少数意見の留保についてご相談をいただきました。

 

 これって、あまり心配する必要はないでしょうというのが私の答えでした。

 

 逐条の解説を引用いたします。

 

 ただし、どうも全く無知な委員長が多いようで、船橋市議会の会議録を例示しようとしましたら、な・な・なんと、申し出がありながら、委員長がスルーして、申し出者もスルーしている会議録が残っていました。だからダメなんですよね。これって、どっちもどっちですが、書記もダメじゃんって話になってしまいます。

 

 なので、せめて、「少数意見の留保」という単語が出た場合は、委員会での手続きが必要な事項であるということだけでも知っておく必要はありますね。本来は手続きのみならず、その意味合いやそういう制度がある背景も知っておく必要があるのですけどね...。

 

会議規則 委員会条例 逐条解説 中島正郎 帝国地方行政学会 より

 

府県(少数意見の留保)

 第75条 委員は、委員会において少数で廃棄された意見で他に出席委員一人以上の賛成があるものは、これを少数意見として留保することができる。

 2 前項の規定により少数意見を留保した者がその意見を議会に報告しようとする場合においては、簡明な少数意見報告書を作り、委員会の報告書が提出されるまでに、委員長を経て議長に提出しなければならない。

 

市(少数意見の留保)

 第101条 委員は、委員会において少数で廃棄された意見で他に出席委員一人以上の賛成があるものは、これを少数意見として留保することができる。

 2 前項の規定により少数意見を留保した者がその意見を議会に報告しようとする場合においては、簡明な少数意見報告書を作り、委員会の報告書が提出されるまでに、委員長を経て議長に提出しなければならない。

 

町村(少数意見の留保)

 第72条 委員は、委員会において少数で廃棄された意見で他に出席委員一人以上の賛成があるものは、これを少数意見として留保することができる。

 2 前項の規定により少数意見を留保した者がその意見を議会に報告しようとする場合においては、簡明な少数意見報告書を作り、委員会の報告書が提出されるまでに、委員長を経て議長に提出しなければならない。

 

 (説明)

 委員会といえども、多数決で意思の決定がなされるのが当然であり、それが委員会の全休の意思決定とみるべきで、他に別の意思決定があるべきではない。したがって付託された審査、調査事件で本会議の議決の対象となるものでなければ、少数意見は認められない。

 

 二 しかし、委員会において、多数で決定したとしても、委員会は、本会議の下審査機関というか、予備的機関であるため、必ずしも議会の多数決を意味することにはならない。内部機関である委員会で全員一致で、可決か修正可決か、又は否決と決定すれば問題はないが、多数で決定されたときには、必ず少数の者が逆な意思表明をしたことになる。これが、いわゆる少数意見であるが、一度多数で決定されれば、いまさら少数反対者の意向は無視されてよいはずであるが、委員会の意思は決定であっても、まだ本会議において決定されたものではないから、この場合少数意見者の留保が認められる。

 

 三 ここで、少数意見というのは、多数決によって意思決定が行なわれる場合に、少数であったために自己の意思が採り上げられずに廃棄された意見である。

 たとえば、

 (一)委員会の可決の場合、少数意見者は修正か否決である場合

 (二)委員会の否決に対して少数意見者は、可決又は修正である場合    

 (三)委員会は修正であるのに対し、少数意見者は原案可決又は否決若しくは別途修正などがある。

 留保は少数意見者が留保することの表明に対して、委員会の多数の決定に加わらなかった少数の委員が少数意見に賛成であることを表明することである。

 

 四 そこで、多数決の原則からすれば、少数意見は当然廃棄されるものであるが、委員会であるため少数意見の尊重がなされ、少数意見を明らかにしようとする考え方からである。

 

 五 少数意見の留保というのは、委員会における多数決定の逆で、少数なために廃棄されたものだけれども、さらに本会議においてこれが意見を報告し、多数の人々の賛意を求めようとするためのものである。

 

