さて、本当は最初にこのことに触れなければいけなかったのですが、途中から思い出しました。

 

 指定管理者に管理をさせて良いのは、公の施設です。では公の施設とは何でしょうということです。

 

 以下の通りです。

 

 第十章 公の施設

 (公の施設)

 第二百四十四条 普通地方公共団体は、住民の福祉を増進する目的をもつてその利用に供するための施設(これを公の施設という。)を設けるものとする。

 2 普通地方公共団体(次条第三項に規定する指定管理者を含む。次項において同じ。)は、正当な理由がない限り、住民が公の施設を利用することを拒んではならない。

 3 普通地方公共団体は、住民が公の施設を利用することについて、不当な差別的取扱いをしてはならない。

 

 新版 逐条 地方自治法 第9次改訂版 松本英昭著 学陽書房

 

 

 

 

 【解釈】本条は、公の施設の意義及びその基本的な利用関係に関する規定である。

 「公の施設」とは、住民の福祉を増進する目的をもって住民の利用に供するために普通地方公共団体が設ける施設(1))をいう。昭和38年の改正前において用いられてきた概念として「営造物」があったが、これは学問上、国又は公共団体等の行政主体により公の目的に供用される人的手段及び物的施設の総合体を指す意味に用いられるのが通常であり、地方自治法においてもほぼ同様の意味で用いられてきた。しかし、営造物の内容が一般に理解し難く、必ずしも分明でない点もあるので、営造物の概念を改めて、あたらしく公の施設という概念をたてたものである。営造物との差異を指摘しつつ、公の施設の要件を分説すれば次のとおりである。

 

 第一に、公の施設は住民の利用に供するための施設である。たとえ、公の目的のために設置された施設であっても、住民の利用に供することを目的としないものは公の施設ではない。したがって、純然たる試験研究所、庁舎等は、公の施設ではない。「利用」の形態は、一般使用であると、許可使用等であるとを問わない。

 

 第二に、公の施設は、当該普通地方公共団体の住民の利用に供するための施設である。国民の利用に供するために設ける施設であっても、当該普通地方公共団体の区域内に住所を有する者(法十 1)の利用に全く供しないものは公の施設ではない。したがって、観光ホテル、物品陳列所等は、営造物ではあり得ても公の施設ではない場合が存する。「住民」は、住民全部を対象とするものでなくても、合理的に一定の範囲を限られた住民であってもよい。

 

 第三に、公の施設は、住民の福祉を増進する目的をもって住民の利用に供するための施設である。住民の利用に供する目的が、直接住民の福祉を増進するためであって、利用そのものが福祉の増進となるものでなければならず、したがって、住民の利用に供しても競輪場、競馬場のように普通地方公共団体の収益事業のための施設、留置場のように社会公共秩序を維持するために設けられる施設、試験研究所のような施設は、営造物ではあり得ても公の施設ではない。

 

 第四に、公の施設は、普通地方公共団体が設ける施設である。すなわち、物的施設を中心とする概念であり、人的側面は必ずしもその要素ではない。このことは、営造物は人的物的施設の統一体であると観念しながら、道路、河川等を営造物的規制に服することとするために「物を主体とする営造物」という技術的概念構成をすることを不必要にするとともに、「人を主体とする営造物」の概念により営造物の範疇に舎めていた巡回講師等は公の施設の範囲から除外される。

 

 第五に、公の施設は、普通地方公共団体が設けるものである。第一から第四までの要件を具備するものであっても、国その他普通地方公共団体以外の公共団体が設置するものは公の施設ではない。ただし、特別区は第283条の規定により、地方公共団体の組合は第292条の規定により、公の施設の規定が適用又は準用されており、財産区は第294条に定めるところにより、特別地方公共団体ではあるが公の施設を設けることができる。公の施設の設置に当たり、普通地方公共団体は当該公の施設について何らかの権原を取得していることが必要である。しかし、必ずしも所有権を取得することは必要でなく、賃借権、使用賃借権等所有権以外で当該公の施設を住民に利用させる権原を取得することをもって足りる

 

 公の施設を住民の利用に供するためには、公の施設としての機能を果たす実体的要素として一定の施設が設けられるとともに公の施設として住民の利用に供する旨の普通地方公共団体の意思的行為を必要とする。公の施設の利用形態は、公共用物の使用として自由使用(一般使用)、許可使用、特許使用(特別使用)、契約使用に整理される。公の施設として住民の利用に供する旨の意思的行為すなわち公用開始行為については、例えば、進路の供用の開始の公示のように法律上特にその旨の公示を必要とする旨を定めている(道路法十八2)場合があるが、特にこのような規定がない場合でも、公用開始はその旨を一般に公示する取扱いが適当である。公の施設は、その実体的要素特に物的要素の滅失により、又は普通地方公共団体の意思的行為により消滅する。すなわち、公の施設の実体的要素が自然力又は人為に基づき滅失し、その回復が社会通念からして不能と認められる場合には公の施設は消滅する。ただ公の施設の実体的要素が破壊されても、その回復が可能で一時的に住民の利用に供し難いにすぎないような場合には、直ちに公の施設が消滅するとはいえない。また、公の施設は、それを住民の利用に供することを廃止する旨の意思的行為によっても消滅する。この意思的行為すなわち公用廃止行為は、明示の意思表示によりなされることが通常であり、例えば、道路の廃止の公示のように法律上公示を必要とされる(道路法十3。九、十八2参照)場合もある。しかし、明示の意思表示がなくとも周囲の事惰から総合的に判断して客観的にその意思が推測される場合には、公の施設は消滅したものと解すべき場合があろう。

