研修会の講師のお仕事をいただき準備をしているのですが、数日前から作業が進みません。

 

 地方行政や政治学の研究をしている先生の著作を読み始めてから止まってしまっているのです。なるほど学派と言うには大袈裟ですが、国の政治、統治機構から地方を見るとこうなるのか?ということにぶつかっているのです。

 

 簡単にいうと、政治学などをやっていらっしゃる先生は国政を見て、海外の政治学を学び、研究、比較し、というのが基本的な線でいらっしゃるから、地方を見るときも国対都道府県という形で俯瞰する感じのようです。

 

 ちょっと違和感あるなあ~と思いながら、読み進め、同じような視点で展開している先生方が何人かいらっしゃって、上部のなぞりの部分はいいけど、ちょっと違うんだよなあ~。と。

 

 そうお書きになっても、それが全てだと読者の方々に見られてしまうと困るなあ~と言う感じのステレオタイプっぽいまあ、ある意味は「スタンダードな路線でもあるけど」と言う感じの描きっぷりに少々筆が止まってしまっているのです。

 

 その典型例が次の記述なのですが、

 

 議員質問の場が執行部局への「要望」の場とならざるをえない側面があることも、ここで指摘しておくべきだろう。前章で述べたように、首長は予算提案権を独占し、条例提案権ももち、専決処分を行える一方、議会自身のもつ権限は限られ、政策の執行に携わるわけでもない。そしてそれは、たとえ与党議員であっても同じである。議院内閣制とは異なり、二元代表制では執行部と与党議員とが一体的でないため、実施したい政策を実行に移すために議員ができるのは、せいぜいのところ議会質問の場で要望として伝えることだけなのである。

 

 私がかねてから、このブログで申し上げているように、議会本来の役割をまずは完遂すべきであって、それは基本的には地方自治法第96条に定められている事項の「議決」が本旨であって、執行機関と議事機関とのそれぞれの役割が分かれていてこそ、制度が成り立つのであって、首長と同じ権限よこせと言うのはあまりにも乱暴ではないかと思いつつ、従来からはここで言うような解釈がなされていたんだよなあ~と思いつつ、どこが「妥協点だ(笑)」と筆が止まっているのです。

 

 ここでの記述も微妙で少々ずるいなと思うのは、「予算提案権を独占し」と「提案権を独占し」と「独占」という言葉を使いながら、「条例提案権ももち」と言う記述は「独占」ではないことを物語っているというか、予算修正権も条例提案権は議会にもあるわけでして、しかもどんどん法的にも改善されてきているわけです。「専決処分を行える一方」と言うのも、専決処分が行いにくい環境を作るのも行いやすい環境を作るのも「議会次第」であって議会の力がしっかりと発揮できていれば、「専決処分」の棲み分けは十分できます。

 

 議会が主体的に動く実力や理解があるかどうかだけの話であって、あげくは「政策の執行に携わるわけでもない。」と言い切っています。いやいや、地方が議院内閣制をとっていないことなど百も承知でしょうから、なにも国と同じ制度で執行しなければならないなどとはおかしな話です。ましてや、これらの先生方の地方を見下している意識の中でいうところの議会などに、執行権の一部でもまかせたらとんでもないことは承知の上でしょう。

 

 で、だ・か・ら・ということで、「実施したい政策を実行に移すために議員ができるのは、せいぜいのところ議会質問の場で要望として伝えることだけなのである。」というのはあまりにも地方議員を馬鹿にして見下した言い回しにしか聞こえないと言うか見えないと思うのです。

 

 なぜなら、こう言うことも前提に私は研修の中でも過去のブログでも議会活動でも「要望」は卑怯者の行為としてきたからです。

 

 それを、「せいぜいのところ議会質問の場で要望として伝える」とはなあ~と筆が止まってしまったのです。

 

 さらに、

 

 首長は、たとえ議会が実現したくなくても自身が実現したい政策を議案として議会に提出できるが、議会が実現したくても首長が実現したくない政策については、そもそも首長が提案しないため、現状維持となりやすい。地方議会は予算を伴う議案を提出できないため、たとえ多数を占める勢力であっても、首長による新しい提案(「現状維持点(StatusQuo)」からの変化)に対して「NO」を突き付ける(「現状維持点」を動かさない)ことができるに留まり、首長の望まない政策を議会側が提案して「現状維持点」からの変化を起こすことは極めて難しい、と。だからこそ、二元代表制の構造上、各議員が議決の場で各種議案に賛成するかわりに、執行部局にはそれぞれ要望する政策を実施してもらうという構図が、成り立っているといえよう。

 

 と言うことなのです。さてさて困ったなあ~と言う感じです。