 六 委員会の議決に賛成した者は、少数意見を留保することはあり得ないし、又少数意見の賛成者になることもおかしい。

 

 七 少数意見は一人でも理論的には留保することができるものと解するが、県・市・町村の標準会議規則には、少数意見の留保のためには必ず他に出席委員一人以上の賛成者がなければならないとしているので、本条からすれば、留保者の外に賛成者がなければ認めないこととしている。しかし賛成者がなくて、留保者が合わせて二人という場合もあろうが、この場合他に一人以上の賛成者と同じ意味に解されるので、要件を具備することになる。少数意見者が一人のときでも留保することができるとした行政実例があるが、この場合の会議規則は、他に一人以上の賛成者を要するとした規定のない場合の扱い方だと思う。規則に他に一人以上とある場合は、その要件を満たさない限り留保することはできないと考えたい。

 

 委員会の決定は、出席委員の過半数で決定されるので、これは、多数の意思の集積で、個人の意見ではなく、公の意思表明である。それに比べて、廃棄された少数意見者がただ一人で、他に賛成者もなくして、本会議に報告を認めることは、不合理ではないだろうか。つまり、賛成者のない一人の意見は、個人の意見となり、それを認めることができないものと考えられるのが至当ではなかろうか。少数意見を客観的な意見とするからには、複数でなければならず、ただの一人では単なる個人の意見でしかないと思う。

 

 八 少数意見の報告は、少数意見と他に少数意見に対する賛成者(もちろん少数意見に賛成する者)の連名によって報告書を作成し、委員長を経て議長に提出するものである。

 

 (運用例)

 1 少数意見は、少数者の意見の尊重であるから、付託事件に限られ一般的には所管事務の調査には及ばない。なお、少数意見は文書によって、報告されるべきであるが、往々にして、その手続きをとらないで、委員会の了解事項として、委員会報告書若しくは、委員長の口頭報告において、何某委員か、あるいは委員の中に反対者があったということを申し添え、別途少数意見の報告を行なわないとする方法もある。

 

 2 委員会の多数意見と異なる少数意見は、もしかりに、委員会において修正である場合は、はっきりと当該委員からも修正案を出して、しかも否決され、それに不満であるので、他に一人以上の賛成者を得て明白に留保したものでなければならない。しかし、否決されたままで、少数意見を留保しないで、別に、本会議で議員の定数の12分1以上の発議によって、修正動議を出すこともむろんさしつかえない。

 

 (1) 少数意見が二個以上あるときの順序は議長が決めるが、こんな例はまれである。

 

 (2) たとえば、委員会の多数の決定には反対であるが、だからといって、少数意見者は同一内容であるときと、そうではなくて可・否・修正・継続・審査未了などとおのおの異なった意見をもつものがいる場合がある。前者なら簡単だが、後者の区々の場合の賛成者は厄介である。

 

 (一) 委員会の決定には反対であるが、少数意見の廃棄内容に問題がある場合、たとえばA、B、C委員は廃棄組だが、Aは否決論者、Bは継続審査論者、Cは修正論者である。そこでAが少数意見の留保を考えて、Bに賛成者となることを要請し、Bが承諾すれば、Bの内容は継続審査でなく、Aの否決論に同調したものとみるべきか、それとも、廃棄者のAの留保のために形式的に賛成者となったものかどうか、この場合やはり、AとBとCは廃棄の内容が全く違うので、信念に生きる者ならAにBが、BにCが、CにAという賛成は考えられない。したがって、変節しない限り留保は不可能となるものと考えたい。たとえば不動産の譲渡処分に対して少数意見者中Aは譲受人に異議がある、Bは譲渡金額に異議がある場合には、A、Bとも内容上一致していないから、A、Bどちらかが譲歩しない限り、少数意見の留保は成立しないだろう。

 

