本書を手に取って頂ければ幸いである。 

2015年5月

片山善博