 

 公の施設の設置、管理、廃止は普通地方公共団体の長の権限である(法百四十九Ⅶ)が、教育委員会の所管に属する学校その他の教育機関の設置、管理及び廃止は教育委員会の権限(地教法二十一I)である。

 

 二 普通地方公共団体は、正当な理由がない限り、住民が公の施設を利用することを拒んではならない(2)。「正当な理由」に該当するかどうかは、個々具体的の場合に判断するほかはないが、一般的には、公の施設の利用に当たり使用料を払わない場合、公の施設の利用者が予定人員をこえる場合、その者に公の施設を利用させると他の利用者に著しく迷惑を及ぼす危険があることが明白な場合、その他公の施設の利用に関する規程に違反して公の施設を利用しようとする場合等は、正当な理由に該当すると解される(最高裁平7、3、7参照。暴力団に対する市営住宅の明渡請求を認める条例を合憲とした最高裁 平27、3、27参照)。なお、公の施設の目的内の利用について、第三者の妨害行為を理由とする不許可処分については、最高裁の判決(最高談 平7、3、7・平8、3、15)を参照されたい。なお、法令の規定で「正当の理由」のない拒否を禁止しているものとして、水道法第15条第一項、墓地、埋葬等に関する法律第13条などがある。

 

 三 普通地方公共団体は、住民が公の施設を利用することについて不当な差別的取扱いをしてはならない(3)。「不当な差別的取扱い」に該当するかどうかは、個々具体的に判断するほかはないが、一般的には、公の施設の利用に当たり、信条、性別、社会的身分、年齢等により、合理的な理由なく利用を制限し或いは使用料を減額する等は、不当な差別的取扱いに該当する。

 

 【運用】 一 公の施設の意義は【解釈】 一で述べたところであるが、公の施設に該当するかどうか不明確なものについては、設置の目的及び住民の利用関係を考慮して、その実態に応じ適宜判斯すべきであろう。ただ、公衆便所、山小屋、避難小屋等は、行政財産(法二百三十八3・4)として管理すれば足りるであろう(法238の4参照)。

 

 二 第二項及び第三項は、第二項で利用関係の発生についての不当な拒否を禁じ、第三項で利用関係の継続中における不当な差別的取扱いを禁じ、あわせて公の施設の適正な利用を確保しようとするものである。これらにおいて禁じられるのは、当該普通地方公共団体の住民に対する不当な利用拒否、不当な差別的取扱いであり、他の地方公共団体の住民に対する利用の拒否ないし制限、差別的取扱いについては本条は触れていない。しかし、憲法第14条に違反することはできないことに留意すべきである。したがって、図書館の入館、公立大学の大学等を当該普通地方公共団体の住民でないことを理由に拒否すること、他の普通地方公共団体の住民が公の施設を利用するに当たり著しく多額の使用料を徴する等不当に不利益な利用条件を課すること等は適当ではない。また、別荘所有者の水道料金を大幅に値上げしたことについて、別荘所有者を「住民に準ずる地位にある者」として、「住民に準ずる地位にある者による公の施設の利用関係に地方自治法244条3項の規律(不当な差別的取扱いの禁止:著者註)が及ばないと解するのは相当でなく、……当該公の施設の性質やこれらの者と当該普通地方公共団体との結び付きの程度等に照らし合理的な理由なく差別的取扱いをすることは、同項に違反するものというべきである。」とした最高裁判決がある(最高裁 平18、7、14。)しかし、当該普通地方公共団体の住民をして他の地方公共団体の住民に比してある程度優先的に公の施設を利用させ、また公立大学に入学した他の地方公共団体の住民から当該普通地方公共団体の住民である入学者よりもある程度多額の入学金を徴すること等は許されよう。なお、不当な差別的取扱いは禁止(3)されているが、合理的な取扱いの差異は許される。例えば、生活困窮者に対して使用料を減免すること、貴重な図書の閲覧に当たっては特定の資格を要求すること等は許されると解される。

 

 三 公の施設は、「宗教上の組織若しくは団体の使用、便益若しくは維持のため、又は公の支配に属しない慈善、教育若しくは博愛の事業」の利用に供してはならない(憲法89)。宗教上の組織又は団体に対する制限は、憲法の政教分離(憲法20)の原則からして財政的に宗数団体等を援助することを禁止したものであり、公の支配に属しない慈善、教育若しくは博愛の事業に対する制限は、これらの事業に対し公の機関が不当な干渉を行うこと、これらの事業が時々の政治勢力により左右され事業の本質に反するようになること、国や地方公共団体の濫費をきたすこと等を防ぐ趣旨から定められたものであるから、これらの組織若しくは団体又は事業に対して、常にすべての公の施設を利用に供することを禁じたものとはいい得ないのであって、宗教団体や慈善事業のために、道路、交通機関、水道、公園、公会堂といったような一般に無条件で、又は一定条件の下に自由な使用が認められている公の施設について、一般の利用者と同一の条件をもって、これを使用に供することは、何ら禁止されるものではない。ただ、一般の使用とは異なった特恵的な利用、たとえば、一般人には使用料を徴収するのを特に無料とするとか、特に優先的に取り扱うとかする場合には、特別な援助を与えることとなるので禁止されているものと解すべきである。