 (二) 他に一人以上の出席委員の賛成者というのは、内容のいかんを問わず、形式的に少数意見者に賛成の署名さえすればよいものではなく、請願書の紹介議員となる場合、ただ署名するのでなくして、願意に賛成すればこそ紹介の労をとること及び、議案を提出する場合所定の賛成者と連署すること等においても形式的なものでなく、議案の内容に賛成し、成立を期そうとした趣旨のものと解するので、少数意見の他に一人以上の賛成者も議案等と同様に解するのが至当だと思う。だから、少数意見者が意見を留保する場合、少数意見として本会議に報告する場合であるから、賛成者ではなく、意見者自身行なうことである。

 

 3 委員長も、自己の意見が少数で廃棄された場合、自ら委員長報告を行なったほか、少数意見者の報告も本会議で行なうことはさしつかえない。なぜなら、委員長は、委員会の代表者であり、多数で決定されたものと、自己の意見が反対で少数意見もそれに拘束されるものではないから、委員長は、委員長報告を行なう。又少数意見の報告も行なえる。確かに理屈はそうだが、運用上は、この場合少し差し控えて委員長報告を副委員長が行ない、自ら少数意見者として報告するほうがよいと思う。

 

 4 少数意見者が報告を行なう場合は、「少数意見報告書」を作るが、その内容は、自己の氏名と意見の要旨を記し、ほかに賛成委員の氏名を記載して委員長を経て議長に提出する。この場合少数意見の留保に対して、委員会において認めるかどうかを決定する必要はない。

 

 5 少数意見者が、報告をするときは、会議規則により、委員長報告と同様に自己の意見を加えてはならないが、少数意見者の最少限の報告としては、報告者及びその賛成者が委員会で陳述した意見の範囲を出てはならない意と解される。なお、少数意見に対する質疑はもちろん可能であり、この場合少数意見者又は賛成者白身で答えるべきである。

 

 6 少数意見は議員の動議又は議長発議によってこれを議会の議決で報告を省略することができるが、

 それは、

 (一)報告書として配布されたとき、

 (二)他に職員に朗読させたとき、

 (三)その他必要ないときに省略することができる。少数意見の報告書は撤回しようとする場合は、連名者の全部からでなく、提出者のみでよいと解する。

 

 7 少数意見者が一人しかいない場合は、委員長報告の末尾に、意見の要旨を書き添えてもらうか、その扱いができない場合は、むしろ討論の段階で述べるのがよい。なお、少数意見を述べたときには、既にそれぞれ意見を開陳したゆえをもって、討論を封鎖することはできないので、留保したほか、状況によっては討論を行なうこともありえよう。

 

 8 委員会において、多数会派の出席委員が少数のためその意見が廃棄され、少数会派の意見が逆に多数意見となった場合、委員長は、表決に際し自ら行なった委員長報告と反対の態度をとってもさしつかえないし、少数意見者が委員長であるときは、まず委員長職として委員長報告を行ない、続いて、少数意見の報告も可能である。この場合質疑があれば、双方に答弁することとなろう。

 

 (行政実例)

 1 委員会において原案反対者であって、それが少数意見として留保されなかったのに、その留保されなかった少数意見者が本会議における討論に参加して反対討論することは、少数意見留保制度を認めている以上、不可であるとの見解をもち実際の運営においても許していない都市がある。これに対して他都市では委員会において留保されなかった少数意見者であっても、その者が本会議における討論に参加して発言することを禁止しうる法的根拠はなく、それを許さないことのほうがむしろ不当であるとの見解をもち、実際の運営においても許している。右の両者に対する御意見を承りたいとの質疑に対し、許すことが適当であると解するとしている。

 

 2 七人をもって構成する常任委員会において当日三人欠席し、四人で議案を審査した。この際、一人は委員長につき委員三人で採決の結果二対一で決定された。この場合その一人は少数意見者として本会議に報告することができる。

 

3 委員会においてA議案の表決にあたり、議会における多数会派が出席少数のためその意見が廃棄され、少数会派の意見となった。委員長報告は、多数意見を報告したが、本会議での表決は多数意見と異なる表決でもさしつかえない。

 

(国会先例)

 1 少数意見者は、委員長の報告についで行なう。(参院)